質問主意書

第174回国会(常会)

質問主意書


質問第二四号

外国人土地法等の規制強化と国民共有の財産である国土資源(土・緑・水)等の保全及び我が国の安全保障に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十二年二月十九日

加藤 修一   


       参議院議長 江田 五月 殿



   外国人土地法等の規制強化と国民共有の財産である国土資源(土・緑・水)等の保全及び我が国の安全保障に関する質問主意書

 二〇〇四年九月、我が国において「水のグローバルガバナンス~人間安全保障の視点から~」と題して、国連大学等の共催による国際会議が開催され、私も環境副大臣として会議に参加した。同会議においては、水は人間の安全保障と密接に関係するものであり、水の「グローバルガバナンス」の確立は世界における重要な課題であると確認された。
 現在では、地球上至る所でレアメタルを含めた資源、勿論、水資源を含めた地下資源の争奪戦が深く静かに、そして急速に展開されていることは報道されているとおりである。
 そこで、以下の質問をする。

一 食料自給率の向上と仮想水(バーチャルウォーター)との関連について

 我が国の食料輸入率は約六〇%である。相当量の食料が輸入されており、これは仮想水の考え方からすると、その分の水量を我が国内で使用しないで、海外の水を使用していることになる。今後、食料自給率の向上を目指す日本の農政においては、国内で使用する水量に当然跳ね返ってくることになる。
1 政府は仮想水、さらに、間接水、直接水の考え方についてどの様に捉えているのか、また、これらの考え方を踏まえ、今後、政策的にどの様に対応していくのか、見解を示されたい。
2 仮想水の考え方に基づき、日本への農産物等の輸出国が仮想水を使用する日本に対し、仮想水に相当する応分の負担を求めてくることが考えられる。それ故、仮想水に係る負担についての考え方を整理すること、国際社会において日本ばかりが海外の仮想水をあたかも自国の水のように浪費しているかのごとく喧伝されないようにすること、さらに本質的には、なるべく仮想水に依存しないように国内の水資源を涵養する対策を講ずることが重要と考えるが、政府の見解を示されたい。
3 食料自給率の向上を目指すに当たり、食料自給率四五%及び五〇%のそれぞれの段階で、水量の需要・供給分析は十分に行われているのか、また、都道府県レベル及び各地域における水量需給のバランスは十分にとれているのか、政府の見解を示されたい。
4 水量の需要・供給分析に当たり、今後の気候変動の状況によっては、積雪量や春季の残雪量が変化し、営農等ばかりでなく、商工業等にも相応の影響を与え、利水条件が変化することが考えられる。よって積雪寒冷地における積雪量の実態調査と農業等への影響について分析を行うべきであると考えるが、政府の見解を示されたい。

二 外国人(法人)等による不動産取得の実態の把握について

 ファンドを含む外国人(法人)が仲介者やダミー会社を多用して真の投資者を明らかにしない形で、我が国の森林、特に山奥の水源林や経営不振の酒造会社、水メーカーを購入しているとの噂が絶えないと聞くに及び、関係省庁にヒアリングをして確かめたところ、外国人(法人)等による不動産取得の実態の確認ができないとのことであった。しかしその後も同様の噂が依然としてある。
 外国人(法人)等による不動産取得については、国益にかかわる重大な問題と考える。よって政府は種々の手立てを講じても実態の把握・確認を綿密に行うべきであると考えるが、見解を示されたい。
 また何故、実態の把握・確認が的確になされないのか。通り一遍の調査ではなく、いま我々が指摘していることが、調査不徹底で仮に皆無と判断し、後日、懸念した案件が出てくることがないように調査しなければならないと考えるが、政府の見解を示されたい。

三 土地所有権と安全保障について

 土地制度について、欧米においては土地の最終処分権や優先的領有権を政府が持っているのに対し、我が国においては土地の私的所有権が公権に対抗しうるほど強いという特徴がある。
 特に外国人(法人)の土地所有については、イギリス、フランスなどでは、私的所有権に一定の制約を課したり、アジアでは、その土地所有に地域を限定したり、事前許可制とするなどの制限を課している国もある。例えば、韓国は「外国人土地法」を有し、許可又は申告を義務付けている。
 即ち、米国やEUなどは地下資源や不動産を含む「重要なインフラ」に対しては、公共秩序、公衆衛生、安全保障の観点から公的な介入が可能な制度を整備している。
 一方、我が国では外国人(法人)であっても、日本人と同様に土地所有ができ、かつ私的所有権は公権に対抗しうるほど強いことから、外国人(法人)の土地所有は法的には野放しの状態にある。
 我が国は地下資源が希少であり、また、国土が狭隘であることを考えると、同資源を大事に扱いつつ、より一層の国土保全を進めることが国益上重要と考える。
 よって政府は、我が国の安全保障の観点から国土資源(土・緑・水)等を含む「重要なインフラ」を守るための包括的なルールの策定や法制化に着手すべきと考えるが見解を示されたい。

四 「国土利用計画法」など関連法の改正について

 長期にわたる確かな利回りを得ることができるものとしてインフラファンドは、世界の投資家の長期的な投資先として注目を集めているという。森林、農地などの自然系インフラである国土資源を含む基盤インフラに対する保全、管理のためのルールと監視のための仕組みづくりは、生物多様性の観点はもとより、我が国の安全保障の観点からも非常に重要な課題である。
 しかし、我が国における森林などの土地取引の現状は、国土交通省の「国土利用計画法に基づく届出等に係る統計」によると、山間部での土地取引総面積が過去十年で倍増しており(二〇〇八年では三万二〇〇〇ヘクタール)、しかも、五ヘクタール以上の大規模土地取引件数についても、直近の三年間(二〇〇六年~二〇〇八年)で一一〇〇件から一二〇〇件と二〇〇〇年頃と比べ五割近く増加している。
 また、都市計画区域外の一ヘクタール以上の土地売買については、国土利用計画法で都道府県知事に対し事後の届出が義務付けられているが、届出書は不動産登記の際の必要書類となっていないため、無届けでも登記が可能であるなど、国として売買の正確な実態が掴みきれないという法の欠陥が露呈している。
 そこで、「国土利用計画法」や「不動産登記法」等の抜本的改正による「事前承認」制度の導入や「登記要件」の強化など、土地の所有、占有、運営管理、転売等に関する関連法の見直し、整備を検討すべきと考えるが、政府の見解を示されたい。

五 「外国人土地法」の改正について

 対馬の自衛隊施設の隣接地における外国人(法人)の土地取得問題が、参議院予算委員会、内閣委員会などの各委員会で取り上げられてきた。
 我が国における外国人(法人)による土地取得は、前述したように売買についての規制は全くないに等しい。従って、外国人(法人)による土地取得の実態も掌握されておらず、安全保障などの観点からの公的な介入は極めて困難な状況にあり、諸外国に比べて法的な整備も未整備のままである。
 大正一四年に成立した「外国人土地法」は、第一条に規定する、相手国との相互主義に基づく制限的措置に対する政令は制定されたことがなく、第四条に規定する、国防上の禁止又は制限措置に対する政令は、戦前に一度制定されたことがあるが戦後廃止され、全く機能していない法律となっている。
 そこで、今やグローバリゼーションが拡大していることを踏まえ、「外国人土地法」の抜本的改正を行い、地下資源や不動産を含む「重要なインフラ」に対する公共秩序、公衆衛生、安全保障の観点からの公的な介入等を可能とする制度の整備を検討することは時宜に適ったことと考えるが、政府の見解を示されたい。

  右質問する。