第171回国会(常会)
質問第一七六号 死刑制度に対する自由権規約委員会の最終見解に関する質問主意書 右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。 平成二十一年五月二十五日 福島 みずほ
参議院議長 江田 五月 殿 死刑制度に対する自由権規約委員会の最終見解に関する質問主意書 二〇〇八年十月三十日に自由権規約委員会(以下「委員会」という。)から示された日本政府報告書審査最終見解(以下「最終見解」という。)について以下質問する。 一 最終見解パラグラフ2で「定期報告の締切が二〇〇二年十月であったにもかかわらず、報告書の提出が二〇〇六年十二月であったことに留意する。」とあるが、報告書提出が締切の期限より四年以上遅れた理由は何か。また、次回の政府報告書の提出期限を遵守するために、どのような対応をとる用意があるか。 二 最終見解パラグラフ6で「委員会は、締約国の第四回定期審査後の見解で発出された勧告の多くが履行されていないことを懸念する。締約国は、委員会によって採択された今回の勧告及び前回の最終見解を実行するべきである。」と勧告されているが、政府はこの指摘をどう考えているか。委員会の勧告は、無視すべきものと考えているのか。 三 最終見解パラグラフ16で「世論調査の結果如何にかかわらず、締約国は、死刑廃止を前向きに考慮し、公衆に対して、必要があれば、廃止が望ましいことを伝えるべきである。」と勧告されているが、国民に死刑廃止が望ましいことを伝えるためにどのような方策を考えているか。 四 最終見解は、二〇〇八年十月三十日に採択された。当初は二十八日前後の採択が予想されていた。その十月二十八日に、日本政府は、二名の死刑執行を行ったがこれは意図的に最終見解の発表日に合わせようとしたものであるか。前回の最終見解が採択された一九九八年十一月十九日にも同じように日本政府は三名の死刑執行を行っている。偶然が二回続くとは通常考えられないが、意図的な執行だったのかどうか、執行の経緯を明らかにされたい。 五 最終見解パラグラフ18の外務省仮訳は、「締約国は、代替収容施設を廃止するか、規約第十四条に規定される全ての保障の完全な遵守を確保するべきである。」となっているが、原文は「The State party should abolish the substitute detention system or ensure that it is fully compliant with all guarantees contained in article 14 of the Covenant.」であり、この場合の「or」は、「又は」ではなく「即ち」「換言すれば」と訳すべきと考えるがどうか。「又は」と訳したため意味が通じない文章となっているが「又は」と訳した理由は何か。 六 最終見解パラグラフ34で「委員会手続規則第七十一条五項に従い、締約国は上記17、18、19及び21パラグラフに含まれた委員会の勧告に対するフォローアップの情報を一年以内に提出しなければならない。」となっているが、一年以内にフォローアップの情報の提出を行うか。 七 今国会で審議されている「海賊行為の処罰及び海賊行為への対処に関する法律案」(以下「海賊対処法案」という。)は、海賊行為が、日本国外にある日本船舶内で犯された場合については「国内犯」とし、日本国民に対して犯された場合には「国民以外の者の国外犯」とし、いずれも日本刑法の適用を認めており、また、人質強要罪に関しては「条約による国外犯」としてあらゆる場合での日本刑法の適用を認めている。 周知のとおり、日本政府に対する自由権規約委員会の勧告により、死刑対象犯罪の縮減が求められてきた(第三回一九九三年、第四回一九九八年)。また、二〇〇八年第五回対日審査でも、死刑対象犯罪が減少していないことへの懸念が表明され、死刑を重大犯罪に限定することが勧告されている。 ところが、日本政府は国連のこうした一連の勧告に対処することなく、今回の海賊対処法案においては、海賊行為により人を死亡させた場合は死刑又は無期懲役が科せられることとしており、死刑対象犯罪の新設は明らかに自由権規約委員会の勧告に反するものと考えるがいかがか。また、自由権規約を締約している日本として、なぜこのような法案を立案・提出したのか、その方針ならびに基本的な考え方の説明を願う。 右質問する。 |