質問主意書

第174回国会(常会)

質問主意書


質問第六〇号

日本原燃(株)六ヶ所再処理工場の高レベル放射性廃液の安全管理に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十二年四月二十日

川田 龍平   


       参議院議長 江田 五月 殿



   日本原燃(株)六ヶ所再処理工場の高レベル放射性廃液の安全管理に関する質問主意書

 日本原燃(株)六ヶ所再処理工場においては、どのような地震に襲われようとも、高レベル放射性廃液(以下「高レベル廃液」という。)が環境中に漏れ出すといった大事故につながることのないよう、その未然防止対策を講じていく必要がある。このような問題意識から、平成二十一年十一月十日に「日本原燃(株)六ヶ所再処理工場の高レベル放射性廃液の安全管理に関する質問主意書」(第一七三回国会質問第二六号)を提出し、同月二十日に政府から答弁書(内閣参質一七三第二六号。以下単に「答弁書」という。)を受領したが、それは真摯な答弁とはほど遠く、とても納得できるものでない。そこで、本件に関して、答弁書において質問に答えていない事項や疑義の残る事項も含め、以下質問する。

一 答弁書の「一の1から3までについて」において「日本原燃は、回収した液体の放射能量について、当該貯槽における液量及び放射性物質濃度を洗浄作業前後で比較することにより評価し、その結果を、経済産業省原子力安全・保安院(中略)に報告するものと認識している」と答弁しているが、「高レベル廃液ガラス固化建屋固化セルにおける高レベル廃液の漏えいについて(漏えい液の回収及び機器健全性の評価等)」(日本原燃株式会社、平成二十二年二月二十四日付)以外のより詳細な漏えい放射能の物質収支に係る報告が日本原燃から報告されるのか、また、それが公表されるのかどうか、政府の認識を示されたい。

二 答弁書の「一の6について」において「事前公表の要否については、日本原燃が判断すべきものと考えている。なお、保安院においては(中略)六ヶ所再処理施設の放射性廃棄物の海洋放出口近隣に立地するむつ小川原港付近の海水等に含まれる放射性物質の濃度等について、日本原燃から四半期ごとに報告を受け、これを公表している」と答弁している。しかし、海洋放出の有無と連動する形で尾駮港の海水中トリチウム放射能レベルが増減する傾向が見られ(環境科学技術研究所調べ)、四半期ごとの事後報告では、日常的に海洋を利用する漁業者、サーファーや釣り人らが不要の放射線被ばくを避けることが出来ない。そこで、政府は公共用水域を利用する人々を守るために、日本原燃に対し、あらかじめ海洋放出日時を公表するよう指導すべきであると考えるが、政府の見解を明らかにされたい。

三 六ヶ所再処理工場が本格操業になった場合、各貯槽では、最大でどれほどの高レベル廃液が貯蔵されることになるのか、その数値を問う。また、この地震大国で高レベル廃液を液体状態で貯蔵することは非常に危険と考えられる。しかし、アクティブ試験におけるガラス固化体製造工程のトラブルはすでに二年以上経過しており、施設が本格稼働するのは二〇一〇年十月以降となっている。また、今日までのトラブル等の経過から、さらに高レベル廃液の貯蔵が長期化する可能性も考えられる。そこで、高レベル廃液は燃料剪断後、何年くらいの間、貯槽での貯蔵が可能なのか。また、長期間の貯蔵について危険性はないのか。それぞれ政府の見解を明らかにされたい。

四 事業者や周辺住民の防災意識を高めるためにも、国は六ヶ所再処理工場の高レベル廃液が環境中に漏えいした場合の周辺環境に与える影響について、環境影響評価を実施し、その結果を公表すべきであると考えるが、政府の見解を明らかにされたい。なお、公表すべきではないとするならば、その理由を明らかにされたい。
 また、答弁書の「二の3について」において「六ヶ所再処理施設において高レベル廃液が漏えいした場合の事故評価については、安全審査の過程において、再処理施設安全審査指針(昭和六十一年二月二十日原子力安全委員会決定)を踏まえて行っており、その結果を公表している」と答弁しているが、当該評価結果を記載した文書名と当該文書のどの箇所に当該評価結果が記載されているのか、当該評価結果の概要とともに具体的に示されたい。

五 答弁書の「二の4について」において「原子力安全委員会が必要に応じ調査を行うこと等により、安全の確保を図っている」と答弁しているが、政府の審議会等において高レベル廃液の安全管理について耐震性を含めて話し合われたことがあれば、当該審議会等の名称と当該議事録の在処を示されたい。
 もし仮に審議されていたとしても、大量の高レベル廃液が溜まっている現在、その安全管理について専門の審議会等を設置するとともに徹底した対策を講じ、国民の不安に対応することが政府の役目であると考えるが、政府の見解を問う。

六 答弁書の「三の1について」において「先般のガラス固化建屋ガラス固化セル内での高レベル廃液の漏えいは、ガラス固化技術の成立性に関係するものではないと認識している」と答弁しているが、日本原燃が技術移転した東海TVF一号溶融炉は一九九四年に運転開始されたものの、七年間に固化体一三〇本を製造しただけであった。それは耐用年数五年ということであったが、運転五〇〇日で電極が浸食され、使用不能となり、二〇〇二年三月には廃炉となっている。また、六ヶ所K溶融炉はモックアップ試験も終了しないまま、同年四月に製作され、同年七月に六ヶ所再処理工場に設置されている。このような経過を見れば「外部専門家により技術の成立性が実証された(中略)技術」(内閣参質一七〇第一二三号、平成二十年十二月十六日付)とはとても考えられない。ガラス固化技術を「実証された技術」とした根拠(外部専門家の氏名、本件について審議した審議会等の名称及び当該議事録の概要など)を示されたい。

  右質問する。