質問主意書

第173回国会(臨時会)

質問主意書


質問第九九号

電磁波対策に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十一年十二月三日

紙 智子   


       参議院議長 江田 五月 殿



   電磁波対策に関する質問主意書

 携帯電話基地局建設をめぐって全国各地で建設中止や撤去をもとめる運動、裁判が続いている。また電磁波過敏症を発症した人々からは日常生活を安全に安心して過ごせるよう、携帯電話や基地局、その他さまざまな電磁波発生源の適切な住み分けや規制をもとめる声があがっている。これらを踏まえ、すでに第一六六回国会に質問主意書(質問第七七号、二〇〇七年七月五日)を提出し、当時の自公政権の対応をただした。
 その後の電磁波対策をめぐる現況を把握するとともに、新政権がこの問題にどのような姿勢で臨むのか、以下質問する。

一 電磁界・電磁波をめぐる各省庁の研究、検討状況について

1 二〇〇八年度以降において各省庁が予算を支出した電磁界・電磁波に関する研究実績(委託研究をふくむ)について、研究開始年度・終了(予定)年度、調査研究名、研究機関、研究者名、役職名、研究費をすべて示されたい。さらに各省庁横断的に行っている調査研究があれば同様に示されたい。
2 各省庁が所管公益法人(一例として、総務省では財団法人テレコム先端技術研究支援センター(以下「(財)テレコムセンター」という。))に調査研究を委託し、もしくは請け負わせている場合、それぞれの公益法人で行っている各調査研究の研究開始年度・終了(予定)年度、調査研究名、研究機関、研究者名、役職名、研究費を示されたい。
3 調査研究業務を受注した公益法人において、2の調査研究を決定している機関((財)テレコムセンターの場合は評価会)について、その構成員の氏名、役職名を示されたい。
4 調査研究業務を受注した公益法人において、省庁からのいわゆる天下りがある場合は、その氏名、省庁での最終役職名、省庁退職年月日、公益法人への就職年月日、公益法人での役職名、常勤非常勤の別を示されたい(過去五年分)。
5 総務省によると、(財)テレコムセンターが受注し、二〇〇七年度から開始した生体電磁環境に関する十五テーマの各研究では「携帯電話基地局及び携帯電話からの電波が人体に影響を及ぼさないことを示している他、過去に影響があると報告された結果について生物・医学/工学的な手法を改善した実験においては、いずれも影響がないという結果を得ている」とのことである。
 ところで、(財)テレコムセンターの役員、評議員はいずれもKDDI株式会社、株式会社日立製作所、株式会社東芝、日本電信電話株式会社など電気通信事業者が大半を占めている。このような団体が行う研究が事業推進に不利な結果とならないことは容易に推察される。
 政府は、電気通信事業を推進する団体による電磁波の健康影響に関する研究結果に、客観性、公正性、中立性がどのように担保されると考えるか、所見を示されたい。
6 政府が一九九六年から開催している電磁界関係省庁連絡会議について、二〇〇七年度から今年度までの開催実績と審議内容を示されたい。

二 携帯電話基地局建設をめぐる現況について

1 総務省は衆議院で「携帯電話基地局の建設をめぐって周辺住民と携帯電話業者との話し合いがスムーズに進んでいないケースが平成十七年三月末現在、二十件程度」と答弁(二〇〇五年四月二十六日)し、前記の質問主意書に対する答弁書(内閣参質一六六第七七号、二〇〇七年七月十日)では「携帯電話事業者が携帯電話用基地局を設置するにあたり、周辺地域の住民から説明を要求されるなどの理由により、当初の設置予定を変更したものの件数は、平成十八年十月現在において、四十件」と答えている。
 これまでに住民から変更、撤去等の要望が出された件数、及び総務省としてその内容を関係の携帯電話事業者に連絡した件数について、年度ごとの件数と累計数で示されたい。
2 携帯電話事業者が携帯電話基地局を建設するにあたり、住民からの要望で計画を変更し、別の場所に建設した件数、また一度建設した携帯電話基地局を住民からの要望等で撤去又は移転などに至った件数を示されたい。
3 前記の答弁書では「携帯電話用基地局の設置に関し、携帯電話事業者と当該基地局の周辺地域の住民との間で訴訟により係争中となっているものの件数は、平成十九年七月現在において九件」と答えている。現在、係争中の事案は何件か。それぞれの訴訟名と審理状況を示されたい。
4 経済産業省は衆議院で「電力会社が送電線、変電所、配電線の建設等に際して地域住民などと電磁界に関する健康影響等の理由により訴訟及び調停申し立てがあった件数は平成九年度から現在までに十八件あり、現在も係争中のものは二件と電力会社から承っている」と答弁(二〇〇七年五月二十五日)している。それぞれの現在までの件数及び係争中の事案名を示されたい。

三 今後の電磁波対策について

1 電磁波の生体影響についての研究で著名な科学者、公衆衛生・公共政策専門家十四名からなる「バイオイニシアティブ・ワーキング・グループ」が超低周波電磁波と無線周波数電磁波の影響を評価し、二〇〇七年八月、超低周波電磁波への長期間曝露でがんの発症率やアルツハイマー病のリスクが増加すること、無線周波数電磁波への長期間曝露で悪性脳腫瘍、聴神経腫発症の危険性が高まると指摘しているが、政府はこの研究結果をどう評価しているか。
2 携帯電話基地局の位置情報は、諸外国では米国、英国、ドイツ、フランス、オランダ等々でインターネット公表を行っている。
 当該情報は、電磁波過敏症の発症者にとって、住居の選択等にあたって、また、日常生活を安全、安心に過ごす上で重要な情報の一つであり、わが国でもさらに情報公開をすすめるべきではないか。
3 電磁波過敏症の発症者にとっては、鉄道車両内での携帯電話使用による健康影響が重要な問題になっており、さらなる対策がもとめられる。現在、各鉄道事業者でとられている車両内での部分的な携帯電話の電源オフ対策は事実上形骸化している。
 阪急電車では、二〇〇三年七月からすべての運行で最低一両以上の携帯電話オフ車両を設けており、電磁波過敏症の人々に安心、安全な移動を提供している。
 こうした取り組みを鉄道事業者にさらに促進する必要があるのではないか。
4 世界保健機関(WHO)は二〇〇七年六月、超低周波電磁波の環境保健基準を示すとともに、被曝を防ぐ予防的な対策をとるよう各国に要請した。これまで政府は、生体影響についても、弱い電磁波への慢性的な被曝についても調査を行うばかりで予防的アプローチをとっておらず、対策は先送りされている。これでは被害が拡大しかねない。電磁波対策に予防的アプローチをとり入れ、子ども、高齢者への対策を強化すべきではないか。また、現在の政府の予防的アプローチに関する所見を示されたい。

  右質問する。