質問主意書

第174回国会(常会)

質問主意書


質問第六九号

東京地下鉄の安全管理に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十二年五月十二日

神取 忍   


       参議院議長 江田 五月 殿



   東京地下鉄の安全管理に関する質問主意書

 国においては「運輸の安全性の向上のための鉄道事業法等の一部を改正する法律」(平成一八年法律第一九号。以下「同法」という。)により、運輸事業者に対して、絶えず輸送の安全性の向上に向けた取組を求めるとともに、安全最優先の方針の下、経営トップ主導による経営トップから現場まで一丸となった安全管理体制の適切な構築を図るため、安全管理規程の作成等を義務付けたところである。
 人や物を大量に、高速に、かつ、定時に輸送できる鉄軌道は国民生活に欠くことのできない交通手段である一方、一たび事故が発生すると、多くの死傷者が発生し被害が甚大となるおそれがあるほか、利用者の利便に重大な支障をもたらす危険性がある。
 都心部の鉄道事業者においては、その公共性に鑑み、特に朝夕のラッシュ時における駅構内の安全管理が求められると考える。そのような中、平成二十二年四月二十七日に東京地下鉄(東京メトロ)有楽町線飯田橋駅において、質問者本人の目の前で朝のラッシュに巻き込まれた女性が転倒、頭部を強打し起き上がれない状態となったにも関わらず、駅職員を呼び、駆けつけるまでの十分間にわたって質問者と当該女性客が同駅ホームに放置された状態になった。その際、当該ホームには駅職員が配置されており、また、同駅事務室においては防犯カメラによる確認もされていたという。
 救命活動は、第一発見者から医療機関に至るまで、「連携した協力」が不可欠であり、また、初期の救命処置が人命のその後を大きく左右する。
 東京地下鉄においては、輸送の安全の確保に関する基本的な方針として、鉄道事業の運営は安全の確保を第一の課題として行うものとしており、また、事故・災害等の発生時には、人命救助を最優先に行動し、相互に協力して速やかに安全かつ適切な処置をとることとしている。
 さらに、同社は安全への取組として、現業社員全員が普通救命技能認定証を取得しているとしているが、右記の事件について職員に対するヒアリングを行ったところ、現場において安全に対する意識や管理体制が徹底されていると考えるのが難しく、同法の趣旨が現場において形骸化されているおそれがあるため、以下質問する。

一 国土交通省は東京地下鉄に対し、同社が作成した安全方針等に従った安全管理体制の運用がなされているか、同社の経営管理部門における安全方針等に対する理解及び関与の度合いは十分か、同社において過去の行政処分又は行政指導等を踏まえた安全方針等の作成及び実施がなされているかの各点について、確認し、更なる改善等に向けた助言を行っているか。行っているのであれば、その経過について示されたい。

二 国土交通省が東京地下鉄に対して行った「運輸安全マネジメント評価」のうち、「救助・救急活動の充実」に関する評価について示されたい。

三 鉄道事業は国民生活に欠かせない極めて公共性が高いものであることから、特に同事業に従事する職員に対しては救命技能の取得を義務付ける必要性があると考えるが、政府の見解を示されたい。

  右質問する。