質問主意書

第171回国会(常会)

答弁書


答弁書第一七四号

内閣参質一七一第一七四号
  平成二十一年六月二日
内閣総理大臣 麻生 太郎   


       参議院議長 江田 五月 殿

参議院議員水戸将史君提出介護保険制度に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員水戸将史君提出介護保険制度に関する質問に対する答弁書

一について

 今回の要介護認定等の方法の見直しの影響については、今後、「要介護認定の見直しに係る検証・検討会」において、できるだけ早急に検証を行うこととしている。
 また、今回の要介護認定等の方法の見直しにより、要介護状態区分等が変化し、これまで受けていた介護サービスの利用量が変化するのではないかという不安が利用者にあることから、要介護認定等の方法の見直しの影響について検証を実施している期間中、要介護認定等の更新申請者が希望する場合には、従前の要介護状態区分等によるサービス利用も可能となるよう経過措置を設けているところである。
 なお、今回の要介護認定等の方法の見直しは、平成十九年度に実施された研究事業及び平成二十年度に実施されたモデル事業の結果も踏まえたものであり、これらの事業の結果においては、従来の要介護状態区分等と比較して、軽度に判定された者ばかりではなく、重度に判定された者も同程度に存在する。

二について

 平成十九年十二月に社会保障審議会介護給付費分科会介護サービス事業の実態把握のためのワーキングチームが取りまとめた報告においても、介護事業の経営や介護労働者の処遇に影響を与えると考えられる要因については、介護報酬の水準以外にも、介護事業市場の状況、介護サービス事業のマネジメント、人事労務管理の在り方、労働者市場の状況等様々なものがあると指摘されており、お尋ねの「過去の介護報酬の減額と介護人材の確保難を招いたことについての相関関係」について、その有無を明確にお答えすることは困難である。
 また、厚生労働省としては、仮に今回の介護報酬の引上げ分すべてを常勤換算で約八十万人と見込まれる全国の介護職員の給与に充てれば一人当たり月額二万円を超える水準となると考えているが、実際の賃金の引上げ額は、当該介護従事者の雇用形態や事業所の経営状況等により異なってくるものと考える。
 なお、過去の介護報酬の改定率の合計は、マイナス四・七パーセントであるが、平成十八年の改定率には、施設における食費及び居住費の自己負担の導入による介護報酬の減額分一・九パーセントが含まれており、これを除くと、マイナス二・八パーセントとなる。

三について

 平成二十一年度第一次補正予算においては、介護職員の賃金の引上げを実施する事業者に対する助成を行うための基金として、御指摘の四千億円を計上しているが、この額は、平成二十一年度の所要額について、賃金引上げの対象となる介護職員の数を常勤換算で約八十万人とし、当該介護職員一人当たりの助成額を月一万五千円として算定するとともに、平成二十二年度及び平成二十三年度の所要額について、介護サービスの提供量の増大に応じた助成額の増加を見込んで算定し、さらに、これらに事務費を加えて算定したものである。なお、平成二十一年度の事業実施期間は六か月としている。

四について

 介護現場において医療の必要性が高まっていることは認識しているが、そもそも、介護職員が「医療処置」を行うことについては、医師法(昭和二十三年法律第二百一号)、保健師助産師看護師法(昭和二十三年法律第二百三号)等に基づく規制があり、お尋ねの介護職員の人材養成の在り方については、これらの規制の在り方も含め、検討を行う必要があると考える。
 なお、当面の対応として、平成二十一年二月に、特別養護老人ホームにおいて医療的なケアを提供するニーズが高まっている状況に対応するため、看護職員と介護職員の連携によるケアの在り方に関する検討会を立ち上げたところである。

五及び六について

 介護保険施設に係る介護報酬については、介護保険法(平成九年法律第百二十三号)第四十八条第二項の規定に基づき、施設の種類ごとにサービスに要する平均的な費用の額を勘案して、厚生労働大臣がその算定基準を定めているが、これを定めるに当たっては、入所者の要介護度に応じた介護の手間や実際の職員の配置状況等を勘案しているところであり、御指摘のように、法令上の最低限の人員配置基準である三対一の職員配置を基礎としているわけではない。

七について

 お尋ねの地域区分ごとの介護報酬単価の上乗せ割合については、平成二十年四月に実施した介護事業経営実態調査によって得られたデータを基に、地域区分における人件費水準の違いを踏まえて設定したものであり、御指摘の東京二十三区が該当する特別区と横浜市や川崎市が該当する特甲地の上乗せ割合の違いについても、それぞれの地域区分の人件費水準の違いを反映したものである。

八について

 現行の介護保険制度においては、介護保険施設における居住及び食事の提供に係る利用料は、利用者と介護保険施設との間の契約に基づき、決定されるものであるが、低所得者については、その所得に応じて負担限度額を定め、利用料がこれを上回る場合には、基準費用額と負担限度額の差額を限度として補足給付を支給することとしている。したがって、介護保険施設は、少なくとも基準費用額についてまでは、その収入が確保される仕組みとなっており、御指摘の「利用者負担分の一部を肩代わりする施設」については、居住及び食事の提供に基準費用額を上回る経費をかけているものと考えられるが、これは各施設の経営の結果によるものであり、このような施設に対する支援を行う必要性は乏しいものと考える。

九について

 独立行政法人福祉医療機構においては、長期低利の融資を行っており、その条件は、民間の金融機関による融資と比較しても、有利なものとなっているところ、現時点において、お尋ねのように償還期間を更に延長する等の措置を講じることは考えていない。

十について

 厚生労働省としては、特別養護老人ホームにおけるユニット型施設については、入所前までの自宅での生活様式の継続や、より良い生活環境の実現を図る等の観点から、整備を進めていくことが必要であると考えており、第四期介護保険事業計画の策定に当たり改定した「介護保険事業に係る保険給付の円滑な実施を確保するための基本的な指針」(平成十八年厚生労働省告示第三百十四号)においても、平成二十六年度における特別養護老人ホームの定員数に占めるユニット型施設の定員数の割合を七割以上とするという目標を掲げているところであるが、「従来型の新設」について認可するか否かは、各都道府県が地域の実情を踏まえて判断するものである。
 低所得であるユニット型個室の利用者の負担については、利用者に過大なものとならないよう、負担限度額が定められているところである。