質問主意書

第171回国会(常会)

答弁書


答弁書第一三六号

内閣参質一七一第一三六号
  平成二十一年四月二十四日
内閣総理大臣 麻生 太郎   


       参議院議長 江田 五月 殿

参議院議員紙智子君提出白リン弾の使用禁止に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員紙智子君提出白リン弾の使用禁止に関する質問に対する答弁書

一の1について

 平成二十年十一月に矢臼別演習場で行われた実弾射撃移転訓練(平成八年十二月二日に発表された「沖縄に関する特別行動委員会」の最終報告を踏まえ沖縄県から本土に移転して行われている「県道一○四号線越え実弾砲兵射撃訓練」に当たる訓練をいう。以下同じ。)において、当該訓練の公開が行われなかった理由については、米海兵隊のホームページにおいて、「第三海兵遠征軍は日本本土にて約十年、沖縄県道一○四号線越え実弾射撃訓練分散を実施しており、陸上自衛隊が使用する同施設にて行っている。昨年の演習では、矢臼別演習場での訓練開始から九周年を迎えた。沖縄県道一○四号線越え実弾射撃訓練は定期的な通常訓練であるが、記者会見及び公開日は、運用上可能な限り地元への影響を最小限に抑えるよう安全かつ責任ある砲兵訓練を実施するという、砲兵部隊指揮官及び兵士らの第一義的な職務を妨げることになる。メディア及び地元の方々が容易に必要な情報にアクセスできるよう、訓練に関する詳細はウェブサイトに掲載される。メディアのその他質問等に関しては、第三海兵遠征軍海兵隊報道部へメールして頂ければ、報道部が迅速に回答する。」と説明していたものと承知している。

一の2について

 在日米軍司令部からは、平成二十年十一月に矢臼別演習場で行われた実弾射撃移転訓練においては白リン弾を使用したが、それ以外の訓練において白リン弾を使用したかについて確認することは困難であるとの説明を受けている。また、在日米軍司令部からは、発射された砲弾の総数について通知を受けているが、砲弾の種類ごとの弾数については、米軍の運用にかかわる内容であるため、通知することは困難であるとの説明を受けている。

一の3及び4並びに二の3について

 御指摘の「確認」及び「説明」の内容について承知していないため、お尋ねについてお答えすることは困難である。

一の5について

 政府としては、白リン弾の使用を含む実弾射撃移転訓練は、日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約(昭和三十五年条約第六号)の目的を達成するため、必要な訓練であると認識しており、その中止を求めることは考えていない。

二の1について

 お尋ねの危険性については、白リン弾の種類、性能、それが使用される高度、気象等様々な条件により異なること等から、確たることを申し上げることは困難である。
 なお、一般論として申し上げれば、御指摘の白リン(黄リン)は、空気に触れることにより、空気と反応し、一般に乾燥剤としても使用されている五酸化二リン、更には毒性の弱いリン酸へとごく短時間に変化するものと承知している。また、自衛隊が保有する黄リンを含有する発煙弾によって、人体への影響があったとの報告は確認されていない。

二の2について

 国際化学物質安全性計画が作成している「国際化学物質安全性カード」において、白リンの急性症状の一つとして「皮膚熱傷」、物理的性質として「発火温度が摂氏三十度」との記述があることは承知している。

二の4について

 防衛省において、平成十六年度以降確認できる文書により確認したところ、米軍の施設及び区域内又はその周辺において、お尋ねのような調査を行った事実は確認されていない。また、矢臼別演習場及び東富士演習場の着弾地については、適切に管理しており、お尋ねのような調査を実施する必要があるとは認識していない。

三の1について

 イラクのファルージャ及びパレスチナ自治区のガザ地区における白リン弾による民間人の被害状況等については、公開情報や国連等の調査を通じて情報収集に努めているが、お尋ねの被害の実相については完全には明らかになっていないと認識している。

三の2について

 米国政府からは、二千四年十一月、ファルージャにおいて、主として煙幕、攻撃対象の識別、敵の追い出し等のために白リン弾を使用し、非戦闘員等に被害が及ばないよう、あらゆる手段を講じた旨説明を受けている。

三の3について

 御指摘の連盟や英字紙が、米軍による焼夷兵器としての白リン弾の使用等について報道等を行っていることは承知している。

三の4について

 御指摘の団体が、白リン弾は焼夷兵器として使用され得ること、焼夷兵器は戦争法規によって禁止されていないが、軍事目標に対する白リン弾の使用は過度に傷害を与え又は無差別に効果を及ぼすことがあると認められる通常兵器の使用の禁止又は制限に関する条約(昭和五十八年条約第十二号)の焼夷兵器の使用の禁止又は制限に関する議定書(議定書Ⅲ)によって規制されていること等の見解を示していることは承知している。

三の5について

 白リン弾が、民間人へ及ぼす被害等の事実関係について必ずしも明らかになっていない部分もあり、お尋ねについて一概にお答えすることは困難である。