質問主意書

第171回国会(常会)

質問主意書


質問第一九四号

裁判員制度における性犯罪被害者に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十一年六月二日

加賀谷 健   


       参議院議長 江田 五月 殿



   裁判員制度における性犯罪被害者に関する質問主意書

 裁判員制度が本年五月二十一日からはじまった。同制度は司法改革の柱と承知している。また、最高裁判所はその裁判員制度のホームページの中で「国民のみなさんが刑事裁判に参加することにより、裁判が身近で分かりやすいものとなり、司法に対する国民のみなさんの信頼の向上につながることが期待されています。」としている。こうした中で、五月二十日付け毎日新聞の報道にあるように、多くの性犯罪被害者やその支援者から、守秘義務のない裁判員候補者に被害者の情報が伝えられることにより、二次被害が起きる危険があるとの指摘がなされている。性犯罪被害者は、社会的な偏見のため、第三者に事件を知られることで二次被害を受けることが多く、中には社会生活が困難になったり、長期にわたり深刻な精神障害に苦しむ者もある。こうした性犯罪被害者の懸念にこたえ、裁判員制度においては二次被害を防止する確実な対策がとられるべきとの観点から、以下のとおり質問するので、それぞれ政府の見解を示されたい。

一 多くの性犯罪被害者が経験している二次被害の深刻さについて、政府はどのように認識しているか。裁判員選任手続きにおいて性犯罪被害者の情報が開示されることにより、二次被害が生じる危険性について、政府の認識はいかがか。確実な二次被害防止策がとられなければ、被害者が被害届をためらい、ひいては性犯罪の処罰・防止に支障が及ぶことが危惧されているが、政府の見解はいかがか。

二 五月六日付け読売新聞(西部版)の報道によれば、裁判員選任手続きの際、候補者に事件との関係の有無を確認するため、数十人から約百人の裁判員候補者に対し、被害者の氏名などが伝えられる可能性があるが、裁判員に課せられる守秘義務も候補者には及ばず、情報を他人に教えても罰せられることはないという。以上の報道は事実か。事実と異なるとすれば、実際には、どのような手続きにより、どの程度の情報が裁判員候補者に開示されることになるのか。

三 『判例タイムズ』一二八七号、四十九頁によれば、裁判員候補者に対し、被害者特定事項について「口外しないよう依頼する」「筆記しないよう求める」ことが考えられるとされている。これでは確実に情報漏えいを防ぐ手段とはいえないのではないかと思われるが、いかがか。この他に情報漏えいを防ぐ確実な対策は検討されているのか。

四 個々の性犯罪事件について、被害者情報の取り扱いが各地裁の判断にゆだねられるとすれば、人権状況が地域によって異なる状況が生じることになるが、これは問題ではないか。最高裁はガイドラインを作成し各地裁に方針を示すべきではないかと考えられるが、いかがか。

五 五月二十三日付け読売新聞朝刊(西部版)によると、裁判員制度の対象となる強姦致傷罪で、鹿児島地検の次席検事が「性犯罪被害者の個人情報漏えいを防ぐため、地裁に配慮を求めたい」と候補者に被害者の氏名などを伝えないよう地裁側に要請する方針を明らかにした、とされている。この報道に間違いはないか。間違いがあるとすれば、事実と異なる部分を示されたい。また間違いがなければ、地裁側からどのような回答があったのか、また鹿児島以外の各地検等が今後同種の事案に対し、同様の要望を裁判所に行う考えがあるか、示されたい。

六 被害者保護のための刑事訴訟法一部改正では、被害者への負担を減らすことを目的として、被害者からの申し出があり、裁判所が相当と認めるときは、氏名や住所などを法廷で伏せることができるよう定めている。裁判員制度において、性犯罪被害者に対する二次被害防止策がとられなければ、同改正法との整合性を欠くことになるのではないか。

七 裁判員制度における性犯罪被害者への二次被害防止について、今後、被害者や支援者の意見を聞き対策を検討するつもりはないか。

  右質問する。