質問主意書

第171回国会(常会)

答弁書


答弁書第一四三号

内閣参質一七一第一四三号
  平成二十一年四月二十八日
内閣総理大臣 麻生 太郎   


       参議院議長 江田 五月 殿

参議院議員松野信夫君提出裁判員裁判の裁判員選任において許容される質問等に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員松野信夫君提出裁判員裁判の裁判員選任において許容される質問等に関する質問に対する答弁書

一から三までについて

 裁判員の参加する刑事裁判に関する法律(平成十六年法律第六十三号。以下「裁判員法」という。)第三十四条第一項の規定により、裁判員等選任手続において、裁判長は、裁判員候補者が、職務従事予定期間において、裁判員法第十三条に規定する者に該当するかどうか、裁判員法第十四条の規定により裁判員となることができない者でないかどうか、裁判員法第十五条第一項各号若しくは同条第二項各号若しくは裁判員法第十七条各号に掲げる者に該当しないかどうか若しくは裁判員法第十六条の規定により裁判員となることについて辞退の申立てがある場合において同条各号に掲げる者に該当するかどうか又は不公平な裁判をするおそれがないかどうかの判断をするため、必要な質問をすることができることとされている。具体的な質問内容については、各裁判所において、個々の事案における具体的事情に応じて適切に判断されるものと考えているが、裁判員法第三十四条第一項の規定による質問は、そのような判断に必要な範囲でなされるものであり、裁判員候補者に対する質問が思想・良心の自由を侵すこととなるとは考えていない。
 また、裁判員法第三十三条の規定により、裁判員等選任手続は、公開しないこととされているほか、裁判員候補者の心情に十分配慮して、これを行わなければならないこととされている。

四について

 裁判員法第三十六条の規定により、検察官及び被告人は、一定の員数の裁判員候補者について、理由を示さずに不選任の決定の請求をすることができることとされている。これは、当事者が、裁判長による質問等を通じ、不公平な裁判をするおそれがあると感じたとしても、具体的な根拠に基づいてこれを明らかにすることには困難を伴うことも多いと考えられ、他方で、不公平な裁判をするおそれのある者が選任された場合、裁判結果に大きな影響を与える可能性があることから、裁判の公正を確保し、当事者からも信頼される合議体を構成できるようにするために設けられた制度であると考えている。

五について

 裁判員法第三十四条第二項の規定により、陪席の裁判官、検察官、被告人又は弁護人は、裁判長に対し、同条第一項の判断をするために必要と思料する質問を裁判長が裁判員候補者に対してすることを求めることができ、この場合において、裁判長は、相当と認めるときは、裁判員候補者に対して、当該求めに係る質問をするものとすることとされている。裁判長がそのような求めに係る質問を相当と認めなかったことが刑事訴訟法(昭和二十三年法律第百三十一号)第二十一条の裁判官の忌避事由に当たるか否かについては、個別の具体的事案に即して、裁判所が判断すべき事項であると考えている。

六について

 五についてでお答えしたとおり、裁判員法上、裁判員等選任手続における裁判員候補者に対する質問は、裁判長がすることとされており、検察官又は弁護人が、裁判員候補者に対し、質問をすることは許されていない。