質問主意書

第174回国会(常会)

質問主意書


質問第六三号

経済連携協定に基づく介護福祉士候補者に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十二年四月二十七日

中村 博彦   


       参議院議長 江田 五月 殿



   経済連携協定に基づく介護福祉士候補者に関する質問主意書

 日本・フィリピン及び日本・インドネシア経済連携協定(以下「EPA」という。)に基づき、平成二十年度にインドネシア人介護福祉士候補者一〇四人、平成二十一年度に同一八九人及びフィリピン人介護福祉士候補者一九〇人が、我が国に入国し、介護保険施設等において就労している。これは、我が国の介護保険施設等で三年以上の実務経験を経て、介護福祉士試験に合格することによってその資格を取得し、継続して日本に滞在・就労することを目的としている。介護保険施設等における両国介護福祉士候補者の就労は、日本人と同等の処遇が確保されており、質の高い介護サービス提供に寄与しているにも関わらず、現状において、これを継続するには種々の問題があることから、政府の対応について、以下質問する。

一 EPAによる看護師・介護福祉士候補者の受入れについて、政府は、フィリピン及びインドネシア政府に対しそれぞれ、「二年間で看護師候補者四〇〇人、介護福祉士候補者六〇〇人、計一〇〇〇人の受入れ」を約束している。
 にも関わらず、平成二十・二十一年度のインドネシア人、同二十一・二十二年度のフィリピン人各候補者の受入れ人数は、これを大幅に下回っている。このことに関して、政府の見解を示されたい。

二 EPAによる介護福祉士候補者の受入れを行う介護保険施設等においては、受入れの要件として、「就労するフィリピン人及びインドネシア人介護福祉士候補者を除く介護職員の員数が、法令に基づく職員等の配置基準を満たすこと」とされている。同基準は、指定介護老人福祉施設の場合、「指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準」(以下「運営基準」という。)により、「入所者三人に対し、看護・介護職員一人を満たすこと」となっている。これを踏まえ、以下の点を質問する。

1 EPAによる介護福祉士候補者は、日本人の従事者と同等の処遇により雇用契約を交わしており、現に入所者等から良質の介護サービスを提供しているとの高い評価を得ているにも関わらず運営基準上の職員に含まれないのは不合理であると考えるが、政府の見解を示されたい。
2 運営基準が求める「看護・介護職員」のうち介護職員については、特段の資格要件を定めていない。すなわち、介護福祉士はもとよりホームヘルパー一級又は二級の資格を有していない、いわゆる「無資格者」であっても介護業務に就くことができる。また日本人以外でも、日本人の配偶者、日系人等の外国人の場合でも介護業務に就くことができ、いずれも運営基準上の職員として算定できるのである。しかるに、EPAによる介護福祉士候補者は、母国において看護師養成課程又は介護職員養成課程を修了している者を応募要件としているにも関わらず、運営基準上の職員として算定できないのは、極めて不合理であり、フィリピン及びインドネシア両国民に対する不平等差別待遇と言わざるを得ないが、政府の見解を示されたい。
3 介護福祉士国家試験を受けるためには、介護に従事する期間が三年以上必要とされており、EPAによる介護福祉士候補者は、介護保険施設等においてこの条件を満たすこととされている。このように実務経験が評価されるにも関わらず、運営基準上の職員の員数に含まれないのは、不合理であると考えるが、政府の見解を示されたい。
4 EPAによる介護福祉士候補者の受入れ施設における費用負担は、二人以上の受入れを原則とすることから、初年度に一〇七万円に達する。この他に、受入れ施設では日本語習得のための便宜を図ること等により費用が発生している。
 このように受入れ施設は、運営基準上の職員として算定できないために介護報酬上の対価を得ることができない状況にあるにも関わらず「人材育成・確保」に要する費用負担のみを課されていることについて、政府の見解を示されたい。
 また、受入れ施設におけるこれらの費用負担を軽減するための対策を講ずる必要があると考えるが、政府の見解を示されたい。

三 EPAによる介護福祉士候補者が受験する介護福祉士国家試験について、以下の点を質問する。

1 介護福祉士国家試験は、既に資格制度創設二十年余を経ているにも関わらず、その合格率は五〇%台を推移している。
 これに比べ、平成二十二年に実施された介護関連領域の国家試験の合格率はそれぞれ、看護師八九・五%、理学療法士九二・六%、作業療法士八二・二%、言語聴覚士六四・八%となっている。我が国の超高齢社会を支える中核的資格である介護福祉士試験については、出題の在り方にも問題があると考えるが、政府の見解を示されたい。
2 EPAによる介護福祉士候補者は、介護業務に従事しながら日本語の習得に励み、四年目に最初で最後の国家試験を受けることになる。日本語を母国語としない者が日本語により試験を受けるハンディに考慮して、少なくとも常用漢字にない用語に振り仮名を付けるか又は平易な言葉に言い換えるとともに、受験時間にも配慮し、不合格の場合においても翌年度受験まで在留を延長するといった措置を講ずるべきでないか。
3 日本語を母国語としない者については、一定の日本語能力、コミュニケーション能力を検定することにより、在留期間の延長を図るべきでないか。

  右質問する。