質問主意書

第173回国会(臨時会)

質問主意書


質問第三四号

生物多様性等の確保にかかる環境調和型河川構築物等の推進と地域活性化に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十一年十一月十六日

加藤 修一   


       参議院議長 江田 五月 殿



   生物多様性等の確保にかかる環境調和型河川構築物等の推進と地域活性化に関する質問主意書

 明年は、生物多様性の国際条約締約国すべてが参加し、実効ある次期枠組みの国際合意を目指す生物多様性条約第一〇回締約国会議(COP一〇)が開催される。この開催の年、二〇一〇年は国連の定めた「国際生物多様性年」であり、二〇〇二年のCOP六で採択された「締約国は現在の生物多様性の損失速度を二〇一〇年までに顕著に減少させる」という「二〇一〇年目標」の目標年にもあたる。この生物多様性条約における節目の重要な会議に向け、我が国が国際的なリーダーシップを発揮するためには、既になされた「生物多様性基本法」の法制化とあいまって世界に冠たる生態系の豊かさ・バランスを保つ社会の構築を目指さなければならない。一部においてであるが、工業立地においても自然共生型立地が進め始められているところである。また、世界的な経済危機に直面する今こそ環境と経済が両立する新たなビジネスモデル構築のチャンスである。
 そこで、以下質問する。

一 河川等における生物共生に関する全国実態調査と、魚類等の遡上のためのバリアフリー型技術の開発について

 生物の生息地たる河川の役割は重要である。近年、環境問題を積極的に推進する学府では「森里海連環学」という新しい学問体系を構築しつつあり、森から海に至る自然生態系を統合的に模索し、生態系の調和を図る研究と人材育成の試みを開始している。その森と海を繋ぐものが河川である。
 「河川および河川構築物における生物共生に関する全国実態調査」を行い、同時に魚道や小生物の生態系への影響に十分に対応した遡上のためのバリアフリー型技術の開発や社会的実験及び全国河川構築物の改修等の行動計画の策定について、政府の見解を示されたい。

二 河川構築物を含めた設置の在り方について

 河川は人的営みとしての上水道供給や農作物への水分供給に留まらず、多種多様な生物を育み、大規模な生物間の交流を行う生物の宝庫であり不可欠なものであるが、河川より上水を採取する堰などは、内水面魚の遡上も堰き止め、河川上流域での生態系を大きく変化させている。魚道等が整備されつつあるが、必ずしも効果は充分でない。
 二〇一〇年に開催されるCOP一〇に向け、それに対応できる河川構築物を含めた設置の在り方について、実態調査を踏まえた十分な検討と河川改修などに関する明確な実行計画の策定について、政府の見解を示されたい。

三 生物多様性の視点と環境等との調和について

 平成十二年に河川法改正案の附帯決議として、「環境や歴史的風土との調和」等が採択されるなど、治水・利水・環境の多面的視点が必要な今、国土交通省及び農林水産省は、全国共通の課題である河川の生態系保護を意識した生物多様性のあり方を関係省庁と連携して加速的に普及、向上させるよう全力で取り組むことが重要である。
 河川法に基づく生物多様性の視点を明確にした環境や歴史的風土との調和の実現について、政府の見解を示されたい。

四 河川レンジャーの育成支援等について

 住民参加による川の管理を目指して、住民等との橋渡し役となる河川レンジャーの育成支援と適切な配備について、政府の見解を示されたい。

五 健全な水循環について

 河川周辺地域にある里地・里山との一体的な河川環境の整備と仕組みの構築を進めるとともに、土地利用に起因する汚染対策を行い、健全な水循環が進展し、鮎等の生物の生息が促進できる環境の整備について、政府の見解を示されたい。

六 流域全体を環境管理の単位とすることについて

 健全な水循環に関する政策を考える場合は、水が汚染物質の媒体になることから水質管理が非常に重要である。水環境の汚染対策や管理は、様々の課題があるが、市町村の行政の制約を乗り越えてできるだけ流域全体を一つの単位として統合的に捉えた総合的な環境管理計画を推し進めることが必要である。政府の見解を示されたい。

七 小水力発電について

 二〇二〇年を目指して、温室効果ガス一九九〇年比二五%削減にチャレンジし、低炭素社会を目指す上で、再生可能エネルギーでもある小水力発電を拡充するために、これを併設した河川構築物への助成支援について、政府の見解を示されたい。

  右質問する。