質問主意書

第171回国会(常会)

質問主意書


質問第二〇八号

チッソに対する抜本的金融支援措置に関する再質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十一年六月十八日

松野 信夫   


       参議院議長 江田 五月 殿



   チッソに対する抜本的金融支援措置に関する再質問主意書

 水俣病発生の原因者であるチッソ株式会社(以下、「チッソ」という。)は、汚染者負担の原則による水俣病患者への補償等のため、国、熊本県、民間金融機関等から多くの金融支援を受けて今日に至っている。この間の国の措置等について質問主意書(第一七一回国会質問第一八一号)を提出したところ、今月五日に答弁書(内閣参質一七一第一八一号)を受領した。しかし、この答弁書はまだ不十分であり、いくつもの疑問点が残っているので、再度、質問する。

一 政府は、「『平成十二年度以降におけるチッソ株式会社に対する支援措置について』(平成十二年二月八日閣議了解)に基づき交付している国庫補助金は、熊本県による『患者県債』、『設備県債』及び『ヘドロ立替債』の償還に支障を来さぬよう、同県に対して交付しているものであり、チッソ株式会社に対して交付しているものではない。」と答弁している。確かに形式的には国庫補助金は直接チッソに交付されているものではないが、実際には同県を通じてそのままチッソに貸し付けられている。
 政府としては、一般会計から公害発生企業に対して直接補助金を交付することは原則として許されないが、地方公共団体を経れば同様の結果になっても特段の問題はないという理解であるのか。

二 一九九九(平成十一)年三月末現在のチッソの公的債務は元金で約一千四百四十二億円、償還予定額で約二千三百八億円となっていると言われているが、かかる公的債務はチッソが全額、返還すべきものであり、免除することは許されないという理解でよいか。それとも一部は返還を予定していないということであるか。

三 仮に将来、チッソにおいて公的債務の返還が困難となったときには、二〇〇〇(平成十二)年二月八日閣議了解の「平成十二年度以降におけるチッソ株式会社に対する支援措置について」の場合と同様に、国庫補助金分については、先ずチッソの熊本県ないし財団法人水俣・芦北地域振興財団への返済義務を免除し、その同額について同県から国への当該補助金の返還を不要とすることは可能か。
 かかる返還・返済免除は政府の判断で自由になし得るものであるか、それとも何らかの要件が必要か。必要であるとすればどのような内容の要件及び手続きが求められるか。

四 政府は、「『水俣病対策について』(平成七年十二月十五日閣議了解)に基づき熊本県に対して交付した国庫補助金については、『一時金』の支払後にチッソ株式会社の財務状況が悪化したことから、同社が『補償金』を支払うために必要な措置として、民間金融機関の債権放棄等を前提に、同県に相当の収益が生じたときには返還することとされていた当該補助金の返還を不要としたものである。国と同県との間には、当該補助金の返還に係る具体的な債権債務関係が存在していたわけではないことから、当該補助金の返還を不要としたことは、財政法(昭和二十二年法律第三十四号)第八条の規定に違反するものではないと考えている。」と答弁している。
 右答弁にある「相当な収益」とは具体的にどのような内容を示すものか。

五 チッソに対する抜本的金融支援措置として熊本県を経由して国庫補助金を支出するということは、本来、その返還は予定されていないということか、それとも本来、返還すべきものという理解であるか。もしくは一定の条件成就のときには返還すべきであるという理解であれば、具体的にどのような条件を満たしたときに返還することになるのか明らかにされたい。また、一定の要件のもとに補助金の返還が予定されているとすれば、それは具体的な債権債務関係が存在することではないか。

  右質問する。