第171回国会(常会)
答弁書第一四六号 内閣参質一七一第一四六号 平成二十一年五月十二日 内閣総理大臣 麻生 太郎
参議院議長 江田 五月 殿 参議院議員福島みずほ君提出厳しい雇用情勢の下における派遣労働者の保護等に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。 参議院議員福島みずほ君提出厳しい雇用情勢の下における派遣労働者の保護等に関する質問に対する答弁書 一について 現在、国会に提出している労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律等の一部を改正する法律案(以下「改正法案」という。)において、日々又は三十日以内の期間を定めて雇用する労働者について、労働者派遣を原則的に禁止することとしている趣旨は、派遣元事業主の雇用者責任が果たされないことを防止することにより、労働者の保護を図るものであり、御指摘のような就労形態の防止を目的とするものではない。 二について 御指摘の調査結果は、昨今の厳しい経済状況において労働者派遣契約の中途解除の対象となった労働者の雇用状況等に関するものであり、これを基に、いわゆる常用型派遣の雇用の安定性について、一般的な認識をお答えすることは困難である。 三について 厚生労働省が平成十九年に実施した「平成十九年就業形態の多様化に関する総合実態調査」によると、「登録型」の派遣労働者であって「現在の会社」又は「別の会社」で働きたい者(「登録型」の派遣労働者のうち八十二・五パーセント)のうち、「現在の就業形態を続けたい」を選択した者が四十五・〇パーセント、「他の就業形態に変わりたい」を選択した者が五十四・一パーセントであり、半数近くが「登録型」を選好している。 四について 現行の労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律(昭和六十年法律第八十八号。以下「法」という。)第二十六条第七項の規定の趣旨は、派遣先が派遣労働者を特定する場合には、派遣先と派遣労働者との間に雇用関係が成立すると判断される蓋然性が高くなり、労働者供給に該当する可能性があるほか、派遣労働者の雇用機会を狭めるおそれがあることから、これらを防止するものであり、御指摘の「常用代替」の防止を目的とするものではなく、改正法案における当該規定の改正により直接雇用がいわゆる常用型派遣に代替されることにはならないと考えている。 また、この改正は、派遣元事業主に期間を定めないで雇用される派遣労働者の中から派遣労働者を特定することを可能とするものであり、派遣元事業主による雇入れ又は内定がなされる前の者については、派遣元事業主に期間を定めないで雇用される派遣労働者には当たらないことから、このような者について法第二十六条第七項に規定する派遣労働者を特定することを目的とする行為を可能とするものではない。 五について 御指摘の「直接雇用申込義務」は、法第四十条の五の規定による義務を指すと考えるが、その趣旨は、派遣労働者の雇用の安定を図るため、派遣労働者の希望を踏まえて派遣先に直接雇用される機会を多く確保するものであり、御指摘の「常用代替」の防止を目的とするものではない。 また、当該規定の対象業務になっている法第四十条の二第一項各号に掲げる業務の特性にかんがみると、改正法案における法第四十条の五の規定の改正により直接雇用がいわゆる常用型派遣に代替されることにはならないと考えている。 六について 改正法案による改正後の法第三十条の二の規定は、派遣労働者の従事する業務と同種の業務に係る一般の賃金水準その他の事情を考慮しつつ、その他の要素も勘案し、その賃金を決定することを求めているものであり、お尋ねの場合について一概にお答えすることは困難である。 |