質問主意書

第174回国会(常会)

質問主意書


質問第五八号

いわゆる「密約」を記載した文書の廃棄に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十二年四月十二日

糸数 慶子   


       参議院議長 江田 五月 殿



   いわゆる「密約」を記載した文書の廃棄に関する質問主意書

 いわゆる「密約」問題に関する有識者委員会の報告書(以下「委員会報告書」という。)は、沖縄返還時の原状回復補償費の肩代わりに関する「密約」(以下「沖縄返還密約」という。)を「広義の密約」に該当するとした。一方、沖縄返還密約をめぐる情報公開訴訟において東京地方裁判所は本年四月九日、密約の存在を認めたうえで、国が文書の不存在を理由に開示しなかった処分を取り消し、開示を命じる判決を言い渡した(以下「東京地裁判決」という。)。委員会報告書及び東京地裁判決において指摘された点は、いわゆる「密約」を記載した文書の徹底的な探索である。東京地裁判決では、文書が仮に既に廃棄されていたとすれば両省(外務省、財務省)の相当高位の立場の者が関与し、組織的な意思決定がなされていると解するほかない、とまで言及している。
 よって、以下質問する。

一 東京地裁判決に対する政府の見解を示されたい。

二 委員会報告書(概要)の補章「外交文書の管理と公開について」の(1)において、「安保条約改定時の「討議の記録」など四件に関する文書について、そのうちいくつかの「写し」が確認されたものの、写しを含め、その存在が確認されなかった文書もあることに注目せざるをえない」と指摘されていることに対する政府の今後の対応を示されたい。

三 委員会報告書(概要)の補章の(2)において、「「密約」に関連する対米交渉について、当然あるべき会議録・議事録や来往電報類の部分的欠落、不自然な欠落、あるいは交渉経緯を示す文書類が存在しないために、外務省内に残された記録のみでは充分に復元できなかった」と指摘されている。「欠落」していること及び「存在しない」ことに対する政府の見解を示されたい。

四 一般的に各省庁の文書類の保管、廃棄等に関する手続きを明らかにされたい。どのような文書がどのクラス(課長、局長、次官等)の決裁を受け保管または廃棄されるのか。保管及び廃棄の方法も明らかにされたい。

五 沖縄返還密約に関し、その関連文書等の「不存在」の理由を明らかにされたい。

六 沖縄返還密約に関し、その関連文書等が廃棄されたのかどうか、廃棄されたのであれば、その時期、その文書等の呼称、それが誰の指示(担当部署と氏名等)によるものかを明らかにされたい。

七 財務省は、沖縄返還に伴う日本側の財政負担を裏付ける「証拠」として、柏木雄介・大蔵省財務官とアンソニー・ジューリック米財務長官特別補佐官(いずれも当時)が一九六九年に署名した秘密の覚書(以下「柏木・ジューリック文書」という。)を本年三月九日、米国国立公文書館で入手し、菅財務大臣は「文書は本物」、「密約は存在した」(同月十二日の記者会見)と明言した。そこで、柏木・ジューリック文書の内容を明らかにされたい。

八 柏木・ジューリック文書には、①民生用資産買収一億七千五百万ドル、②基地移転費等二億ドル、③通貨交換後の無利子預金による供与一億一千二百万ドル、④基地従業員の社会保障費三千万ドル、⑤琉球銀行株式の売却益等一億六千八百万ドル、との記載があるとされるが、それらの項目に対する財務省の見解を示されたい。

九 財務省は、柏木・ジューリック文書を米国国立公文書館において入手したとしながらも日本側には「いまはない」としている。「いまはない」とする不存在の理由を明らかにされたい。

  右質問する。