質問主意書

第171回国会(常会)

質問主意書


質問第二二二号

わが国におけるスーパーコンピュータ開発利用の総合的な施策の必要性に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十一年六月二十九日

藤末 健三   


       参議院議長 江田 五月 殿



   わが国におけるスーパーコンピュータ開発利用の総合的な施策の必要性に関する質問主意書

 スーパーコンピュータは、膨大な計算処理を行えるコンピュータであり、気象予測や天文学シミュレーションといった科学面だけでなく、自動車や航空機など工業製品の構造を分析する有限要素分析や境界要素分析、そして金融工学など大規模数値解析を必要とするシミュレーションに利用されるものである。このようにスーパーコンピュータは産業競争力の基盤となるものと言える。しかしながら、このような多様化する学術界や産業界のシミュレーションのニーズに対応した政策を行っているかを具体的に理解することができない。これを踏まえて以下質問する。

一 世界のスーパーコンピュータの計算速度の性能を集計した「TOP五〇〇プロジェクト」の最新ランキングによると、スーパーコンピュータ計算速度上位五百台の国別の保有台数では、日本が十五台で六位となっており、二十一台を持つ中国に抜かれている。本プロジェクトについては評価手法などに批判はあるものの、ある程度の指標にはなると考えられる。現在、産業面でのスーパーコンピュータ利用分野は広がっているが、技術立国の基盤である高速計算能力・シミュレーション能力確保への計画的な投資を進めてこなかったことが、このような結果を生んでいるのではないか。また、よりニーズを把握したプロジェクトの立ち上げや公共財としての高速計算環境の利用環境の整備など最新技術の研究開発のみならず、その実用化及び利用までを視野に入れた総合的な政策計画が必要だと考えるが、政府の見解を示されたい。

二 最先端のスーパーコンピュータ技術を見てみると、様々な評価基準があることは認識しているが、例えば前述の「TOP五〇〇プロジェクト」によると、計算速度の一位は米ロスアラモス国立研究所の米IBM製計算機であり、ペタFLOPS(フロップス)という計算能力を実現している。また、一位から九位までを米国製が占め、十位は中国製となっており、日本製の最速スーパーコンピュータは海洋研究開発機構が二〇〇九年に稼働させた地球シミュレータで二十二位となっている。
 このような状況の中で、文部科学省が推進している世界最高性能の達成を目指す「最先端・高性能汎用スーパーコンピュータの開発利用」プロジェクト、いわゆる「次世代スーパーコンピュータ・プロジェクト」に参加する一部メーカーが「製造段階には参加できない」と申し入れている。新聞などによると世界的な経済状況の悪化が原因とあるが、経済状況の悪化は特定の企業だけの問題でなく、世界のスーパーコンピュータメーカーすべてに影響があることから、それが理由とは理解できない。そもそもの次世代スーパーコンピュータ・プロジェクトの計画自体に問題(例えば、最終利用ニーズを明確に把握していなかったなど)がなかったか、政府の認識を明確に示されたい。
 また、同プロジェクトは、一〇ペタフロップス級の演算性能の実現を二〇一〇年度に目指すとしているが、他の参加メーカーが世界最高速のCPUの開発を終えている段階で、政府として同プロジェクトの計画の実現の見込みを示されたい。

  右質問する。