質問主意書

第171回国会(常会)

質問主意書


質問第一七四号

介護保険制度に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十一年五月二十二日

水戸 将史   


       参議院議長 江田 五月 殿



   介護保険制度に関する質問主意書

 去る二〇〇六年度より介護保険制度の改定が実施され、介護認定基準の見直しが却って介護現場での混乱を招いていると聞いている。また、今年度より介護報酬の改定がなされているものの、当初予測されていた報酬アップにつながらず、やむを得ず補正予算で今後三年間にわたって、その不足分につき補填することになるという。こうした状況に鑑み、以下質問する。

一 介護認定基準の見直しにより、多くの利用者が改正前と身体の状態が変わっていないのにもかかわらず、自費で負担しなければ以前と同じサービスを受けることが出来なくなったと指摘している。また介護度によるサービス利用制限の幅も広がったため、サービスの使い勝手が悪くなり、介護現場では制度改正への疑問や、不安、不満が高まっていると聞く。こうした状況をどう把握し、分析しているのか明らかにされたい。

二 三年ごとに見直されてきた介護報酬は、過去二回の改定によってトータル四・七%の減額となっていた。今回初めて三%分の引き上げとなったが、過去の介護報酬の減額と介護人材の確保難を招いたことについての相関関係を、どう分析しているのか。また、三%引き上げることにより、当初、平均して二万円程度報酬額がアップすると予想されていた。ところが、それに反してマスコミ調査や一部の報道にもあったように、実際には五千円程度しかアップしていない現状について、どう認識しているのか。

三 今般の補正予算案においては、介護報酬充当のため約四千億円の予算計上がなされている。現時点の報酬額と、今後の三年間の追加支援を勘案した場合、約四千億円の積算根拠を明らかにされたい。

四 介護サービスを提供する立場から、例えば介護現場において必要とされる医療行為を、迅速かつ適切に行っていくことは望ましいことである。昨今の看護師の人材確保難といった事態にも対処していくため、介護人材の養成過程においては、特定の医療処置が出来るよう専門的な知識や経験を習得させるべきであると思うが、その必要性についてどう認識しているのか。

五 一般的に施設介護における介護報酬費は、利用者の要介護度を基にして全体の枠が算定されている。他方、利用者と介護職員との配置基準は三対一の比率とされているものの、実際の介護現場では、理論上の配置基準よりも多くの職員配置がされていると聞く。したがって、職員の数を増やせば自ずと職員一人当たりの労務報酬は下げざるを得ず、これがひいては介護職員離れを助長するといった指摘もある。ここで、前述した介護報酬費と要介護度の関係について、どういった手法や基準をもって、その金額が設定されてきたのか明らかにされたい。

六 現況に照らした場合、前記五の配置基準を二対一くらいまでシフトしつつ、介護報酬費の設定単価をそれに見合った部分にまで拡大すべきとの意見もあるようだが、こうした意見を採用する考えはないのか。

七 今回の介護報酬の改定により、地域加算の考え方に着手したことは評価できる。しかし、同一地域においても介護サービスの種類によって、地域加算が上がるものもあれば下がるものもある。こうした上下することについての客観的な根拠は何か、明らかにされたい。また例えば、特別区である東京都と、特甲地である横浜市及び川崎市との比較において、それらの上乗せ割合が開いた原因はどこにあるのか、具体的に明らかにされたい。

八 介護保険制度の見直し等により新型特養が主流となる中、入居する利用者の収入区分が四段階に分けられたことによって、施設自体が収入の少ない利用者の経費(居住費および給食費)負担を強いられることとなった。こうした利用者負担分の一部を肩代わりする施設にとっては、経営圧迫の一因のみならず、経営そのものが成り立たなくなるといった危険性も指摘されている。こうした現状についてどう認識しているのか。また、施設側の負担軽減を図る必要性についてどう認識しているのか。

九 また施設運営上、前記八の負担のみならず、独立行政法人福祉医療機構に対する償還金の存在は看過できないものである。昨今の社会情勢や経済状況を加味した上で、その償還期間について延長を含めさらに融通性を持たせるべきであるとの指摘もあるが、こうした考え方を導入することについてどう考えるか。

十 特別養護老人ホームへの入所に対する利用者の希望は、従来型とユニット型を比較した場合には、経済的に従来型を望む声が多いと聞く。ところが現時点では、地方自治体サイドは国の意向を受け従来型の新設に対して許可を与えず、国もまたユニット型を推進していくとの方針に対して、利用者ニーズに対応した政策転換を図るべき時期に来ていると思えるが、どう認識しているか。また、他方でユニット型の利用者負担の軽減を図る必要があるとの指摘についてどう考えるか、明らかにされたい。

  右質問する。