質問主意書

第173回国会(臨時会)

質問主意書


質問第七二号

ダム建設中止問題と気候変動等に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十一年十一月三十日

加藤 修一   


       参議院議長 江田 五月 殿



   ダム建設中止問題と気候変動等に関する質問主意書

一 ダム建設中止問題と気候変動との関わりについて

 平成二十年十月の国土審議会水資源開発分科会調査企画部会の「総合水資源管理について(中間とりまとめ)」によると、「平成十九年に公表された「気候変動に関する政府間パネル」(IPCC)の第四次評価報告書は、気候システムの温暖化には疑う余地がないことを示した。我が国においても、今後、雨の降り方の変化や少雪化等によって渇水が頻発するなど、水資源に大きな影響が出るおそれがある」とされている。
 まず、政府の地球温暖化に対する水資源対策はどのようなものであるのか。また、今回のダム事業の見直しは、積雪減少、日照りによる渇水リスクへの対応能力を低くするものではないかと懸念するが、政府の見解を示されたい。

二 水資源の国際比較について

 水資源の国際的な比較という観点から考えると、例えば日本のダムの総貯水量は、フーバーダムの約半分しかなく、首都圏の一人当たり貯水量は、ソウルやニューヨークに比較しても十分の一程度と言われている。政府は、我が国において、国民一人当たりどの程度の貯水量で十分なものと評価しているのか。また、その根拠は何か。政府の見解を示されたい。

三 異常気象への対応について

 地球温暖化の進行とともに、集中的な豪雨や、スーパー伊勢湾台風のような台風の大型化が懸念されている。地球温暖化を前提として考えた場合に、ダムの治水効果は、今以上に大きくなるのではないか。例えば、八ッ場ダムに関して言えば、過去の代表的な十パターンの洪水を選定しているが、地球温暖化で予想される最悪ケースを含んだ計算を行わないと、今後来るべき異常気象に十分対応できないと考えるが、政府の見解を示されたい。

四 バーチャルウォーターと水の自給率の概念について

 現在、日本は食料自給率が四十%程度であり、海外からの食糧輸入に頼っている。食糧を生産するためには、当然に水が必要とされ、例えば、一キログラムのトウモロコシを生産するには、灌漑用水として一八〇〇リットルの水が必要であり、牛はこうした穀物を大量に消費しながら育つため、牛肉一キログラムを生産するには、その約二万倍もの水が必要とされる。日本は海外から食料を輸入することによって、その生産に必要な分だけ自国の水を使わずに、形を変えて輸入していると考えることができる。これはバーチャルウォーターという概念でロンドン大学東洋アフリカ学科名誉教授のアンソニー・アラン氏によって提唱されているとおりであるが、二〇〇五年において、海外から日本に輸入されたバーチャルウォーター量は、約八〇〇億m3と言われ、日本国内の年間水使用量と同程度とされているが、今後、バーチャルウォーターも含めた水の自給率という概念を確立していく必要があるのではないか。また併せて自給率を上げることは水が必要となり、日本国内で利水についても充分考えなければいけないのではないかと思うが、政府の見解を示されたい。

五 水の供給能力の向上について

 食糧生産だけでなく、産業も良質の水を多く必要としている。日本が、食糧や産業のバーチャルウォーター換算分を含む水についての自給率を高め、産業を振興し、世界に競争力を有する国として存立していくためには、水の供給能力を一層高める必要があり、そのためにも利水という観点からダム等の建設が必要であると考えるが、政府の見解を示されたい。

  右質問する。