第174回国会(常会)
質問第一一四号 入院中の患者の他医療機関受診にかかる規制に関する質問主意書 右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。 平成二十二年六月十六日 小池 晃
参議院議長 江田 五月 殿 入院中の患者の他医療機関受診にかかる規制に関する質問主意書 本年四月の診療報酬改定で、入院患者が他医療機関を受診する場合、これまで規制のなかった「『出来高病床』(DPC算定病棟以外の病床であって、療養病棟入院基本料、有床診療所療養病床入院基本料及び特定入院基本料を除く入院基本料を算定する病床をいう。以下同じ)に入院中の患者が他医療機関を受診した場合」に出来高入院料が三〇%減算されるとともに、他医療機関で算定できる範囲が規制され、他医療機関からの専門的診療に伴う投薬が受診日に限られるなど新たな規制が導入された。また、「包括払い病床」(DPC算定病棟以外の病床であって、特定入院料、療養病棟入院基本料、有床診療所療養病床入院基本料及び特定入院基本料を算定する病床をいう。以下同じ)に入院中の患者についても、「他医療機関で包括範囲に含まれない診療のみ行った場合」には入院料の三〇%減算措置などが導入されるとともに、他医療機関で算定できる範囲が規制され、これまで認められていた他医療機関からの専門的診療に伴う投薬が受診日に限られた。こうした規制は地域医療の実態にそぐわないものであり、患者への最適な医療提供や医療機関の連携が阻害されかねない。 私は、本年五月十一日の参議院厚生労働委員会において前記の問題を指摘したところ、政府も「私もこの点(出来高入院料・特定入院料等の減算措置)については余りにストリクトに減額というのはちょっときついのではないかという気は十分そのように持ち合わせておりますので、前向きに検討したい」、「(投薬規制が)連携をかえって阻害する部分があるのではないかと。私も、それは同じような考えを持っております。ですから、この点についても私は前向きに検討したい」(足立信也厚生労働大臣政務官)との認識を示した。また再度、六月一日の同委員会で前記の規制の撤回を求めたのに対して、長妻昭厚生労働大臣は出来高病床について規制を見直すことを表明した。その後、六月四日付で課長通知が改正され、出来高病床に入院中の患者が他医療機関を受診した場合には専門的な診療に伴う投薬が出来るようになった。 このように問題の一部について診療報酬改定後ただちに是正措置がとられたことは評価するが、入院中の患者が他医療機関を受診した場合の出来高入院料・特定入院料等の減算措置、包括払い病床に入院中の患者が他医療機関を受診した場合の投薬規制、他医療機関で算定できる範囲の規制については見直しが行われていない。 入院中の患者への最適な医療の提供や医療機関連携を阻害しかねない今回の規制は更なる見直しが必要であり、このような観点から以下、質問する。 一 包括払い病床に入院中の患者が他医療機関を受診する場合の投薬規制に関して、受診日当日の投薬・注射などを除いて他医療機関では投薬できず、入院医療機関で投薬等を行う旨の規制は維持されている。包括払い病床であろうと出来高病床であろうと、当該入院医療機関で提供が難しい専門的な医療について、他医療機関を受診し必要な投薬を受診当日に限らず必要な期間受ける必要性は変わらない。 今回、包括払い病床に入院中の患者による他医療機関受診にかかる投薬規制を出来高病床と同様に緩和しなかった理由は何か明らかにされたい。 二 薬事法による流通規制(処方医・処方医療機関、薬局の限定)がなされているリタリン、コンサータ以外にも精神神経用剤、皮膚科用剤など様々な薬剤が添付文書の警告で投薬(処方含む)できる施設を限定したり、投薬を専門医に限定したりすることを求めている。このような薬剤を用いた治療を受けている患者が包括払い病床に入院した場合、今回の投薬規制によって入院の継続が必要であっても退院するか専門的治療をあきらめるかの選択を迫られることになる。また、包括払い病床に入院した患者が入院にかかる疾患とは別の疾患の状態に応じて専門的な医療を受ける必要がある場合も同様の問題が生じる。 包括払い病床の入院患者による他医療機関受診にかかる投薬規制は、このように入院にかかる疾患以外に専門的治療が必要な疾患を持つ患者にとって必要な医療がうけられないという不利益をもたらす。この点について政府の見解を明らかにされたい。 三 五月十一日の参議院厚生労働委員会において、入院患者による他医療機関受診にかかる投薬規制に関する私の質問に対して、足立信也厚生労働大臣政務官は「(投薬規制が)連携をかえって阻害する部分があるのではないかと。私も、それは同じような考えを持っております。ですから、この点についても私は前向きに検討したい」と答弁している。 包括払い病床に残った他医療機関受診にかかる投薬規制は、二で述べたように患者に不利益を与え、足立信也厚生労働大臣政務官が答弁したように医療連携を阻害するものとなっている。早急に包括払い病床の入院患者による他医療機関受診にかかる投薬規制を出来高病床と同様にすべきと考えるが、政府の見解を明らかにされたい。 四 本年四月の診療報酬改定にともない、入院患者が他医療機関を受診した場合に出来高入院料・特定入院料等が減算されることとなった。出来高病床等(出来高病床に入院中の患者が他医療機関で医療を受けた場合及び包括払い病床の入院患者が他医療機関で受けた医療が当該包括払い病床の包括範囲外の場合)に関しては三〇%、包括払い病床(他医療機関で受けた医療が当該包括払い病床の包括範囲の診療を含む場合)に関しては七〇%という減算幅の算定根拠を明らかにされたい。また、他医療機関の医療内容にかかわらず減算幅が固定されている理由についても明らかにされたい。 五 包括払い病床の入院患者について投薬規制が強化され、他医療機関において受診日当日の投薬等以外はできないとされたにもかかわらず、七〇%(受けた医療が当該包括払い病床の包括範囲の診療を含む場合)という特定入院料等の減算幅が変更されなかった理由を明らかにされたい。この措置が結果的に入院医療機関の経営を圧迫することになるのではないかと考えるが、あわせて政府の見解を明らかにされたい。 六 腎臓透析のように一定期間ごとに専門的治療のため他医療機関の受診を必要とする患者については、他医療機関受診のたびに出来高入院料・特定入院料等が減算されることになり、診療報酬の度重なる引き下げで追い込まれている医療機関にとって大きな減収を覚悟で入院治療を行わなければならない。 このように、専門的治療を要する疾患を複数抱える患者は、複数疾患を抱えるというだけで大変なのに、今回の規制によってさらに困難を抱えかねないと考えるが、政府の見解を明らかにされたい。 七 出来高病床の場合は原則として医療が重なる部分は無く、実際本年三月以前は減算が行われていなかったのであり、この部分にかかわる三〇%の減算措置については撤回をすべきではないか。さらに、包括払い病床であっても包括範囲外の医療を他医療機関で受ける場合においても医療が重なる部分は無く、この部分にかかわる三〇%の減算措置は撤回すべきではないか。 八 入院中の患者の他医療機関受診にともなう出来高入院料・特定入院料等の減算措置について、足立信也厚生労働大臣政務官は本年五月十一日の参議院厚生労働委員会において、「私もこの点(出来高入院料・特定入院料等の減算措置)については余りにストリクトに減額というのはちょっときついのではないかという気は十分そのように持ち合わせておりますので、前向きに検討したい」と答弁したのであり、その他の減算措置の影響について実態を早急に調査するとともに、そのあり方を再検討すべきではないか。政府の見解を明らかにされたい。 右質問する。 |