質問主意書

第174回国会(常会)

質問主意書


質問第二号

国連気候変動枠組条約第十五回締約国会議の結果に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十二年一月十八日

浜田 昌良   


       参議院議長 江田 五月 殿



   国連気候変動枠組条約第十五回締約国会議の結果に関する質問主意書

 国連気候変動枠組条約第十五回締約国会議(COP一五)は、交渉の結果を「コペンハーゲン合意」として採択できず、同合意を留意(take note)することを決定したにとどまった。この結果を踏まえ、同会議での公平かつ実効性のある温室効果ガス削減の国際枠組みの構築を目指し、「一九九〇年比で言えば二〇二〇年までに二十五%削減」など、我が国の気候変動問題への積極的取組を表明した国連気候変動首脳会合での鳩山総理の演説(以下「鳩山国連演説」という。)の意味が今問われている。さらに、留意されることとなった「コペンハーゲン合意」において、先進国が二〇一〇年から二〇一二年までの三年間に総額三百億ドル(約二兆七千億円)の資金拠出を約束する中で、小沢環境大臣は鳩山イニシアティブとしてその六割を超える約一兆七千五百億円の資金拠出を表明している。温室効果ガス排出の世界全体に占める割合が四%であり、かつ、財政的にも逼迫している我が国が何故このような巨額な資金拠出を表明しなければならなかったのか、多くの国民が疑念を抱いているとともに、鳩山環境外交の無謀さに危惧を覚えている。
 そこで、以下のとおり質問する。

一 「コペンハーゲン合意」の内容について、鳩山内閣はどのように評価しているか。「合意」は十分なものであったと認識しているか。また、「合意」の取りまとめに際し、鳩山国連演説や具体化した鳩山イニシアティブはどのような効果を発揮したのか、客観的な事実を示して評価されたい。

二 「コペンハーゲン合意」が締約国会議で採択されなかったことに対し、鳩山内閣はどのように評価しているか。また、このような事態の回避に鳩山国連演説や鳩山イニシアティブが十分に寄与しなかった理由について、どのように認識しているか。

三 昨年十二月十九日から二十日にわたる最後の締約国会議での日本政府関係者の発言内容について、その詳細を明らかにされたい。外務省の審議官が一回、環境大臣が一回発言し、環境大臣は締約国会議が「コペンハーゲン合意」への留意を決定した後に、鳩山国連演説を引用することもなく、COP一六に向けた作業計画についてのみ発言するという、いわば「敗戦処理」のような発言を行ったと聞いているが、合意の採択に向け、締約国会議でどのような「政治主導の環境外交」を展開したのか、具体的に示されたい。

四 途上国支援に関して、我が国が全体の六割を超える資金拠出を表明しなければならなかった理由を明らかにされたい。鳩山国連演説で我が国が突出した目標を表明したにもかかわらず、その後の外交的フォローが十分でなく、二〇一三年以降も京都議定書を単独に延長するという我が国にとって最悪のシナリオが現実味を帯びたため、それを回避するために行ったという、いわば「鳩山国連演説の尻ぬぐい」という見方があるが、それに対する認識を客観的事実に即して示されたい。

五 日本の資金拠出の具体的な内訳を明らかにされたい。これらのうち、従前の公約であったクールアースパートナーシップ(二〇〇八年から二〇一二年までに一兆二千五百億円)に上積みされるものは官民それぞれいくらか。また、国際協力銀行、日本貿易保険及びNEDOからの資金は官民資金のどちらに位置づけられるのか、それぞれ明らかにされたい。

六 日本の資金拠出には、「COP一五における政治合意の成立を前提として」という条件が付されていたというが、その事実関係を確認したい。また、今回のCOP一五の結果はその前提条件を満たしたと判断しているのか、その理由も含め明らかにされたい。

七 日本の資金拠出が二〇一三年以降の日本の温暖化ガスの排出削減にカウントされるクレジットとなるように今後外交交渉すべきと考えるが認識を示されたい。

八 本年一月末までに提出することとされている温室効果ガス削減目標については、どのような表現とするのか。鳩山国連演説同様、前提条件付で行うのか。また、基準年については、次期枠組みで焦点となっている米国及び中国が二〇〇五年を採用していること、欧州やロシアとの間で不平等となっている前提条件を改善することなどを踏まえ、我が国としても二〇〇五年を基準年として採用すべきと考えるが認識を示されたい。

九 一九九〇年比二十五%削減を目指す際の国内排出削減量、いわゆる「真水」と森林吸収や排出量取引といった「オフセット」との内訳はどの段階で明確にするつもりなのか示されたい。

十 鳩山国連演説は国民や産業界との意見交換が必ずしも十分でない中で行われたとの批判がある。今後、本年一月末までに提出する温室効果ガス削減目標ではどのように国民や産業界の声を反映させるのか。その具体的手法につき明らかにされたい。

十一 二十五%削減に伴う国民負担を検討するため、政府が地球温暖化問題に関する閣僚委員会の下に設置したタスクフォースの検討結果(中間とりまとめ)をどのように認識しているのか。また、同タスクフォースについては、メンバーを入れ替えた上で再検討する意向と聞くが、これまでの検討やメンバーのどこに問題があったのか明らかにされたい。

  右質問する。