質問主意書

第171回国会(常会)

答弁書


答弁書第三六号

内閣参質一七一第三六号
  平成二十一年二月十七日
内閣総理大臣 麻生 太郎   


       参議院議長 江田 五月 殿

参議院議員藤田幸久君提出戦時中の連合国捕虜使役問題に関する再質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員藤田幸久君提出戦時中の連合国捕虜使役問題に関する再質問に対する答弁書

一の1から3までについて

 外交史料館が保管する終戦前の外交記録の中で、御指摘の「文書」を含むものを特定するためには膨大な作業を要するため、お尋ねについて網羅的にお答えすることは困難である。
 現在までの調査では、これらの外交記録の中に「麻生鉱業」が明記された文書及び御指摘の「一九四五年八月に河辺虎四郎陸軍中将がマニラで連合軍司令部に提出した文書」は確認されていない。

一の4について

 御指摘の「在敵国居留民関係事務室」は、外交史料館に保存されている資料によれば、「敵國ニ於テ俘虜、抑留者又ハ集團生活者トナリ居ル邦人ノ状況ノ調査及改善ニ關スル事務」、「敵國トノ居留民交換事務」、「帝國ノ權内ニ在ル俘虜、抑留者又ハ集團生活者トナリ居ル敵國人關係事務」等の関係事務を処理するために昭和十七年十二月一日に設置されたものとされている。同室に、御指摘の関係資料等が保管されていたかについては、現在までの調査では確認されていない。

一の5について

 御指摘の「終戦連絡事務局」は、外交史料館に保存されている資料によれば、連合国軍隊の本邦進駐に伴い、連合国側との連絡にあたるために、昭和二十年八月二十六日に外務省の外局として設置され、昭和二十三年二月一日に廃止されたものとされている。現在までの調査では、同事務局が作成した捕虜に関する文書資料等については、その一部が外交史料館に保管されていることが確認されている。

二の1及び2について

 お尋ねの担当部局については、事項の内容及び相手国等によって様々であるため政府として一概にお答えすることは困難である。

二の3について

 日本政府に対するいわゆる戦後補償関係訴訟については、個別の訴訟に応じて、関係する省庁等が一致協力し、政府全体として適切に対応することとしている。お尋ねの「企業に対する提訴」については、政府として個別の訴訟について直接関与していない。

三の1について

 元捕虜等からの要望等の背景は、個別具体的な事情があると考えられるので、お尋ねについて一概にお答えすることは困難である。いずれにせよ、政府としては、元捕虜等からの要望等に対し、適切に対応してきている。

三の2から4までについて

 御指摘の「痛切な反省と心からのお詫び」については、我が国が、かつて植民地支配と侵略によって、元捕虜を含め、旧連合国諸国を含む多くの国々の人々に対して多大の損害と苦痛を与えたことにつき、率直にお詫びの気持ちを表明したものである。
 一方、我が国としては、先の大戦に係る賠償並びに財産及び請求権の問題については、日本国との平和条約(昭和二十七年条約第五号。以下「サンフランシスコ平和条約」という。)及びその他関連する条約等に従って誠実に対応してきたところであり、これらの条約等の当事国との間では、個人の請求権の問題も含め、法的に解決済みである。
 我が国としては、関係諸国との信頼関係を一層強化するため、引き続き誠実に対応していく所存である。

三の5について

 当時、捕虜の扱いについては、一般に、国際慣習法により規律されており、捕虜の労働自体は、当時の国際法においても認められていた。

三の6について

 御指摘の「朝鮮月報」における記載については承知しているが、当時の具体的状況が明らかでなく、お尋ねについて確定的なことを述べることは困難である。

四の1について

 御指摘の報道については、麻生外務大臣(当時)に報告されたかどうかは確認できなかった。

四の2の(一)及び(四)について

 麻生外務大臣(当時)が受け取ったことは確認されていない。

四の2の(二)及び(三)について

 マリリン・カルアナ氏、ジョン・ホール氏及びジョー・クームス氏からの手紙については内閣総理大臣官邸において接受したが、これらに対する返書は送付していない。アーサー・ギガー氏からの手紙については確認されていない。

五について

 外交史料館及び在外公館への確認は行わなかった。

六について

 旧麻生鉱業における朝鮮人労働者の労働の実態を把握できる資料は、厚生労働省及び外務省にて確認した範囲では見当たらなかった。

七について

 御指摘の反論の掲載及び削除については、これを在ニューヨーク日本国総領事館に対して指示する公電案を外務省外務報道官組織国際報道官室が起案し、外務大臣に報告し、その了承を得た上で同公電を発電した。

八の1について

 政府が保管している資料の中に、一部の捕虜収容所における、捕虜の従事していた労務の種類、従事者数、労賃日額等の記述は見られるが、現時点で個々の捕虜に対する労賃の支払について記述したものは確認されていないことから、労賃の支払の実態について、お答えすることは困難である。

八の2について

 先の答弁書(平成二十一年二月六日内閣参質一七一第二二号)は、我が国の支払は、サンフランシスコ平和条約第十六条に基づき、日本国の捕虜であった間に不当な苦難を被ったことに対する償いをする願望の表現として行ったものであって、当該支払が労賃の支払ではなかったことを述べたものであり、労賃の支払の有無について述べたものではない。

八の3について

 先の大戦に係る賠償並びに財産及び請求権の問題は、政府としては、サンフランシスコ平和条約及びその他の関連する条約等に従って誠実に対応してきたところであり、これら条約等の当事国との間においては、個人の請求権の問題も含め、法的に解決済みである。

九について

 お尋ねについては、その対応について、引き続き慎重に検討しているところである。

十について

 先の答弁書(平成二十年十月二十一日内閣参質一七○第五一号)一から四までについてで述べたとおり、政府としては、徴用された朝鮮半島出身者等の遺骨の調査及び返還のための作業を鋭意進めており、民間企業等の幅広い協力を得つつ実態調査を行っているが、これらの民間企業等との関係もあり、個別の調査対象を明らかにすることは差し控えてきているところである。
 お尋ねの「朝鮮人労務者斡旋申請書」及び旧麻生鉱業に対する支払については、厚生労働省及び外務省で確認した範囲では確認することができなかった。