質問主意書

第174回国会(常会)

質問主意書


質問第八五号

自由権規約第一選択議定書批准に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十二年六月三日

浜田 昌良   


       参議院議長 江田 五月 殿



   自由権規約第一選択議定書批准に関する質問主意書

 国際人権規約のうち市民的及び政治的権利に関する国際規約(以下「自由権規約」という。)の第一選択議定書は自由権規約で保障された権利を侵害された個人が、国内手続でその救済がなされなかった際に、国連の自由権規約委員会に通報できる「個人通報制度」を定めるものである。個人通報制度は自由権規約の実効的な担保を確保する上で重要な制度であるが、わが国はいまだ同議定書の批准に至っていない。
 個人通報制度については、千葉景子法務大臣が同制度の導入に向けて、外務省が主催する関係省庁研究会に参加し、通報事案への具体的対応の在り方や体制整備等について協議、検討を進めるなど、同制度の導入に前向きな姿勢を示している。
 そこで、個人通報制度及び自由権規約第一選択議定書の批准に関し、以下のとおり質問する。

一 わが国は外交政策として、人権外交を掲げているが、今後とも人権外交を外交の一つの柱とするという理解でよいか、政府の見解を示されたい。

二 わが国は自由権規約を批准しており、自由権規約委員会から過去三回個人通報制度を定める第一選択議定書の批准を勧告されている。また、国連の様々な場で個人通報制度の導入を勧告されている。これら度重なる勧告は条約上の権利の保護・促進のためには個人通報制度が必要であるとの認識に立っているものと考えられる。そこで、人権外交を標榜する政府として、わが国が批准した人権条約に定める各人権の保護・促進のために個人通報制度が重要なものであるという認識を持っているか、見解を示されたい。

三 アジアを除く世界の他の地域、すなわちヨーロッパ、米州(南北アメリカ大陸)、アフリカにはそれぞれ地域人権機構が機能しており、個人通報制度が確立している。それにより、自由権規約第一選択議定書の個人通報制度が無くても同様の働きをしている。しかし、アジア地域には地域人権機構が無く、日本も個人通報制度を導入していない。
 OECD加盟三十カ国のうち、地域人権機構も無く、自由権規約第一選択議定書も批准せず、個人通報できない国はどこか。また、G8各国のうち、地域人権機構も無く、自由権規約第一選択議定書も批准せず、個人通報できない国はあるのか。それぞれ示されたい。

四 自由権規約批准に際し、衆議院外務委員会で「選択議定書の締結については、その運用状況を見守り、積極的に検討すること」という要望決議がなされている。自由権規約批准百六十五カ国(二〇〇九年十二月現在)のうち第一選択議定書を批准している国は何カ国あるのか示されたい。

五 二〇〇九年の鳩山政権発足直後の記者会見で、千葉景子法務大臣は個人通報制度の導入に向けた体制整備を進めていると発言している。わが国が批准した主たる人権条約であって、個人通報制度を持つ自由権規約、女性差別撤廃条約、拷問等禁止条約、人種差別撤廃条約の四条約の全てについて、同時に導入するという理解でよいか、政府の見解を示されたい。

六 今国会では、政府は条約の承認案件として自由権規約第一選択議定書の批准及び個人通報条項の受託宣言を提出していないが、何故提出していないのか。また、批准及び受託宣言に向けた準備のための予算を今年度計上していないのは何故か。それぞれ政府の見解を示されたい。

七 本年三月に開かれた人種差別撤廃条約の定期報告書審査の際に、日本の代表団は「政権交代があり、これは重要な検討事項という指示を受けているので、どのような形で受け入れるのがよいのかを検討中である」という趣旨の発言をしている。「どのような形で受け入れるのがよいのかを検討中」とはどのような趣旨か。検討内容を具体的に示されたい。

八 七で記載した件については、今後、更に検討が必要であるのか。必要とされる検討課題があるのであれば、その内容について、いつまでに検討するのかを含めて明らかにされたい。

九 批准・受託宣言及び国会提出はいつになるのか、政府の見解を示されたい。

  右質問する。