質問主意書

第171回国会(常会)

質問主意書


質問第二二八号

朝鮮半島出身の旧民間徴用者の遺骨問題に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十一年七月七日

藤谷 光信   


       参議院議長 江田 五月 殿



   朝鮮半島出身の旧民間徴用者の遺骨問題に関する質問主意書

 平成十六年十二月開催の日韓首脳会談において、韓国側から、朝鮮半島出身の旧民間徴用者等の遺骨返還についての協力の要請がなされ、それに基づき朝鮮半島出身の旧民間徴用者の遺骨返還の取り組みについて、政府より全国の宗教団体・地方自治体・民間企業へ情報提供の要請が行われた。
 仏教界に関しては、平成十七年六月、文化庁が内閣官房、外務省及び厚生労働省の「朝鮮半島出身の旧民間徴用者等の遺骨についての情報提供のお願いについて(依頼)」を国内伝統仏教宗派と都道府県仏教会が加盟する財団法人全日本仏教会(以下「全仏」という。)へ送付し、平行して各省庁の担当者が直接依頼に訪れ、具体的な進め方や協力態勢についての協議を行った。
 同年七月二十二日、それを受けて全仏が提唱する人権・平和への取り組みの一環として、加盟団体へ「朝鮮半島出身の旧民間徴用者等の遺骨についての情報提供のお願いについて(依頼)」を回送、加盟団体の宗報などの機関誌、並びにホームページ等へ掲載するなどの広報活動や各寺院への協力要請を行い、あわせて各省庁の意向を伝えた。
 その後、全仏の加盟団体は広報・調査経費等を各団体が負担するとともに、加盟団体とその傘下の各寺院の協力も得て調査に協力し、平成十八年十一月二十日に第一回の遺骨所在情報の取りまとめをして以来、本年四月八日まで九回遺骨の所在情報を取りまとめ、厚生労働省職業安定局総務課人道調査室へ提供し(現在も新たに判明したものについて継続的に情報提供を行っている。)、その後、遺骨の所在情報に基づき同調査室による各地の寺院へ実態調査及び実地調査が行われている。
 遺骨の実地調査の目的は、遺族が判明した遺骨や、遺族が不明な遺骨の返還を円滑に進める為とされるが、かなり詳しい情報提供も有ることから、既に遺族が判明しているケースも有るはずであり、また、何度か日韓の政府間協議も行われているにもかかわらず、現在に至るまで遺骨は一体も返還されていない。
 また、全仏へはある程度の経過報告がなされている様だが、情報内容の開示に対しての縛りもあり、全仏としては、調査に協力を得た依頼先や全国の寺院等へ、十分に進捗を説明出来ない状況のまま現在に至っていると聞く。
 また、人道的立場から調査に協力をした協力団体と全国各地の寺院は、日韓両政府および関係団体とも連携のうえで、最大限の敬意をもって現在も遺骨返還に積極的に協力しているにもかかわらず、国としてこれらの遺骨返還に協力している各団体に対し、返還への具体的な方向性やタイムスケジュールなどを十分に示しているとも言い難い。
 よって、朝鮮半島出身の旧民間徴用者の遺骨返還について、以下質問する。

一 現在まで宗教団体・地方自治体・民間企業などから情報提供を受けた遺骨の数と、情報提供により身元や遺族が判明した遺骨等の数などをなるべく詳しく示されたい。
 また、その返還についての方向性・具体的手順・タイムスケジュールなどを示されたい。

二 この案件に関して、文化庁、内閣官房、外務省、厚生労働省の各省庁の役割分担を示されたい。

三 何度か関係省庁における連絡会議が開催されたと思われるが、その内容を明らかにされたい。

四 日韓両国政府間において返還に向けた政府間協議が行われているが、いまだ遺骨が一体も返還に至っていないことについてその理由と今後の見通しを示されたい。
 特に、遺族が判明しているものが有るのか無いのか、もし有るのならばそれらに対して遺族から返還要求が有るのか無いのかも示されたい。

五 返還の方針として、まず身元が判明したものを遺族に返還し、不明なものはその後に対応する予定であると聞くが、現段階で既に情報が少ないため遺族への返還が無理と判断せざるを得ないものも多く有ると聞く。
 遺族が見つからない遺骨はどう対応するのか、また、その対応は日韓の協議によって同意されているのかを明らかにされたい。
 また、遺族が見つからない遺骨に対応する時期はいつを目処に考えているのか示されたい。

六 平成十六年の日韓首脳会談から五年近くが経過しようとしているが、今日まで協力を得た各関係団体・寺院などに対して国として感謝の気持ちを正式に表した事はなく、また正式に中間報告がなされた事もない。
 この際、今後も各団体の協力を得る為にも、一つの区切りとして、国内で協力を得た各関係方面に対して文章にて感謝の気持ちを込め「中間報告」を行うべきと考えるが、政府の見解を示されたい。

  右質問する。