質問主意書

第174回国会(常会)

質問主意書


質問第六五号

風力発電の導入拡大に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十二年四月二十八日

川田 龍平   


       参議院議長 江田 五月 殿



   風力発電の導入拡大に関する質問主意書

 鳩山新政権は温室効果ガス排出の一九九〇年比二五パーセント削減を目標とし、環境・エネルギー産業を経済成長の戦略的柱として位置付け、電力の固定価格買取制度の拡充等による再生可能エネルギー拡大支援、住宅・オフィス等のゼロ・エミッション化、エコ社会形成に向けた集中投資を始めとした新エネルギーの加速的導入・促進に向けた政策の方向性を次々に打ち出してきている。こうした地球温暖化防止、温室効果ガス排出の低減に向けた大胆な政策には賛意を表するものである。新エネルギー導入の加速化についても、分散型のエネルギー需給体制を構築する方向性を目指すものであるなら、温室効果ガス排出の削減のみならず、新産業の育成、とりわけ地域経済の活性化を促すものとして効果的と考える。
 しかし、風力エネルギーの利用に関しては、風力発電施設による健康被害や生態系・景観への影響などが大きく、これらに対する具体的対策、例えば同施設に係る立地規制や法アセスによる環境への配慮などがなされないかぎり、風力発電の導入促進・拡大とその加速化は容認することはできない。
 風力発電施設、とりわけ大規模風力発電施設は環境負荷が大きいことがわかってきていることから、以下、風力発電の導入拡大について質問する。

一 温室効果ガス排出の一九九〇年比二五%削減は再生可能エネルギーによる大幅な寄与を前提としている。政府は太陽光、風力、バイオマスその他の新エネルギーについて、それぞれどの程度の導入量を目標にしているのか示されたい。
 また、本年三月に公表された「地球温暖化対策に係る中長期ロードマップ」(環境大臣試案)(以下「中長期ロードマップ」という。)では、再生可能エネルギーの供給割合を二〇二〇年には一〇%以上にするとしており、個別に再生可能エネルギーの導入目標を掲げている。民主党政権は今後の風力発電の導入量についてどのように考えているのか。その導入量の中期目標を明らかにされたい。併せて、太陽光発電の導入量の中期目標についても明らかにされたい。
 他方、今国会に政府が提出した「地球温暖化対策基本法案」では、再生可能エネルギーの供給量に関する中期的な目標や地球温暖化対策に関する基本的な計画の策定が規定されているが、これらと「中長期ロードマップ」との関係を明らかにされたい。

二 「中長期ロードマップ」では、再生可能エネルギーのうち、風力発電については、二〇二〇年に最大で一一三一万キロワットの導入目標を掲げている。これは二〇〇〇キロワット級の風力発電施設で換算すると五六五五基が必要になる。既設を含めても、五六五五基以上の風車を今後どこに建設するというのか。
 そもそも平地の少ない狭小な国土、厳しい地形、不安定な季節風などから、日本には風力発電に適した土地が少ない。また、風力発電施設は周辺住民にとって健康被害等をもたらす公害源であり、生態系や景観に影響を及ぼすことで甚大な環境破壊をもたらしうる施設である。
 こうした状況のもとで今まで以上に風力発電の導入拡大を推し進めるということであれば、政府の責任において、立地可能な地域を具体的に示されたい。

三 政府は今まで、新エネルギーの利用・促進を「新エネルギー利用等の促進に関する特別措置法」による補助事業として進めてきている。特に風力発電については、地方公共団体、NPO法人のほかに、主として民間事業者に補助金を交付する支援事業を実施することにより、その導入量を拡大させてきた。しかし、こうした民間事業者は近年、発電効率や採算の面から風車の大型化と集中配置(ウインドファーム化)を進めると同時に、山岳部に進出し、居住区域に近接して施設を建設するようになっており、施設周辺住民の健康被害や景観への影響、生態系への負荷を増大させるなど深刻な事態を招来させ、全国各地で建設反対運動を招く原因になっている。
 今後とも政府は風力発電の導入量の加速的拡大に向けて、電力の固定価格買取制度の拡充と併せて、同法の枠組みを維持し、健康被害や環境破壊をもたらしている無秩序な民間事業者の事業展開を補助金により支援し続けていくのか。その方針を明らかにされたい。

四 民間事業者が補助金の交付認定を受けるに際しては、その要件として「地元承諾の取りつけ」と「環境影響調査の実施」が求められている。しかし、こうした要件を遵守する民間事業者は少なく、このことが全国各地での建設反対運動の大きな要因となっている。
 民間事業者による風力発電の導入を進めるのであれば、風力発電施設を環境影響評価法の対象とするだけではなく、「地元承諾の取りつけ」を補助金交付申請手続きの一環として位置付け、補助金交付の申請から認定までの過程の透明化を図るべきである。政府の考えを問う。

五 前政権は昨年の通常国会で「エネルギー供給構造高度化法」を成立させ、家庭における太陽光発電の余剰電力を倍額の一キロワット当たり四八円の価格で買い取るなどの固定価格買取(フィードインタリフ)制度を導入した。鳩山新政権のもとでは、これをさらに進めて全量買取とすると同時に、買取対象も太陽光のみならず風力、バイオマスなどすべての再生可能エネルギーによる全電力とする制度へと全面移行させる方針が打ち出されている。
 しかし、買取対象をすべての再生可能エネルギーによる全電力とする制度に移行すれば、固定価格のもとで確実な収益が得られるようになるため、太陽光・風力ともにメガ発電施設建設が中心となり、現状の規制のままでは風力発電施設による環境問題をより一層深刻なものとしてしまうことになりかねない。風力発電に対する固定価格買取制度の適用は環境に対する十全な配慮のもとで、適切な立地規制をした上で実施すべきと考えるが、政府の見解を明らかにされたい。

  右質問する。