質問主意書

第174回国会(常会)

答弁書


答弁書第二八号

内閣参質一七四第二八号
  平成二十二年三月二日
内閣総理大臣 鳩山 由紀夫   


       参議院議長 江田 五月 殿

参議院議員山下栄一君提出国家公務員のキャリアシステムに関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員山下栄一君提出国家公務員のキャリアシステムに関する質問に対する答弁書

一について

 「採用時の一回限りの選抜で昇進コースが決定されるのは不合理」などの批判がなされているいわゆるキャリアシステムについては、法令上の根拠はなく、各任命権者において、採用試験の種類や採用年次等を重視した人事慣行であると考える。いずれにせよ、国家公務員の人事管理は、国家公務員法(昭和二十二年法律第百二十号)第三十三条に定める任免の根本基準に基づき行われている。

二及び七について

 お尋ねのキャリアシステム及び天下りについて、御指摘のような意見があることは承知しているが、定年まで勤務できる環境等の整備については、平成二十一年九月二十九日の閣議における鳩山内閣総理大臣の「公務員が天下りをせず定年まで勤務できる環境を整備するなど公務員制度改革を速やかに実施していくこととしております」との発言等を踏まえ、今後、早期退職勧奨の取扱いを含め、その具体的な在り方について検討することとしている。

三について

 お尋ねのキャリアシステム及び省庁割拠主義について、御指摘のような意見があることは承知しているが、政府としては、これまでも各府省合同の行政研修や省庁間の人事交流等に取り組んできたところであり、また、国家公務員制度改革基本法(平成二十年法律第六十八号。以下「基本法」という。)に基づき、幹部職員人事の内閣一元管理に関する規定の整備等を行う国家公務員法等の一部を改正する法律案を今国会に提出するとともに、採用試験の見直しや幹部候補育成課程の整備等の改革に取り組んでいるところである。

四について

 お尋ねのキャリアシステムに起因する天下りと省庁割拠主義については、二及び七について並びに三についてのとおりである。なお、独立行政法人については、御指摘のような意見があることも踏まえ、「独立行政法人の抜本的な見直しについて」(平成二十一年十二月二十五日閣議決定)に基づき、国民的視点から抜本的な見直しを行っていくこととしている。

五について

 お尋ねのキャリアシステムの廃止が具体的に何を指すのかが明らかではないが、国家公務員法第二十七条の二の規定において、人事管理は、職員の採用年次及び合格した試験の種類にとらわれてはならず、人事評価に基づいて適切に行わなければならないこととされている。また、基本法は、政府が、内閣の人事管理機能を強化するため、幹部職員を対象とした新たな制度を設けることとしており、さらに、重視する能力に着目した総合職試験、一般職試験、専門職試験を設けるなど、現行の採用試験の種類及び内容を見直すとともに、採用後一定の期間の勤務経験を経た職員の中から、本人の希望及び人事評価に基づいて対象者を随時選定する幹部候補育成課程を設ける等の改革を行うものとしている。こうした基本法等を踏まえ、政府としては、今国会に提出した国家公務員法等の一部を改正する法律案において、幹部職員人事の内閣一元管理に関する規定を整備するとともに、再就職のあっせんを禁止する等国家公務員の退職管理の一層の適正化を図ることとしている。

六について

 各任命権者は、国家公務員法第二十七条の二に定める人事管理の原則にのっとり、任用、給与その他の人事管理を行うこととされている。

八について

 国家公務員の人事管理は、国家公務員法第二十七条の二に定める人事管理の原則及び同法第三十三条に定める任免の根本基準に基づき行われているところであり、憲法に違反しているとの御指摘は当たらない。

九について

 人事院の平成十九年度年次報告書において、お尋ねの中で引用している記述があることは承知している。いずれにせよ、各任命権者は、国家公務員法第二十七条の二に定める人事管理の原則にのっとり、任用、給与その他の人事管理を行うこととされている。

十について

 お尋ねの「特権的な公務員」及び「特権者」の趣旨が必ずしも明らかではないが、国家公務員は、憲法第十五条第二項及び国家公務員法第九十六条第一項の規定に従い、国民全体の奉仕者として、公共の利益のために勤務し、かつ、職務の遂行に当たっては、全力を挙げてこれに専念しなければならないものと考えている。

十一について

 お尋ねの「ジェネラリスト」及び「スペシャリスト」の趣旨が必ずしも明らかではないが、これまでの各府省における人事管理においては、本府省の局長級以上の官職についても、個々の官職の職務に必要な能力や適性を勘案した適材適所の任用が行われているものと承知している。

十二について

 御指摘のとおり、幹部職員は、行政の専門家として、担当分野における専門知識への精通が求められており、高い専門性と幹部職員としての管理能力を兼ね備える必要があると考える。

十三について

 お尋ねの「実務と離れた机上の勉強」の趣旨が必ずしも明らかではないが、公務における政策の企画立案が公共の利益を考えながら行われなければならないことは御指摘のとおりである。

十四について

 お尋ねの「公務における業務管理能力」の趣旨が必ずしも明らかではないが、国家公務員法第四十五条において、「採用試験は、受験者が、当該採用試験に係る官職の属する職制上の段階の標準的な官職に係る標準職務遂行能力及び当該採用試験に係る官職についての適性を有するかどうかを判定する」ものとされ、人事院規則八―一八(採用試験)において、採用試験の対象となる官職として、採用試験の種類ごとに特定の係員等の官職を定めていることから、採用試験においては、係員等の官職に係る標準職務遂行能力及びそれぞれの採用試験に係る官職についての適性を有するかどうかを判定している。

十五について

 国家公務員法第五十八条第一項において、「職員の昇任及び転任は、任命権者が、職員の人事評価に基づき、任命しようとする官職の属する職制上の段階の標準的な官職に係る標準職務遂行能力及び当該任命しようとする官職についての適性を有すると認められる者の中から行うもの」とされているところであるが、幹部職員の人事評価に当たっては、国民全体の奉仕者として、高い倫理感を有しているかどうかという点についての評価を重視する必要があるものと考える。

十六について

 各任命権者は、国家公務員法第二十七条の二に定める人事管理の原則にのっとり、任用、給与その他の人事管理を行うこととされている。

十七について

 国家公務員の初任給については、国家公務員法第六十二条に定める職務給の原則に基づき、採用試験の種類別に採用時の官職に応じて設定されているが、採用後の人事管理は、同法第二十七条の二に定める人事管理の原則や同法第三十三条に定める任免の根本基準に基づいて行われているものである。

十八について

 政府としては、国家公務員法の規定を踏まえ、能力及び実績に基づく人事管理の徹底を図るとともに、基本法の規定を踏まえ、採用試験の見直しや幹部候補育成課程の整備等の国家公務員制度改革を進めてまいりたい。

十九について

 国家公務員法第二十七条の二の規定において、人事管理は、職員の採用年次及び合格した試験の種類にとらわれてはならないこととされ、また、基本法第六条第三項第一号において、幹部候補育成課程の対象者の選定については、採用後一定の勤務経験を経た職員の中から、本人の希望及び人事評価に基づいて行うこととされているため、採用試験における区分と幹部候補育成課程が直結することにはならないものと考えている。

二十について

 基本法第六条第一項においては、それぞれ重視する能力に応じた試験として総合職試験と一般職試験の区分を設けているが、いずれの試験を受験するかは本人の希望に沿うべきものと考えている。なお、国家公務員法第二十七条の二の規定において、人事管理は、職員の採用年次及び合格した試験の種類にとらわれてはならないこととされている。

二十一について

 国家公務員法第二十七条の二の規定において、人事管理は、職員の採用年次及び合格した試験の種類にとらわれてはならないこととされており、御指摘は当たらないものと考える。

二十二について

 基本法第六条第三項第一号において、幹部候補育成課程対象者の選定については、採用後、一定期間の勤務経験を経た職員の中から、本人の希望及び人事評価に基づいて随時行うものと規定されており、採用試験の種類は、そもそも幹部要員の選定における判断基準とはされていない。

二十三について

 基本法第二条及び第三条において、国は、国民全体の奉仕者としての職業倫理を確立することを基本理念の一つとして国家公務員制度改革を推進する責務を有していると規定されており、政府としては、これを踏まえて国家公務員制度改革を推進してまいりたい。

二十四について

 御指摘の附帯決議については、御趣旨を踏まえ配意してまいりたい。

二十五について

 幹部候補育成課程において実施する研修については、基本法に定められた国家公務員制度改革の基本理念及び基本方針を踏まえつつ、その内容を検討してまいりたい。