質問主意書

第173回国会(臨時会)

質問主意書


質問第五八号

矯正施設における薬物依存症者の支援体制の拡充に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十一年十一月二十五日

浜田 昌良   


       参議院議長 江田 五月 殿



   矯正施設における薬物依存症者の支援体制の拡充に関する質問主意書

 平成二十年の覚せい剤取締法並びに麻薬及び向精神薬取締法違反で入所した新受刑者六千三百四十六名のうち、再入所者は四千百十七名と六十五%の高率になっている。一方、平成十五年の出所受刑者二万八千百七十名について、平成二十年末までの再入状況は、出所事由が仮釈放の者の場合は三十六%であるのに対し、満期釈放の者の場合は五十七%と高率となっており、また、出所受刑者に占める満期釈放の者の比率は平成十一年の四十三%から平成二十年の五十%と増加してきている。このような背景から、薬物事犯の再犯防止の為には、満期釈放の薬物依存症者の支援体制の拡充が特に重要であると考えられる。
 また、薬物依存症者に対する民間支援団体によれば、薬物事犯で満期釈放となった薬物依存症者が、身よりもなく、働くこともできず、結局、昔の仲間を頼り、薬物事犯を繰り返してしまうとの実態があり、出所前に生活保護、障害者自立支援法等の社会福祉の手続きができればそのような事態の予防に繋がるとの声もある。
 そこで、以下のとおり質問する。

一 「刑事施設及び受刑者の処遇等に関する法律」の施行により、平成十八年五月から、受刑者に対し、矯正処遇が義務づけられ、平成二十一年度においては刑事施設八十二庁で薬物依存離脱指導プログラムが実施されているが、現在までの当該プログラムを受けた人員数と薬物事犯受刑者に占める比率を明らかにされたい。また、少なくとも満期釈放となると見込まれる者については全員、当該プログラムの対象とすべきと考えるが、政府の見解を明らかにされたい。

二 薬物依存離脱指導プログラムの対象者を拡大する為に、薬物依存症者の民間支援団体との連携の拡大とともに、その知見を活用した通信講座の開発が必要と考えるが、政府の見解を明らかにされたい。

三 「高齢又は障害により特に自立が困難な矯正施設収容中の者の社会復帰に向けた保護、生活環境の調整などについて(平成二十一年四月十七日、法務省保観第二四四号)」に基づく特別調整の実施に当たっては、再犯防止の観点から、薬物依存症者について特に留意して実施すべきと考えるが、政府の見解を明らかにされたい。

四 本通達による特別調整を行った者及びそのうち薬物事犯受刑者は何名か。

五 本通達による特別調整がはかどっていない理由として、その連携先である都道府県の地域生活定着支援センターが未だ十分に設置されていない状況がある。薬物依存症者の生活保護及び障害者自立支援法の適用にかかる特別調整は喫緊の課題であることに鑑み、都道府県が同センターを設置するのを待つことなく、他の福祉窓口と直接連携するよう、全国の矯正施設に徹底すべきであると考えるが、政府の見解を明らかにされたい。

六 地域生活定着支援センターが未だ十分に設置されていない背景には、同センターの運営費に対する国の補助金が一律で且つ十分でなく、さらに将来減額されるとの懸念が都道府県にあることが指摘されている(平成二十一年十一月二十三日付け朝日新聞掲載)。このような懸念を払拭するために、当該補助金を拡充する政府の姿勢を明確にすべきではないか。

七 薬物依存症者にとっては、釈放後も帰住地において薬物依存離脱指導プログラムを引き続き受けることが重要であることから、本通達実施に当たっても、薬物依存症者の民間支援団体との連携が重要と考えるが、その実施状況及び今後の拡充の方針を明らかにされたい。

  右質問する。