第171回国会(常会)
答弁書第一七三号 内閣参質一七一第一七三号 平成二十一年五月二十九日 内閣総理大臣 麻生 太郎
参議院議長 江田 五月 殿 参議院議員福島みずほ君提出二〇〇九年三月二十三日のFDX八〇便事故についての事故原因究明に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。 参議院議員福島みずほ君提出二〇〇九年三月二十三日のFDX八〇便事故についての事故原因究明に関する質問に対する答弁書 一について 御指摘の「FDX八〇便の事故」(以下「本件事故」という。)については、現在、国土交通省運輸安全委員会において調査中であり、「当該事故機の挙動とパイロットの操作との関係」及び事故原因について何らかの判断を下し得る段階にはないが、国土交通省運輸安全委員会においては、事故発生直後に調査を開始し、現地における機体残骸の状況調査により、胴体はほぼ焼損していること、左主翼は翼根付近で破断していること等を確認した。また、併せて滑走路及びその周辺の痕跡調査、事故当時に関する気象情報の入手、関係者からの口述聴取等を実施するとともに、デジタル式飛行記録装置(以下「DFDR」という。)及び操縦室用音声記録装置(以下「CVR」という。)を回収した。DFDR及びCVRについては、米国国家運輸安全委員会の協力を得て、データの読み出しを行い、現在、その他の情報とともに詳細な分析を行っているところである。 今後、必要に応じて、機体残骸等に関して更に詳細な調査を行うとともに、情報の分析を進め、事故原因を究明してまいりたい。 二及び三について 本件事故の原因究明に当たっては、必要に応じて、本件事故と類似の事故等についても調査を行っていくこととしている。 四及び五について 御指摘の国土交通省の公益通報窓口に対する通報については、通報の内容が公益通報者保護法(平成十六年法律第百二十二号)第二条第三項に規定する通報対象事実に該当しなかったことから、同法に基づく公益通報としては受理していない。このため、御指摘の渡部氏に対しては、その旨を通知したところであるが、お尋ねの「調査の指示」については行っていない。 六について 御指摘の「JAL七〇六便事故」の原因究明については、運輸省航空事故調査委員会(現在の国土交通省運輸安全委員会)において、飛行特性や気象に関する調査について専門委員を任命するなどにより、事故原因について様々な角度から調査・解析を行った上で、航空工学、航空機の運航・整備、電子工学、航空機構造力学等を専門分野とする委員長及び委員による審議を経て、調査結果を平成十一年十二月十七日に航空事故調査報告書として公表しており、当該事故に関して、その後新たに重大な情報を把握していないことから、現時点では再調査を行う必要があるとは考えていない。 七について 国土交通省運輸安全委員会においては、事故調査を行うに当たって、考え得るすべての面から科学的かつ客観的な調査を行っているところであり、本件事故についても、MD―一一型機の飛行特性を含め様々な視点から調査を行っているところである。 八の1について MD―一一型機の耐空性審査要領(昭和四十一年十月二十日付け空検第三百八十一号運輸省航空局長通達)の自動操縦装置系統に関する規定への適合性については、米国の航空当局が当該型式機の型式証明を行った際に、当該規定に対応する連邦航空規則(以下「FAR」という。)の規定への適合性を確認していると承知している。 八の2について お尋ねの「人間工学ハンドブック」の改訂について、国が関与したとの事実は把握していない。 八の3について 御指摘の「JAL七〇六」と同じ型式機の飛行特性については、当該型式機の設計及び製造を行った者の事務所等に赴いて調査を行っており、当該型式機が耐空性審査要領の動的安定性に関する規定に適合することを確認しているが、関係データについては事故調査の目的以外には使用しないことを条件に入手したものであるため、お示しすることはできない。 八の4について MD―一一型機の耐空性審査要領の自動操縦装置系統及び動的安定性に関する規定への適合性については、米国の航空当局が当該型式機の型式証明を行った際に当該規定に対応するFARの規定への適合性を確認していると承知しており、また、その後米国の航空当局から当該型式機がFARの当該規定に適合しなくなった旨が通知されたことはないため、「一九九七年当時、現在ともに」継続して担保されているものと考えている。 九の1について 国土交通省運輸安全委員会においては、事故原因の究明に当たって、客観的かつ多角的な視点から的確に調査を行っていくこととしており、御指摘の「予断をもって、安易にウインドシアやパイロットミスが原因であるとの結論を導き出す」ことは行っていない。 九の2について 御指摘の「JAL七〇六便事故」については、六についてで述べたとおり、再調査を行う必要があるとは考えておらず、現時点において、「MD11型機の飛行特性、耐空性への適合性について、根本的な再検討を行うべき」とは考えていない。 九の3について 現時点においては、MD―一一型機の飛行特性は耐空性審査要領の規定に適合していると考えており、米国の航空当局への「耐空証明の再検討」の要求及び「当該型式機の本邦への乗り入れ」の規制を行うことは考えていない。 九の4について 本件事故に関し、「意見公述」の機会を設ける必要性があるか否かについては、今後、国土交通省運輸安全委員会が事故調査を進める中で判断することとなる。 |