質問主意書

第174回国会(常会)

質問主意書


質問第一一三号

「医薬品の郵送販売規制の省令」に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十二年六月十五日

弘友 和夫   


       参議院議長 江田 五月 殿



   「医薬品の郵送販売規制の省令」に関する質問主意書

 平成二十一年六月一日の改正薬事法の施行により、医薬品の郵送販売規制が始まった。この規制により、漢方薬等が郵送出来なくなり、継続的な医薬品の服用が途切れ、健康被害、病状悪化をきたす可能性は当初から懸念されていたが、一年経過後の今日、顧客からの苦情や漢方薬等を郵送販売規制対象から外すべきとの声も多く、今や社会問題化している。漢方薬等の郵送販売については、取りあえず、二年間の経過措置が図られているが、全面禁止という販売規制の措置とは裏腹に、これまでの薬局、薬店における郵送販売の基礎調査すらされることなく、規制強化に至ったことや、結果として、漢方薬を服用する弱い立場の高齢者等の患者、薬局、薬店の経営者に、大きな打撃を与えていることは問題である。そこで以下質問する。

一 漢方薬の郵送販売規制実施後の影響及び現状をどのように把握し、どういった認識を持っているのか、政府の見解を明らかにされたい。

二 経過措置期間を終え、漢方薬の郵送販売を全面禁止した場合の影響について、政府の見解を明らかにされたい。

三 行政刷新会議の規制・制度改革に関する分科会において示された第一次報告書(案)は、漢方薬の郵送販売を含む一般用医薬品のインターネット等販売規制の緩和の事項の対処方針は調整中とされ、何ら今後の対処方針が示されていない。なぜ、一切対処方針が示されていないのか。その具体的な理由を明らかにされたい。また、いつまでに右事項についての具体的な対処方針が示されるのかについても、明らかにされたい。

四 漢方薬の郵送販売については、今まで漢方薬局、薬店により適正に販売がなされてきたわけであり、早急に規制を撤廃すべきだと考えるが、政府の見解を明らかにされたい。

五 医薬品販売の対面原則は、「医薬品の使用者に直接説明をすることで、安全性を確保するため」というのが厚生労働省の見解だが、対面であれば、身元確認の必要のない代理人(使用者・家族でなくとも可)にも販売できる。一方で、漢方薬等の郵送販売は、本人からの依頼であろうと一切認められない。「使用者の状態を知らない代理人への販売」が、「電話であっても、本人の依頼により、本人に情報提供を行った上での郵送販売」に比べて、安全性が保たれるとする理由は何か。政府の見解を示されたい。

六 漢方薬を継続して服用している人の場合、風邪や緊急の用事などで薬局まで行けないケースは、十分におこりうる。また、漢方の専門薬局を近隣で探すことが難しく、店頭に行くことができなければ、現在服用中の薬が途切れてしまうケースも十分に考えられる。高齢者の場合、この事態は特に深刻である。継続服用中の薬が途絶されたことによっておきる健康被害(痛みの憎悪なども含む。)に対して、政府はどのように責任をとるのか。政府の見解を示されたい。

七 省令では「購入者から申し出があった場合の医薬品の情報提供は、対面でなければならない」と規定しているため、購入した医薬品についての情報も、直接薬局へ出向かなければ受けられない。例えば、電話でこの医薬品を今の体調で飲んでもよいかという問い合わせがあった場合、現省令では、来局・来店してもらわなければ答えることができない。そこで、以下質問する。

1 電話相談ができなければ急な対応、臨時の対応、細かなアドバイス等が不可能となるが、これが、政府の本意と考えてよいのか。
2 メーカーや医薬品医療機器総合機構の医薬品情報提供は電話で可能であるにも関わらず、医薬品販売者から医薬品購入者への情報提供のみを全て対面で行うとした理由は何か。
3 さらに、服用する医薬品に対して、電話で必要な情報提供を受けられないために健康被害をおこした場合、責任の所在はどこにあるのか。

八 今回の省令では、漢方に限らず臨時・緊急の場合等に電話で行われていた「経管栄養剤の郵送・配達」や糖尿病・腎臓病等の自己管理に欠かせない「一般用検査薬の郵送」等も不可となる。電話及び郵送サービスは、高齢者にとって極めて重要なライフラインであり、今回の医薬品郵送規制は、彼らの医薬品入手手段を大きく損なうことになる。まもなく超高齢化社会を迎えるが、外出のままならない高齢者から、医薬品の郵送サービスを取り上げることは、即、彼らの健康被害につながる可能性がある。そこで、今後、高齢者の医薬品入手手段をいかに確保するのか、政府の見解を示されたい。

九 これまで長年にわたり郵送販売によってその流通が維持されてきた漢方薬及び伝統薬は、今回の郵送販売規制により廃業に追い込まれるケースも出ると思われるが、この場合、日本の伝統的な薬の処方そのものが消えてしまう可能性が高い。これまで多くの患者の健康を守ってきた漢方薬及び伝統薬の処方を失うことは、日本の医療にとって大きな損失となる。そこで、現在政府は、統合医療を目指しているが、日本の伝統医薬を損なわせる事態に対し、どのように対処するのか。政府の見解を示されたい。

十 政府は、一般用医薬品によるセルフメディケーションによって、医療費の削減を意図していたはずだが、現実には、一般用医薬品の販売量は低下しており、その意図が成功しているとは考えにくい。そこで、今回の郵送販売全面規制により、これまで漢方薬に頼っていた人までが、漢方薬を入手する事が困難になれば、さらなる医療費の増加につながってしまうと思われるが、この点をどう考えるのか。政府の見解を示されたい。

十一 現在、薬局の場合、薬剤師が不在の時間帯は、登録販売者が在局していても薬局を閉めなければならない。特に地方においては、学校薬剤師の協力等で出かける事も多く、登録販売者がいても、薬剤師が薬局を不在とすることになる。結果として、消費者にとっては、一般用医薬品の入手機会が合理的根拠もなく失われている。これに対し、ドラッグストア等店舗販売業では、登録販売者が在店していれば、店舗を閉める必要がなく、第二類以下の一般用医薬品の販売は問題なく行える。そこで、薬局においても、薬剤師が在局していない時間帯については、処方箋調剤と第一類の一般用医薬品の販売を行えないとするにとどめ、第二類以下の一般用医薬品の販売は、登録販売者が在店していれば行えるようにすべきであると考えるが、政府の見解を示されたい。

  右質問する。