第171回国会(常会)
答弁書第七九号 内閣参質一七一第七九号 平成二十一年三月十七日 内閣総理大臣 麻生 太郎
参議院議長 江田 五月 殿 参議院議員神本美恵子君提出障害者権利条約の批准に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。 参議院議員神本美恵子君提出障害者権利条約の批准に関する質問に対する答弁書 一について 障害者の権利に関する条約(仮称)(以下「本条約」という。)第1条の規定の中で、機能障害について、様々な障壁との相互作用により、社会への完全かつ効果的な参加を妨げ得るものとしている。一方、学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)第七十二条に規定する特別支援学校の目的は、障害のある幼児、児童及び生徒に対して、幼稚園、小学校、中学校又は高等学校に準ずる教育を施すとともに、障害による学習上又は生活上の困難を克服し自立を図るために必要な知識技能を授けることであり、このことを通じて幼児、児童及び生徒の社会への参加が促されることとなるものである。したがって、同条の規定が本条約に抵触することになるとは考えていない。 二について 御指摘の本条約第二十四条2(b)の規定は、同規定に定められているような初等教育及び中等教育を受けることのできる機会を確保するという趣旨であると考えている。 三について 本条約第二十四条2(c)の規定は、同条1の教育についての障害者の権利の実現に当たり、締約国が、個人に必要とされる合理的配慮が提供されることを確保することを定めており、障害者が教育を受けるあらゆる段階の教育の場について適用されるものと考えられている。 御指摘の認定就学制度は、障害の状態に照らして、市町村の設置する小学校又は中学校において適切な教育を受けることができるか否かについての判断を市町村教育委員会が行うものであり、本条約第二条にいう「合理的配慮」に相当する対応も判断の一要素として考慮されることになっている。したがって、合理的配慮の有無のみをもって同制度を直ちに廃止しなければならないとは考えていない。 また、本条約第二十四条2(c)に規定する「個人に必要とされる合理的配慮」の具体的内容は、本条約第二条における「合理的配慮」の定義を踏まえ、障害のある幼児、児童又は生徒の障害の状態等に応じ、各学校の設置者等が判断するものと考えている。 四及び五について お尋ねの事項に関する障害のある幼児、児童及び生徒の意見については、本条約第七条3の規定に基づき、他の幼児、児童及び生徒との平等を基礎として、その幼児、児童及び生徒の年齢並びに成熟度に従って相応に考慮されることとなる。 また、お尋ねの支援の提供については、本条約第七条3の規定に基づき個別に判断されるべきであると考えている。 六について 米国による本条約の解釈について政府として述べる立場になく、米国は本条約の締約国ではないことから、お答えすることは差し控えたい。 七について 文部科学省が実施した地方教育費調査によると、平成十八年度における幼児、児童及び生徒一人当たりの学校教育費は、盲学校、聾学校及び養護学校(現在の特別支援学校に相当)では八百五十八万六千八百二十二円、小学校では八十八万九千四百四円、中学校では百三万三千八百五十七円である。なお、小学校及び中学校については、特別支援学級以外の学級に在籍する障害のある児童及び生徒のみに係る一人当たりの学校教育費についての統計は存在しない。 特別支援学校に関する予算については、当該学校に在籍する比較的障害の重い幼児、児童及び生徒が十分な教育を受けられるよう、特に配慮をしているところである。 八について 特別支援教育就学奨励費の支給は、遠距離通学、寄宿舎入居など特別支援学校及び特別支援学級への就学に伴って保護者等に特別な経済的負担が生じることにかんがみ、その軽減を目的として行われているものであって、不平等な取扱いに当たるものとは考えていない。なお、小学校及び中学校の特別支援学級以外の学級に在籍する児童及び生徒であっても、在籍する学校以外の学校で学校教育法施行規則(昭和二十二年文部省令第十一号)第百四十条の規定に基づく障害に応じた特別な指導を受ける場合に必要となる交通費については、特別支援教育就学奨励費の対象としているところである。 |