質問主意書

第174回国会(常会)

答弁書


答弁書第二二号

内閣参質一七四第二二号
  平成二十二年二月二十三日
内閣総理大臣 鳩山 由紀夫   


       参議院議長 江田 五月 殿

参議院議員山下栄一君提出公立高校の授業料無料化及び高等学校等就学支援金に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員山下栄一君提出公立高校の授業料無料化及び高等学校等就学支援金に関する質問に対する答弁書

一の1について

 公立の高等学校の入学定員については、公立高等学校の適正配置及び教職員定数の標準等に関する法律(昭和三十六年法律第百八十八号)第四条の規定に基づき、各都道府県において、地域の状況等を踏まえつつ、適切に定められているものと認識している。

一の2について

 義務教育は、日本国憲法第二十六条第二項の規定により、無償とすることとされているものである。
 これに対し、公立高等学校に係る授業料の不徴収及び高等学校等就学支援金の支給に関する法律案(以下「本法律案」という。)は、高等学校等における教育に係る経済的負担の軽減を図り、もって教育の機会均等に寄与することを目的として、公立高等学校について、授業料を徴収しないこととしたものである。

二の1について

 本法律案の提出の理由は、高等学校等における教育に係る経済的負担の軽減を図り、もって教育の機会均等に寄与するため、公立高等学校について授業料を徴収しないこととするとともに、公立高等学校以外の高等学校等の生徒等がその授業料に充てるために高等学校等就学支援金の支給を受けることができることとする必要があることである。本法律案の内容は、特に無償教育の漸進的な導入により、中等教育の機会を与えることについて定めた経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約(昭和五十四年条約第六号)第十三条2(b)の趣旨にも沿うものと考えている。

二の2及び3について

 お尋ねの「中等教育」については、法令上の明確な定義はないが、学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)第一条に規定する学校のうち、一般に中等教育を行うものと理解されているものは、中学校、高等学校、中等教育学校並びに特別支援学校の中学部及び高等部である。
 御指摘の「本制度の対象となる教育施設」及び「高等学校の課程に類する課程」等について、本法律案においては、地方公共団体の設置する高等学校、中等教育学校の後期課程及び特別支援学校の高等部について授業料を徴収しないこととするとともに、これらの学校以外の高等学校、中等教育学校の後期課程、特別支援学校の高等部、高等専門学校(第一学年から第三学年までに限る。)並びに専修学校及び各種学校(これらのうち高等学校の課程に類する課程を置くものとして文部科学省令で定めるものに限り、学校教育法第一条に規定する学校以外の教育施設で学校教育に類する教育を行うもののうち当該教育を行うにつき同法以外の法律に特別の規定があるものであって、高等学校の課程に類する課程を置くものとして文部科学省令で定めるものを含む。)の生徒等で一定の受給資格を有する者に対し、高等学校等就学支援金を支給することとしている。これらの文部科学省令の具体的内容については、高等学校の課程が、中学校における教育の基礎の上に、心身の発達及び進路に応じて、高度な普通教育及び専門教育を施すことを目的として、学校教育法等に基づいて教育を行うものであることを踏まえつつ検討しているところである。

二の4について

 高等学校卒業程度認定試験は、学校教育法第九十条第一項の規定に基づき、高等学校を卒業した者と同等以上の学力があるかどうかの認定のために行うものである。また、専修学校の高等課程は、中学校における教育の基礎の上に、心身の発達に応じて、職業若しくは実際生活に必要な能力を育成し、又は教養の向上を図ることを目的として組織的な教育を行うものであり、その設置認可に当たっては、学校教育法等に規定する基準に適合するかどうかについて審査される。お尋ねの「高等学校の課程に類する課程」については、二の2及び3についてでお答えしたとおりである。

二の5及び八の2について

 高等学校を始め義務教育を修了した者を対象とする教育を行う学校は、これらの者の大半が進学し、その教育の成果が広く社会に還元されるものとなっていることから、これらの学校における教育に係る費用について社会全体で負担していくことが適当であると考えられる。また、近年の社会経済情勢の変化に伴い、家庭の状況にかかわらずすべての意志ある高校生等が安心して教育を受けることができるよう、その経済的負担の軽減を図ることが喫緊の課題となっている。さらに、諸外国では多くの国で後期中等教育段階の学校を無償としている。本法律案は、これらの状況にかんがみ、高等学校等における教育に係る経済的負担の軽減を図り、もって教育の機会均等に寄与することを目的として、高等学校以外の教育施設である本法律案第二条第一項第五号に規定する特定教育施設に在学する者に対しても高等学校等就学支援金を支給することとしたものである。

三について

 第百七十四回国会における鳩山内閣総理大臣施政方針演説における「高校の実質無償化」は、公立高等学校に係る授業料の不徴収及び高等学校等就学支援金の支給に関する施策の方針について述べたものであり、本法律案及び関連施策により達成されるものである。なお、お尋ねの「無償化」及び「無料化」の内容が明らかでないため、「実質無償化」、「無償化」及び「無料化」の違いをお答えすることは困難である。

四について

 お尋ねの「差額を補てんするため別の費目で徴収すること」の趣旨が必ずしも明らかではないが、本法律案第三条第一項の規定は、地方公共団体は、同項ただし書に規定する場合を除き、公立高等学校について授業料を徴収することができないものとしている。

五について

 本法律案は、二の5及び八の2についてで述べた諸状況にかんがみ、高等学校等における教育に係る経済的負担の軽減を図り、もって教育の機会均等に寄与することを目的とするものであり、このような趣旨から、高等学校等就学支援金の支給対象者について所得制限を設けないこととしたものである。

六について

 本法律案が高等学校等における教育に係る経済的負担の軽減を図り、もって教育の機会均等に寄与することを目的として、公立高等学校について授業料を徴収しないこと等としていることは、地方行政に対する国の関与の強化を図るものではなく、御指摘の「教育行政における地域主権の考え方」と矛盾するものではないと考えている。

七について

 独立行政法人日本学生支援機構が行う学資の貸与は、個別に、経済的理由によって修学に困難がある優れた学生の修学を援助するために行うものである。これに対し、本法律案は、一般的に、高等学校等における教育に係る経済的負担の軽減を図り、もって教育の機会均等に寄与することを目的として、公立高等学校について授業料を徴収しないこととするとともに、公立高等学校以外の高等学校等の生徒等がその授業料に充てるために高等学校等就学支援金の支給を受けることができることとするものである。なお、地方公共団体が実施する奨学金事業は、地域の実情に応じて各地方公共団体の判断により行われるものである。

八の1について

 本法律案による公立高等学校に係る授業料の不徴収及び高等学校等就学支援金の支給により、すべての意志ある高校生等が安心して勉学に打ち込むことができるようになるとともに、高校生等に対して自らの教育に係る費用が社会に支えられていることの自覚を促すことにより、学習意欲を向上させる効果も期待できると考える。また、文部科学省においては、本法律案の立案に当たって、地方公共団体その他の関係団体との意見交換等を行ってきたところである。

九について

 文部科学省としては、我が国の高等教育段階では、家計負担を中心とした私費負担が大きいと考えている。教育の機会均等の観点から、能力があるにもかかわらず、経済的理由により修学困難な者を支援するための制度としては、奨学金事業、各大学が実施する授業料減免等があり、文部科学省としては、引き続きこれらの者に対する支援に努めてまいりたいと考えている。