質問主意書

第173回国会(臨時会)

質問主意書


質問第九二号

生物多様性条約締約国会議COP一〇を迎える我が国における自然資本に関する光合成メカニズムの十全な利用による微細藻類プロジェクトの展開に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十一年十二月三日

加藤 修一   


       参議院議長 江田 五月 殿



   生物多様性条約締約国会議COP一〇を迎える我が国における自然資本に関する光合成メカニズムの十全な利用による微細藻類プロジェクトの展開に関する質問主意書

一 バイオマス活用推進基本法に基づく基本計画策定にあたっては微細藻類を対象とすべきことについて

 「バイオマス活用推進基本法」が施行されたことから、バイオマス活用推進会議、バイオマス活用推進専門家会議を立ち上げるとともに、同法に基づく基本計画の策定を速やかに実行すべきである。基本計画の策定に際しては、生物多様性の視点を含めたバイオミミクリ技術(ネイチャーテクノロジー)の発展の観点から、日本の二十一世紀の環境成長戦略の一環として明確に「微細藻類の産業利用」を取り上げ、特に注力すべき分野の一つとして戦略的に位置付けることが大変重要であると考えるが、政府の見解を示されたい。

二 「微細藻類」の関連産業技術のアグリバイオサイエンスについて

 地球温暖化問題が深刻化する中、環境負荷の高い化石燃料を基盤とする大量生産・消費・廃棄社会から一刻も早く脱却を図ることにより、地球環境への負荷を軽減しなければならないことは今や誰の目にも明らかである。政府・与党が世界に先駆けて「二〇二〇年時点で一九九〇年比温室効果ガス排出二五%削減」という大きな目標を設定し、成長戦略においても環境分野を明確に位置付けていることは評価できる。しかしながら、この目標を達成するための抜本的な取組の内容に関しては従来施策の延長線上でしか語られず、実現に向けた明確な指針が示されているとは言い難い。既存の産業構造を前提とした省エネルギー対策を推進するのみでは、今日の文明水準を維持しながらこれを効果ある温暖化対策とすることは極めて困難である。日本の成長戦略、特に科学技術や産業化のための技術による二十一世紀の日本の発展を考えると、自然資本、つまり生物資源の持続的利用こそが、新しい成長分野の一つとも言える。即ち、保全・増産・改変までが可能な生物資源由来の「微細藻類」の関連産業技術として、アグリバイオサイエンスへの転換が戦略上重要であると捉えているが、政府の見解を示されたい。

三 光合成メカニズムによる再生可能エネルギーの供給体制の実現について

 今こそ、最先端の技術を結集し既存の産業構造を変革し、環境対策と経済活性化を両立し得る、再生可能エネルギーを基盤とした新たな産業分野を構築していくことが求められている。近年、各種の太陽エネルギーの利用(太陽光発電など)や、光合成メカニズムによる有用物質や再生可能エネルギー源の生産の実用化に向けた取組が世界的に本格化しつつある。これにより、農業や水産業などの一次産業においても、より効率化された太陽光の工業的利用が進み、化石燃料ではなく太陽エネルギーを基盤とする生産システムへと進化させることができると同時に、光合成メカニズムによる再生可能エネルギーの供給システムを実現できると考える。このような取組は、各国が戦略的に挑戦する分野になってきている。
 将来的には、文明活動全体において、化石燃料への依存度は低下し、エネルギー供給・消費全体に占める再生可能エネルギーの割合が大幅に引き上げられることが十分予想できる。このように工業的手法により効率化された光合成メカニズムによる各種の有用物質や再生可能エネルギー源の生産、農業や水産業(養殖)における中核工程の効率化による生産、及びこれらの生産に寄与する生産設備や装置の製造・供給は包括的に「光合成産業」と呼びうる新しい産業分野である。そして、この「光合成産業」は、次世代の農業、水産業、各種有用物質や再生可能エネルギー源の生産において最も「川上」に位置付けられる必要不可決なものであり、地球上のほぼ全ての有機物が光合成メカニズムにより生産されうることを踏まえれば、中長期的には石油化学産業をも置換しうる巨大基幹産業となる潜在性を持っている分野であり、正しく戦略的に対応すべきである。
 以上の諸点を踏まえて、光合成メカニズムによる再生可能エネルギーの供給体制の実現について政府の見解を示されたい。

四 我が国の「光合成産業」を構築する力量について

 我が国は、環太平洋の島国であることから元来豊富な海洋資源を有しており、また、前記の生産システムの構築に必要とされる技術基盤、例えば、①微生物の培養・遺伝子組換技術、②太陽光利用技術、③養殖水産技術、④プラントエンジニアリング等の装置・設備技術、⑤育苗及びそれを支える土壌等の農業技術などは、他国に比べ発達している。従って、「光合成産業」を構築する素地は十分整っているものと判断している。太陽エネルギーをより効率的に利用する光合成に基づく生産システムの進展は、きわめて有効な環境対策となるのみならず、今日の世界的大不況を抜本的に再生しうるイノベーション創造型の経済活性化の処方箋を提供し、ひいては、関連する新事業の創出を通じて「光合成産業」を次世代の基幹産業として勃興させるとともに、我が国の開発ポテンシャルの大きい分野であるととらえている。
 以上の潜在性を踏まえて、我が国の「光合成産業」を構築する力量について政府の見解を示されたい。

五 「光合成産業」による資源開発と国際競争力の強化について

 米国、オランダ、オーストラリア、イスラエルをはじめ、光合成培養分野における研究開発、実証実験を近年加速化している諸外国との熾烈な競争において、我が国がそれを制し、「光合成産業」の構築を世界に先駆けて主導していくことは、知的財産権を優先的に確保するとともに、資源が必ずしも豊富でない日本が資源価格攻勢にさらされることを極力回避することができる有効な手段であり、かつ世界における「光合成産業」の市場を大きく確保するきわめて有効な手段となることが十分期待できる。政府は、以上の諸点を踏まえて積極的かつ戦略的な政策を打つべきである。「光合成産業」による資源開発と国際競争力の強化について政府の見解を示されたい。

  右質問する。