質問主意書

第171回国会(常会)

質問主意書


質問第二三六号

核弾頭型トマホーク巡航ミサイルの退役に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十一年七月十三日

近藤 正道   


       参議院議長 江田 五月 殿



   核弾頭型トマホーク巡航ミサイルの退役に関する質問主意書

 日本政府が主導して作成された「核不拡散・核軍縮に関する東京フォーラム」報告書(一九九九年七月)は、「戦術核に伴うテロや核拡散の危険は高い」と指摘し、「戦術核の削減・廃棄は戦略核と並行して進められることが可能だし、それを確保すべく緊急の措置がとられるべきである」(第四部一八)と述べている。また、同報告書は、「米ロにより九一年一〇月に発表され、九二年一月に確認された一方的かつ相互的な戦術核の削減政策は、透明性を保ちつつ、逆戻りしないよう実施されなければならない」(同一七)とも述べている。
 一九九一年にジョージ・H・W・ブッシュ米国大統領が発表した一方的戦術核削減措置の一つに、「水上艦艇及び潜水艦の核弾頭型トマホーク巡航ミサイル」の撤去があった。この結果、艦船用の核弾頭型トマホーク巡航ミサイルは、一九九二年以来、陸上に保管されている。水上艦船用の配備は完全に放棄することが決定されたが、攻撃原子力潜水艦への再配備のオプションは維持されてきた。
 約三〇〇発あると見られているこの戦術核兵器について、米国の「米国戦略態勢議会委員会」最終報告書(二〇〇九年五月)は、「アジアでは、拡大抑止は幾つかのロサンジェルス級攻撃潜水艦の巡航核ミサイルの配備によるところが大きい。トマホーク対地攻撃ミサイル/核(TLAM/N)である」とアジアにおける重要性を強調した後、「この能力は、これを維持する措置が講じられなければ二〇一三年に退役となる」と説明している。その上で、「我々の作業の中で、アジアの幾つかの米国の同盟国の一部は巡航核ミサイルの退役について非常に憂慮するだろうということが明らかになった」として、「米国は、非戦略核兵器の発射(delivery)のための能力を維持すべきであり、ヨーロッパ及びアジアの同盟国と密接な協議をしながらそれを進めるべきである」と勧告している。さらに、「核問題について日本ともっとずっと広範な対話を構築すべき時期である――その制限は、日本政府の要望のみによるべきである」と述べており、この問題についての日本政府の見解は、「核態勢の見直し」にとって重要な意味を持つものである。
 同最終報告書は、本年中に米国政府が行う「核態勢の見直し」の参考にするべく提出されたものであり、協議した外国政府関係者のリストには四人の日本大使館員の名前も挙げられている。
 以上の点を踏まえるとするならば、日本政府は、東京フォーラムの報告書が主張している「戦術核の削減・廃棄」の重要性の観点から、予定されている核弾頭型トマホーク巡航ミサイルの退役を歓迎するのか。あるいは、この退役はアジアにおける米国の核抑止力の弱体化をもたらすとして、同ミサイルを維持するよう要請する立場であるのか。

  右質問する。