質問主意書

第171回国会(常会)

答弁書


答弁書第一三八号

内閣参質一七一第一三八号
  平成二十一年四月二十四日
内閣総理大臣 麻生 太郎   


       参議院議長 江田 五月 殿

参議院議員松野信夫君提出裁判官の非行と報酬等に関する再質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員松野信夫君提出裁判官の非行と報酬等に関する再質問に対する答弁書

一について

 憲法第八十条第二項は、下級裁判所の裁判官がその在任中定期に相当額の報酬を受けることを保障しているものであり、御指摘の退職手当の法的性格いかんにかかわらず、国家公務員退職手当法(昭和二十八年法律第百八十二号)の規定により裁判官に支払われる退職手当は、同項に規定する報酬に含まれないものと解される。

二及び四について

 現行法においても、裁判官弾劾法(昭和二十二年法律第百三十七号)第三十七条の規定により罷免されて裁判官の身分を喪失した者については、最高裁判所は、国家公務員退職手当法第十二条第一項第一号の規定により、退職手当の全部又は一部を支給しないこととする処分を行うことができるものとされている。また、罷免以外の事由により裁判官を退官した者についても、最高裁判所は、同法第十四条第一項第一号の規定により、その者が裁判官在任中の行為について禁錮以上の刑に処せられたとき、又は同項第三号の規定により、最高裁判所においてその者が裁判官在任中に裁判官弾劾法第二条に規定する罷免事由に該当する行為をしたと認めたときは、退職手当の全部又は一部を支給しないこととする処分を行うことができるものとされている。

三について

 最近二十年間で、国家公務員退職手当法の規定による退職手当の支給を受けなかった者は、合計三人であり、うち二人は、裁判官弾劾法第三十七条の規定により罷免されたため、国家公務員退職手当法等の一部を改正する法律(平成二十年法律第九十五号)による改正前の国家公務員退職手当法第八条第一項第一号の規定により退職手当の支給を受けなかった者であり、うち一人は、任期を満了して裁判官を退官したが退職手当請求権を放棄したため、退職手当の支給を受けなかった者である。

五について

 「こうした事態を防止するための対策を講じる」ことの意義が必ずしも明らかでないため、お答えすることは困難である。なお、裁判官弾劾法第十五条第三項の規定により最高裁判所から罷免の訴追をすべきことを求められており、又は裁判官訴追委員会から罷免の訴追をされている裁判官については、同法第四十一条の二の規定により、公職選挙法(昭和二十五年法律第百号)第九十条の規定は、適用しないものとされているので、御指摘のように「下級裁判所の裁判官が公職選挙法に定める選挙に立候補すれば自動的に裁判官の身分を喪失する」ものではない。

六について

 一般論として申し上げれば、先の答弁書(平成二十一年四月十日内閣参質一七一第一〇二号)四についてで述べたとおり、弾劾裁判所が裁判官に対して懲戒処分を行うものとすることについては、憲法第六十四条第一項において、国会は、罷免の訴追を受けた裁判官を裁判するため、両議院の議員で組織する弾劾裁判所を設ける旨が規定されていること、憲法第七十八条後段において、裁判官の懲戒処分は、行政機関がこれを行うことができない旨が規定されていること等に照らして、慎重な検討を要するものと考えている。