質問主意書

第173回国会(臨時会)

答弁書


答弁書第九九号

内閣参質一七三第九九号
  平成二十一年十二月十一日
内閣総理大臣 鳩山 由紀夫   


       参議院議長 江田 五月 殿

参議院議員紙智子君提出電磁波対策に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員紙智子君提出電磁波対策に関する質問に対する答弁書

一の1について

 総務省においては、平成二十年度及び平成二十一年度に「電波の安全性に関する調査」を財団法人テレコム先端技術研究支援センターに請け負わせて行っており、平成二十年度の事業費は四億四千五百万円である。厚生労働省においては、「職場における電磁場環境および人体ばく露の実態と労働衛生管理の在り方に関する調査研究」に、平成二十年度において、首都大学東京理工学研究科教授多氣昌生氏を主任研究者として、補助金九百万円、「磁界の生体への影響とその機構の解明」に、平成二十年度から平成二十二年度まで、東京大学大学院総合文化研究科教授久保田俊一郎氏を主任研究者として、平成二十一年度までに補助金累計額二千八百万円、「居室における中間周波電磁界に関する研究」に、平成二十一年度から平成二十四年度まで、明治薬科大学客員教授大久保千代次氏を主任研究者として、平成二十一年度に補助金二千四百万円を拠出している。経済産業省においては、平成二十年度及び平成二十一年度に「電力設備電磁界情報調査提供事業」を実施しており、平成二十年度において株式会社野村総合研究所に千百万円を委託している。環境省においては、平成二十年度に「一般環境中電磁界ばく露に係る情報収集」を社団法人環境情報科学センターに請け負わせて行っており、その事業費は百万円である。

一の2について

 総務省においては、平成二十年度及び平成二十一年度に「電波の安全性に関する調査」を財団法人テレコム先端技術研究支援センターに請け負わせて行っており、その内容は一の1についてで述べたとおりである。環境省においては、平成二十年度に「一般環境中電磁界ばく露に係る情報収集」を社団法人環境情報科学センターに請け負わせて行っており、その内容は一の1についてで述べたとおりである。

一の3について

 財団法人テレコム先端技術研究支援センターにおける評価会委員は、九州大学大学院特任教授上野照剛氏、東京工業大学大学院教授安藤真氏、明治薬科大学客員教授大久保千代次氏、東北大学大学院教授澤谷邦男氏及び社団法人生命科学振興会理事長渡邊昌氏と承知している。なお、環境省における一の2についてで述べた事業においては、調査研究の内容が請負契約時に決定しているため、お尋ねのような機関は設置していない。

一の4について

 一の2についてで述べた二つの公益法人において、平成二十一年十二月一日前五年間に天下り(府省庁が退職後の職員を企業、団体等に再就職させることをいう。)に該当する者はいない。

一の5について

 研究を行う団体が、客観的なデータを用いた科学的な手法で評価、研究を行うことにより、客観性、公正性、中立性が担保されると考えている。

一の6について

 電磁界関係省庁連絡会議については、平成十九年度は、平成十九年五月、六月、十月及び十一月に開催し、総務省、文部科学省及び経済産業省における取組、世界保健機関(以下「WHO」という。)の超低周波電磁界に関する環境保健基準等を議事とし、平成二十年度は、平成二十年五月に開催し、経済産業省における取組、電波法(昭和二十五年法律第百三十一号)の改正による電波利用料の使途の範囲の見直し等を議事とした。
 なお、平成二十一年度は、平成二十一年十二月九日現在で、まだ開催されていない。

二の1について

 携帯電話用基地局の周辺住民から要望が寄せられ、総務省がその内容を関係の携帯電話事業者に連絡した件数は、参議院議員紙智子君提出電磁波対策に関する質問に対する答弁書(平成十九年七月十日内閣参質一六六第七七号。以下「先の答弁書」という。)の閣議決定の日から平成十九年度末までにおいて四十八件、平成二十年度に五十七件、平成二十一年度は平成二十一年十一月末までにおいて二十七件であり、合計百三十二件である。

二の2について

 携帯電話事業者が携帯電話用基地局を建設するに当たり、周辺地域の住民から説明を要求されるなどの理由により、当初の設置予定を変更したものの件数は、先の答弁書の閣議決定の日から平成二十一年十一月末までにおいて二十二件、うち撤去又は移転したものの件数は六件と承知している。

二の3について

 携帯電話用基地局の設置に関し、携帯電話事業者と当該基地局の周辺地域の住民との間で訴訟により係争中となっているものの件数は、平成二十一年十一月末現在において七件、うち最高裁判所に上告中のものが三件、高等裁判所に控訴中のものが二件、地方裁判所に提訴中のものが二件と承知しているが、それぞれの訴訟名については承知していない。

二の4について

 電力会社が送電線、変電所又は配電線の建設等を行うに際して、電磁界に関する健康影響等の理由により地域住民などから提訴及び調停の申立てがなされたものの件数は、平成九年度から平成二十一年十一月末までにおいて十九件で、同月末現在係争中のものはない、と承知している。

三の1について

 電磁波の健康への影響については、御指摘の研究も含め、様々な研究が行われていると承知している。
 現在、WHOの国際電磁界プロジェクトにおいて総合的な検討が進められており、政府としては、同プロジェクトにおいて十分な検討が行われることが重要であると考えている。

三の2について

 先の答弁書二の2の(三)についてで述べたとおり、携帯電話用基地局の詳細な設置場所については、設置主体である法人の競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあることや、犯罪の予防その他の公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがあること等により、明らかにしないこととしている。

三の3について

 鉄道車両内における携帯電話の使用については、これまでも、各鉄道事業者の自主的な判断の下、優先席の付近等での電源の切断を呼び掛けるため、車内放送の実施、ポスター・ステッカーの掲示等の取組がなされているところである。
 国土交通省としては、社団法人日本民営鉄道協会が行っているマナー啓発活動に対し、従前から後援を行ってきているところであり、引き続き、鉄道事業者が行う鉄道車両内における携帯電話使用の在り方を含むマナー向上の啓発について、協力してまいりたい。

三の4について

 お尋ねの電磁波に係る予防的アプローチについては、WHOの国際電磁界プロジェクトにおいて検討が進められているが、平成十九年六月にWHOが超低周波に関する正式見解を発表した文書であるファクトシートのナンバー三百二十二(以下「WHOファクトシート」という。)においては、御指摘の被曝を防ぐための予防的な対策をとるべきとの各国への要請はなされていない。
 いずれにせよ、政府としては、WHOファクトシートを踏まえ、電磁界の健康影響に係る関係者間の対話を充実させていくこと等が重要であると考えている。