質問主意書

第171回国会(常会)

答弁書


答弁書第二二号

内閣参質一七一第二二号
  平成二十一年二月六日
内閣総理大臣 麻生 太郎   


       参議院議長 江田 五月 殿

参議院議員藤田幸久君提出戦時中の連合国捕虜使役問題に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員藤田幸久君提出戦時中の連合国捕虜使役問題に関する質問に対する答弁書

一について

 昭和十六年十二月に旧陸軍省に設置された俘虜情報局は、捕虜の留置、移動等の状況の調査、捕虜の銘々票の作成、補修等を行っていた。戦後、当該業務を引き続き実施していた同局が、第一復員省及び総理府を経て、昭和三十二年に廃止されたことに伴い、同局所有の戦時捕虜に関する資料については当時の厚生省に引き継がれ、現在は厚生労働省が保管している。一方、外務省が保管してきた外交記録のうち、終戦前のものは昭和四十六年四月に外務省外交史料館が開設した際に同館に移され、以後、同館が保管し、一般の閲覧に供しているが、こうした外交記録の中には、お尋ねの「戦時捕虜に関する資料及び関係の文書」に関するものも含まれている。

二について

 御指摘の「先の大戦時の戦時捕虜に関する諸問題および政策立案」は多岐にわたるため、事項に応じて政府において担当する部局が対応している。

三の1について

 在豪州日本国大使館においては、これまで、豪州人元捕虜等からの要望等に対し、返書を送付するなど、適切に対応してきている。

三の2及び3について

 捕虜の労働自体は、当時の国際法においても認められていた。一方、我が国は、かつて植民地支配と侵略によって、元捕虜を含め、旧連合国諸国を含む多くの国々の人々に対して多大の損害と苦痛を与えたとの歴史の事実を謙虚に受け止め、痛切な反省と心からのお詫びの気持ちを、これまで様々な機会に表明してきている。

四の1について

 在豪州日本国大使館及び在豪州日本国総領事館は、関連の報道等について、外務本省に対ししかるべく報告してきている。

四の2について

 政府はこれまで、豪州人元捕虜等からの手紙等を受け取った場合、面会に応じたり、返書を送付するなど、丁寧に対応してきている。

五の1について

 平成十八年七月四日に行われた外国プレス記者会見の記録を確認したが、御指摘のようなコメントは確認できなかった。

五の2及び4について

 外務省が保有している資料で記事の内容に関係するものがないか等について、外務省国際報道官室より、外務省のその他の関係部局に確認を行った。

五の3について

 平成十八年十一月十五日付のインターナショナル・ヘラルド・トリビューン紙記事の報道を受けて、麻生太郎事務所より、旧麻生鉱業に関する情報を有する可能性があると考えられた株式会社麻生に対し、照会を行ったところ、これに対し、同社より麻生太郎事務所に対し、連合軍捕虜の労働に関する資料は確認できなかったとの回答があったと承知している。

六の1について

 旧麻生鉱業における当時の朝鮮人労働者の労働の実態について把握していないため、お答えすることは困難である。

六の2について

 御指摘の書物は、麻生内閣総理大臣が内閣総理大臣に就任する前に一個人として発行したものと承知しており、お尋ねについて政府としてお答えする立場にない。

七の1及び3について

 反論の掲載については、平成十九年一月五日(ニューヨーク時間)に行われた。反論の削除は、平成二十年十二月十七日(ニューヨーク時間)に行われた。

七の2及び4について

 反論の掲載・削除に係る事務は外務報道官が主管している。

七の5について

 麻生内閣総理大臣は、削除されたことについて報告を受けていた。

七の6について

 御指摘の記事中の麻生鉱業における捕虜の労働に関する記述以外の事実誤認等については、当時在ニューヨーク総領事館のホームページに掲載した反論の中で明らかにしたとおりである。

八の1から4までについて

 政府は、連合国の元捕虜及び民間抑留者に対する支払については、日本国との平和条約(昭和二十七年条約第五号。以下「サンフランシスコ平和条約」という。)及びその他関連する条約等に従って誠実に対応してきたところである。連合国の元捕虜については、サンフランシスコ平和条約第十六条に基づき、日本国の捕虜であった間に不当な苦難を被った連合国軍隊の構成員に償いをする願望の表現として、昭和三十年五月二十五日、赤十字国際委員会(以下「ICRC」という。)に対し米貨による支払を含め合計英貨四百五十万ポンド相当の支払を行った。ICRCは、これに利子等を加え、二次にわたりオーストラリア、ベルギー等十四か国に分配をしたと承知している。ICRCの報告書には国別の分配額等が示されているが、各国における分配については各国の裁量に委ねられており、どのように配分されたかについては詳細に報告されていない。
 なお、米国は同条に基づくICRCからの分配を放棄したが、その判断は米国が行ったものであり、お尋ねについて、政府としてお答えする立場にない。

八の5について

 八の1から4までについてで述べたとおり、我が国の支払は、サンフランシスコ平和条約第十六条に基づき、連合国の元捕虜が日本国の捕虜であった間に不当な苦難を被ったことに対する償いをする願望の表現として行ったものであって、労賃の支払ではない。

九の1及び2について

 政府としては、英国及びオランダから元戦争捕虜及び民間人抑留者等を訪日招へいし、対日理解及び相互理解を促進している。平成二十一年度予算案の内訳は、日英平和交流事業九百十二万六千円、日蘭平和交流事業二千三百二十五万四千円である。