質問主意書

第174回国会(常会)

質問主意書


質問第九五号

医薬品のインターネット販売に関連した医薬品の適正使用と安全性の確保に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十二年六月十一日

川田 龍平   


       参議院議長 江田 五月 殿



   医薬品のインターネット販売に関連した医薬品の適正使用と安全性の確保に関する質問主意書

 平成二十一年六月一日より改正薬事法が施行され、医薬品の郵送等を用いた販売が、第三類医薬品に限って可能となった。また、経過措置ではあるが、薬局及び店舗販売業の店舗が存しない離島に居住する者並びに改正省令の施行前に既存薬局開設者から購入し、若しくは譲り受けた薬局製造販売医薬品又は改正省令の施行前に既存薬局開設者又は既存一般販売業者若しくは既存薬種商等から購入し、若しくは譲り受けた第二類医薬品を改正省令の施行の際現に継続して使用していると認められる者については、薬局製造販売医薬品及び第二類医薬品も併せて郵送等にて販売ができるものとした。旧法令下にて、郵送等による販売の恩恵を受けてきた者への配慮がなされた経過措置であり一定の評価はできるものと考える。
 さて、本改正薬事法によって郵送等による医薬品販売が可能となったことを受け、インターネットを使用した医薬品の販売も右に示した範囲で可能となったのは周知のとおりである。そこで、インターネットを使用した医薬品販売における安全性の確保及び医薬品の適正使用という観点から次の点につき質問する。

一 医薬品をインターネットを介して販売する場合には、生活者に医薬品を授受する際に、郵送・宅配等何らかの配送手段を利用すると考えられるが、医薬品の郵送等による販売の今後を考えると、配送中の医薬品の製剤学的安定性や物理的破損等に配慮した配送システムの構築がひとつの重要な課題になると思われる。対面による販売では、医薬品販売者が生活者に医薬品を授与する瞬間まで、その販売する医薬品の陳列に十分に配慮し、その品質に責任をもてる状態にあると考えられるわけであるが、郵送等の配送手段を用いた場合には、医薬品授与の際に、配送業者など第三者を介することとなり、専門家が関与しない空白の時間が生じることから、これまで考慮されてこなかったリスク要因が増えるおそれもある。たとえば、この第三者が十分な配慮を怠ったために配送に付した医薬品の品質を著しく欠損せしめ、生活者の健康な生活を害したとなれば、生活者の便宜を考慮して導入された医薬品の郵送等による販売制度が国民の健康な生活を脅かすことになりかねない。我が国の配送業者の不断の努力によって、配送事業における事故が諸外国より少なく秀でた状態にあることは喜ばしいことであるが、市場経済が導入されている我が国において、配送の質は低減しつつもより安価な配送コストを謳った配送業者の参入がないとは言えない。現行法制下では、医薬品販売者が自由に配送者を選定できる状況になっていることを鑑みるに、善意ある配送業者を選定する術について議論を深める必要性があるものと考える。
 ドイツにおいては、二〇〇四年一月のApothekengesetz(薬局法)の改正でインターネットを介した医薬品の販売が許可されたわけであるが、この法律においては、インターネットを介した医薬品販売を業として営む薬局には、配送保険に加入することを義務付け、配送過程で生じる事故に十分なる配慮をするよう規定していると聞く。医薬品は人体に直接影響がある作用をもつものであり、その授受には慎重を期すべきと考えるが、我が国においても、薬剤師等専門家の手を介した直接の授受が担保されない郵送等による医薬品販売の場合には、配送時の安全性を確保する措置を講ずるべきと強く感じるところである。ドイツで実施されている配送保険への加入を義務付けるなどの方策も有効な方策のひとつであるが、それは事故補償の考え方にたったものであり、事故を未然に防ぐという観点からみると根本的な安全確保策とは言い難い。そこで、医薬品を郵送等を介して販売する場合の適正な配送の在り方について政府の見解を明らかにされたい。

二 我が国においては、第三類医薬品に限定されているインターネットを介した医薬品販売であるが、国際的には、一般用医薬品から処方せん医薬品まで各国の医薬品市場の状況に合わせてインターネットを介した販売が運用されている。我が国においても市場動向や国民の意識などを検証し、国民の健康増進に寄与するインターネットを介した医薬品販売の在り方を随時検討していく必要性を認識している。しかしながら、医薬品の安定供給と適正流通という観点からWHO(世界保健機関)が主催するIMPACT(国際偽造医薬品・医療機器対策タスクフォース)は、インターネットを介した医薬品販売が偽造医薬品の流通を助長していると指摘し、「偽造医薬品・医療機器のインターネット取引対策ガイダンス」の取りまとめ作業に着手するなど、インターネットと偽造医薬品流通との間に密接な相関関係があることが国際的に認知されているところである。我が国は、個人輸入など一部の例外を除き、偽造医薬品の流通が確認されておらず、偽造医薬品流入阻止に成功している数少ない先進国の一つである。そこで偽造医薬品流入阻止という観点から以下の点につき政府の見解を明らかにされたい。

1 偽造医薬品に対する政府見解。
2 偽造医薬品とインターネット販売の関係性についての政府見解。
3 偽造医薬品流入を阻止するための措置についての政府見解。
4 偽造医薬品の流通を防ぐためのインターネット販売の在り方についての政府見解。

三 インターネットを介した医薬品の販売は、対面による医薬品販売と異なり、販売者の実態を確認するのが簡単ではないのは周知のとおりである。生活者は、インターネット上で医薬品を販売する業者が信頼できる業者であるかの確認をインターネット上という文字及び画像など五感を用いることのできない限定された情報空間で判断せねばならない。米国、英国、ドイツなど諸外国においては、インターネットを介して販売できる薬局を政府機関が認証し、通常の薬局開設設置基準に上乗せした形でインターネット販売を許可する許可認証方式を採用している。生活者が安心してインターネットにて医薬品を購入できる体制を構築するために、我が国においても何らかの政府認証制度を講ずる必要があると考えるが、信頼性を担保するという意味での公的認証制度の必要性について政府の見解を明らかにされたい。

  右質問する。