質問主意書

第174回国会(常会)

質問主意書


質問第三八号

地球温暖化対策及び原子力政策に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十二年三月八日

加納 時男   


       参議院議長 江田 五月 殿



   地球温暖化対策及び原子力政策に関する質問主意書

 現在、政府で検討されている「地球温暖化対策基本法案(仮称)」(以下「本法案」という。)については、今後数年間の国民生活や経済などに多大な悪影響を及ぼしかねない内容がある。したがって次の事項について質問する。

一 本法案については、目標達成に向けたロードマップもない、国民負担額の提示もない、密室的な議論で国民の理解もない、産業界や労働組合からも強い懸念がある、個別の経済措置もそれぞれ問題があるといった状況の中で検討が進められている。そのような中、何故、結論ありきで強引に温室効果ガス排出量の二十五%削減を目標に掲げ、本法案を取りまとめようとするのか。

二 温室効果ガス排出量の削減については、日本が率先して高い目標を提示しても、国益を重んじる主要国は日本に追随することなく、意欲的な目標の提示には消極的ではないか。意欲的に目標を掲げる国はあるのか。日本の目標を安売りすることは、容易な目標で済ませようとする国に日本国民の血と汗の結晶である財産をクレジット等で安く売り渡すことになり、国民を裏切り、人々の生活を疲弊させる行為であると考える。温室効果ガス排出量の二十五%削減の中身としてクレジットによる排出権を購入することが入っているとすれば、自らの首を絞めることに加え、大切な国富を流出させることを最初から考えているとしか思えない。これはあまりに愚策ではないか。
 以上の点について、政府の見解を示されたい。

三 民主党政権は厳しい規制が技術革新と経済成長に資すると主張している。適正適度な規制であれば、産業界も一生懸命に頑張るだろうが、日本だけが突出した厳しい目標を掲げ、自虐的な規制をすると、国内の産業は海外に移転しかねない。そうなれば、国内では産業が空洞化して雇用が減少する一方、海外では増産するようになり、結局は、地球全体で温室効果ガスの排出量が増加すると考えるが、政府の見解を示されたい。

四 地球温暖化対策の検討に当たっては、エネルギーセキュリティと経済合理性と国民負担と国際交渉との連動などを忘れてはならないと思うが、そのような視点で、本法案を検討しているのか。またエネルギー基本法との連携はどうなっているか。

五 本法案の作成に向けた意見募集においては、中期目標である温室効果ガス排出量の一九九〇年比二十五%削減に対して否定的な意見が九割近くあったと承知しているが、その点についてはどのように本法案に反映するのか。なお、甘利明衆議院議員が提出した「地球温暖化対策ならびに原子力政策に関する質問主意書」(平成二十二年二月二十五日提出、質問第一七五号)の一においても同様の質問があったが、同質問主意書に対する答弁書(内閣衆質一七四第一七五号、平成二十二年三月五日付け。以下「衆議院答弁書」という。)においては、この質問に対する明確な答弁は含まれていない。したがって今回の質問への明確な答弁を求める。

六 衆議院答弁書においては、本法案について「事業者、労働者(中略)からヒアリングを実施(中略)これらの意見も参考としつつ、検討を進めているところ」と答弁しているが、事業者や労働者はそれぞれどのような意見を述べたのか。各団体のヒアリングでは、五分程度の持ち時間しかなかったと聞いたが、同ヒアリングはガス抜き、既成事実づくりではなかったのか。もしそうではないとすれば、それらの意見は現状ではどのように本法案に反映されているのか。それに対して事業者や労働者は納得しているのか。本当に議論をオープンにするつもりはあるのか。意見を聞くだけではなく、意見を取り入れるつもりは本当にあるのか。
 以上の点について、政府の見解を示されたい。

七 衆議院答弁書においては、本法案について「地球温暖化対策の基本的な方向性を定めたものであり、(中略)当該法案に係る国民負担を算出することは困難である」と答弁しているが、「国内排出量取引」、「地球温暖化対策税」、「固定価格買取制度」などの個別具体的な経済措置について、総合的な導入の是非に関する議論を抜きに、「導入ありき」で記載をすることは「基本的な方向性を定めた」法案としては、やはり拙速ではないか。これらの経済措置の導入に当たっては、課題が多く、産業界や労働組合からも懸念が表明されているが、二十五%削減の前提条件が崩れた場合には、これらの経済措置も止めるのか。これらの経済措置を止めないとすれば、その理由は何か。また、目標が無い中で、どのように制度設計するのか。そもそも前提条件の成立を、本法案の施行の前提条件とすることを、法文上規定すべきではないか。
 以上の点について、政府の見解を示されたい。

八 衆議院答弁書においては、国民負担について「経済にマイナスの影響が出ると試算されるものの、(中略)国民負担等の経済影響を緩和できる可能性等が示された。」と答弁しているが、あくまでマイナスはマイナスのままであって、プラスに転じることはないというのが政府見解であると理解してよいか。また、政府はそもそも国民負担は現時点において、いくらになると考えているのか。さらに、国民負担を検討するタスクフォースについて、昨年、小沢鋭仁環境大臣は「専門家を民主を応援する人に」と発言しているが、これはあまりに恣意的で公平性を欠く、不適切な発言ではないか。その後、このタスクフォースはどうなっているのか。
 以上の点について、政府の見解を示されたい。

九 EUは、一九九〇年比で二十%あるいは三十%の温室効果ガス排出量の削減を掲げているが、それらは二〇〇五年比では何%となるか。この目標は我が国の目標に照らして意欲的な目標といえるのか。

十 衆議院答弁書においては、「原子力は、エネルギーの安定供給のみならず、低炭素社会の実現に不可欠であると考えており(中略)核燃料サイクルを含む原子力の利用を着実に推進していくことが、内閣としての一致した方針である。」と答弁している。加えて、本年三月五日の参議院予算委員会における私の質疑に対する答弁において、社民党の党首である福島みずほ国務大臣は、衆議院答弁書の内容を認める発言をしたが、本法案における原子力の書きぶりはどうなっているか。衆議院答弁書のとおりに、原子力は地球温暖化対策にとって必要不可欠のものと記載されるという理解でよいか。

  右質問する。