質問主意書

第171回国会(常会)

質問主意書


質問第二〇五号

酪農経営の健全化等に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十一年六月十一日

松野 信夫   


       参議院議長 江田 五月 殿



   酪農経営の健全化等に関する質問主意書

 熊本県酪農業協同組合連合会は、平成十三年度から乳業工場近代化資金の調達として、酪農家から仕入れる原乳一キログラム当たり一円を徴収することとし、平成二十年三月までの間、酪農家に支払うべき販売代金の中から徴収金額を差し引いて総額約十七億円を徴収している。
 一方、最近の乳価低迷と飼料高騰を受けて酪農家は大変厳しい経営を強いられており、加えて、農協等から会費及び手数料等の名目で様々な費用負担が課せられている。このため、赤字経営を余儀なくされている酪農家は多く、こうした苦境に陥っている酪農家をどのように支援するかは喫緊の課題である。
 よって、酪農問題に関する政府の事実認識及び解釈等を確認する必要があるので、以下のとおり質問をする。

一 昨年十二月二十二日に規制改革会議が取りまとめた「規制改革推進のための第三次答申-規制の集中改革プログラム-」が公表されたが、その中の「県酪連経営の透明化・健全化」で、「酪農経営者より、指定団体や県酪連が、単位農協を通じ、『工場近代化預り金』・『乳価対策預り金』などを、個々の生産者の了承もなく、乳代から控除するという方法で一律的に強制徴収しているとの指摘がある。」という点を指摘して問題視している。政府もこの指摘のとおり、個々の生産者の承諾もないのに徴収することは違法ないしは不当であるという認識であるか。

二 前項で指摘しているとおりの問題があるとすれば、政府は、生産者の承諾は曖昧な形ではなく明確になされなければならないという認識であるか。個々の生産者ごとに個別の書面による承諾が望ましいと考えるか。

三 政府は、第一項のような指摘を受けて、その改善ないしは適正化に向けてどのような取組みをしているか。

四 政府は、酪農経営の健全化に向けて単位農協を監督するのは都道府県であるとの姿勢であるが、単位農協の取組みが不十分であれば、県酪連等の上部団体を通じて単位農協と酪農家との取引の適正化を図るべきだと考えるがいかがか。

五 酪農家がその所属する農協との間で生乳販売受託契約を締結して販売を委託する場合には、当該農協との間で契約内容を明示した契約書を毎年取り交わして行わなければならないのではないか。政府は、こうした生乳販売受託契約に関する契約書を毎年取り交わすよう酪農関係者に対して指導をしているか。指導しているとすれば、いつどのような指導をしているか。また、生乳販売受託契約に関する契約書を毎年取り交わすことを怠っていた場合にはどのような問題が生じるという認識であるか。

六 加工原料乳生産者補給金等暫定措置法による指定生乳生産者団体については、その定款において、「その生乳受託販売の事業に係る施設についてのその構成員以外の者の利用がその構成員に比して実質的に制限されていないと認められること」という趣旨の規定が必要とされている(同法第七条第五項)。そして、現在、生乳生産者団体は全国で十団体が指定されているが、こうした指定団体は、右規定どおりの規定が定款で定められている。政府は、いわゆる員外取引について、実際上も一定数の利用がなされていることが望ましいという認識であるか。

七 全国にある指定生乳生産者団体において、実際に構成員以外の者の利用が認められている事例があるか。あるとすれば、その具体例の概要を三件指摘されたい。

八 酪農家が一定数集まって新しく農協を設立して、当該新設農協を通じて指定生乳生産者団体に対して構成員以外の者の利用の申し込みを行った場合には、当該指定生乳生産者団体は特段の理由がない限り当該申し込みは拒否できないと考えるが、政府の認識はどうか。新設農協が設置された県には上部団体として県酪連が存在するので、その県酪連以外には取引を認めないという理由での指定生乳生産者団体の取引拒否は許されないと考えるがいかがか。

九 指定生乳生産者団体の定款上は構成員以外の者の利用が可能なようになっていても、構成員以外の者からの利用申し込みをすべて拒否していて、事実上、構成員でなければ利用できないと判断される場合には実質的な制限と解することができると考えるがいかがか。

  右質問する。