質問主意書

第171回国会(常会)

質問主意書


質問第一六〇号

留学生受け入れ体制強化のための競争的資金制度の改革に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十一年五月十一日

藤末 健三   


       参議院議長 江田 五月 殿



   留学生受け入れ体制強化のための競争的資金制度の改革に関する質問主意書

 グローバル化が急速に進む中、国際的に活躍できる人材として、留学生の需要が急速に高まっている。留学生の獲得競争は世界中で激しさを増しており、欧米諸国では留学生受け入れに向けた公的機関の設置や政府からの財政支援など、国を挙げて留学生の獲得に乗り出している。日本も「留学生三十万人計画」を策定するなど、優秀な人材獲得による国際競争力の強化などを目的とし、留学生の受け入れ拡大を目指している。
 しかしながら、国として留学生獲得に乗り出しているにもかかわらず、受け入れ留学生数は欧米諸国に比べまだまだ少ない。その原因の一つとして、日本の大学・大学院が十分な留学生政策を行っていないことが挙げられる。
 大学研究機関が実施した日本の大学・大学院が留学生を引きつける要因の分析によると、研究力のある大学は大学院への留学生を多く獲得している。大学が研究の質を高める方法としては、競争的資金の制度をより整備し、大学間の競争を誘発させることが考えられる。これを踏まえて、政府の取り組みについて以下質問する。

一 競争的資金についてはこれを活用して大学間に競争を生み出し、研究面でも世界をリードするアメリカと比較すれば、依然として低い水準にある。二〇〇五年度のアメリカの競争的資金は四百四億ドル(約四・五兆円)と、政府研究開発費千二百九十九億ドル(約十四・三兆円)の三一・一%を占めるのに対し、日本は一三・六%である。さらに、日本における競争的資金は、アメリカと比べて採択率が低く、交付期間が短い上に、一件当たりの給付金額が小さい。これでは、研究をじっくり育てていく環境が不十分であり、アメリカとの研究の格差が拡大しているとの指摘もある。
 そこで、科学研究費補助金などの競争的資金を金額、採択率をともに引き上げ、交付期間を長くする必要があると考えるが、政府の見解を示されたい。
 また、そのための資金源として運営費交付金や私学助成金の一部を競争的資金に回すことが考えられるが、政府の見解を示されたい。
 事実、科学技術政策研究所の調査結果によれば、この十年間の日本の研究水準や研究環境の向上に、競争的資金の量的増加が大きく寄与したと評価している。また、これらトップリサーチャーの六割以上が、当該研究成果を生み出すのに競争的資金を使用している。
 国を挙げて研究の質を上げ、世界的な「知」の大競争時代において国際競争力を高めるためには、競争的資金の比率を高め、研究の質の高い大学へより効率的に多くの資金を投じる必要性があると考えるが、政府の見解を示されたい。

二 現在の評価機関には、外国人審査員や英語での応募受付などが一部の制度にしか導入されていないという国際化の遅れ、審査員の負担増大と採択結果のフィードバックの不足、運営の不透明性といった問題が生じている。
 このため、より多くの制度への外国人審査員の採用が必要ではないかと考えるが、政府の見解を示されたい。
 また、外国人審査員の採用をより多くの制度に導入することで、外国人研究者を審査員として積極的に招聘し、審査員の人材不足が解消される。それに伴い、評価機関の国際化が進み、研究の質においてもより国際的な視点で評価できる。しかし、例えば科学研究費補助金の審査に携わる委員は全員日本人の研究者である。現在日本学術振興会が行っている外国人招聘研究者の短期(十四日~六十日)採用者は例年二百五十名前後、長期(六十一日~十か月)採用者は例年七十名以上であり、短期、長期合わせると毎年約三百名もの優秀な外国人研究員が日本へ来ていることから、審査員の人材不足や評価機関の国際化が叫ばれている中で、外国人研究者が審査員として採用される余地は十分にあると考えるが、政府の見解を示されたい。

三 二〇〇三年度以降、競争的資金の研究評価機関は効率的・弾力的な制度運用や専門性などの観点から、独立した配分機関への移行を進めているが、いまだに六割の制度が文部科学省で執行されており、研究費の交付時期の早期化、研究費の効率的な使用が進んでいない。競争的資金の評価・配分機能を、文部科学省から、各々の制度全体を統括する独立配分機関(原則として独立行政法人)に移行し、迅速かつ明確な評価を実現させるために、一つの制度は一つの独立的配分機関で評価・配分するシステムを構築すべきであると考えるが、政府の見解を示されたい。
 同時に、審査員の情報をデータベース化し、審査員を効率よく集めるシステムの構築にも取り組むべきと考えるが、政府の見解を示されたい。

  右質問する。