質問主意書

第171回国会(常会)

答弁書


答弁書第一九九号

内閣参質一七一第一九九号
  平成二十一年六月十六日
内閣総理大臣 麻生 太郎   


       参議院議長 江田 五月 殿

参議院議員加賀谷健君提出電子行政クラウドに関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員加賀谷健君提出電子行政クラウドに関する質問に対する答弁書

一について

 平成二十一年度第一次補正予算において「電子政府・電子自治体の加速」に掲げられた施策については、高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部(以下「IT戦略本部」という。)に設置された、情報通信技術に関する学識経験者等から構成される「IT戦略の今後の在り方に関する専門調査会」において、本年二月以降検討されてきたものであり、関係省庁間における調整については、同専門調査会における検討と並行して随時行われてきたものである。

二について

 「電子政府・電子自治体の加速」を進めていくに当たっては、霞が関WAN及び総合行政ネットワーク(LGWAN)の活用を想定している。

三について

 今回の補正予算において「クラウド」とは、「クラウドコンピューティング」の略称として用いているものであり、「クラウドコンピューティング」とは、本年四月九日にIT戦略本部が取りまとめた「デジタル新時代に向けた新たな戦略~三か年緊急プラン~」(以下「三か年緊急プラン」という。)においては、「データーサービスやインターネット技術などが、ネットワーク上にあるサーバー群(クラウド(雲))にあり、ユーザーは今までのように自分のコンピュータでデータを加工・保存することなく、「どこからでも、必要な時に、必要な機能だけ」を利用することができる新しいコンピュータネットワークの利用形態」と定義されている。
 また、今回の補正予算において「電子行政クラウド」とは、政府及び地方公共団体の情報システムにおいて活用されるクラウドコンピューティングのことを意味している。

四について

 「ワンストップの行政サービスの実現に向けた国民電子私書箱構想の推進」として計上された約三十億円については、「国・地方間のバックオフィス連携推進事業」として計上された約九億九千九百万円、「共通企業コードセンター構築へ向けた検証」として計上された約十四億九千九百万円及び「認証に係るサーバ連携型ICカードシステム(仮称)」として計上された五億円を合算したものである。

五について

 「国民電子私書箱(仮称)」とは、希望する個人又は企業に提供される高度なセキュリティ機能を持った電子空間上のアカウントであり、本人の意思に基づき行政手続等に必要な情報を直接行政機関間でやりとりできるようにする仕組みとして、三か年緊急プランにおいて提唱しているものである。これにより、行政手続に必要な添付書類を削減し、関連する複数の行政手続を一括して行うことが可能になる等国民の利便性の向上が図られるものと考えている。

六について

 「クラウド・ネットワーク技術の研究開発等」として計上された約百五十六億三千万円については、「クラウド連携次世代IPネットワーク基盤技術」を始め「セキュアクラウドネットワーキング技術の研究開発」として計上された約三十一億三千六百万円、「クラウドシミュレータ等構築費」を始め「クラウドテストベッド環境(次世代クラウド・シミュレータ)の構築」として計上された約八十九億九千八百万円及び「実験用太陽光発電設備及び関連施設整備」を始め「情報通信研究機構における省エネルギー対策推進」として計上された約三十五億百万円を合算したものである。
 また、その事業内容は、クラウドコンピューティングを活用した安全性・信頼性の高いサービスを誰もが利用可能となるネットワーク技術を開発・検証し、このような開発・検証等を行うために必要な次世代クラウドシミュレータ等を整備するとともに、太陽光などの自然エネルギーを活用する先進的な省エネ技術を導入した設備の整備を行うものである。

七について

 「自治体クラウドの開発実証」は、市町村に共通する業務について、クラウドコンピューティングを活用して、市町村が共同で利用する基盤システムの開発実証を行うもので、その実施に当たっては、三つの都道府県に委託することとしており、本事業に計上された約二十億円については、都道府県への委託費用約十九億二千万円及び所要の共通経費約八千万円を合算したものである。

八について

 「政府情報システムの全体最適化のための調査検討」として計上された約一億円については、「「政府情報システムの整備の在り方に関する研究会」運営経費」として計上された約四百万円、「政府情報システムの整備の在り方に関する研究会における調査・分析作業支援」として計上された約七千二百万円及び「共通プラットフォーム整備のための整備方針等作成」として計上された約二千四百万円を合算したものである。
 また、その事業内容は、国民の利便性向上や低廉かつ効率的なシステム構築を図ることを目的とした政府情報システムの統合・集約化等の実現に向け、その技術的課題や制度的課題について調査検討を行い、各府省共通の基盤システムの整備方針等を作成するものである。

九について

 「新しい公的個人認証システムの開発実証」として計上された約七十七億九千万円については、「公的個人認証サービスにおける利便性向上に関する開発実証」として計上された約十億円、「公的個人認証サービスにおける利用用途拡大に関する開発実証」として計上された約四十三億九千万円及び「公的個人認証サービスにおける新暗号アルゴリズム移行方式に関する開発実証」として計上された約二十四億円を合算したものである。
 また、その事業内容は、電子署名に係る地方公共団体の認証業務に関する法律(平成十四年法律第百五十三号)第三条第一項に規定する電子証明書のオンライン更新を可能とする基盤システム、民間事業者が公的個人認証サービスを活用して顧客の本人確認等を行うことを可能とする基盤システム、公的個人認証サービスにおける新暗号アルゴリズムへの全国一斉移行を実現するための基盤システム等の開発実証を行うものである。

十について

 「オンライン申請サポート事業」は、高齢者や零細事業者などインターネットに不慣れな地域住民等を対象に、全国各地でオンライン申請のための講習事業等を実施するものであり、その費用として約十二億円が計上されたものである。
 本事業は、既存の電子申請システムを利用して行うことができる手続のうち、特に利用の進展が見込まれる住民票の写し、印鑑登録証明書等の交付申請、国税・地方税の申告等を対象に行うものである。