質問主意書

第171回国会(常会)

質問主意書


質問第一四九号

憲法第八十条第二項の解釈に関する再質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十一年四月二十八日

前川 清成   


       参議院議長 江田 五月 殿



   憲法第八十条第二項の解釈に関する再質問主意書

 小職は、平成二十一年四月二日付け「弾劾手続き中の裁判官に対する給与支払いに関する質問主意書」において、「下級裁判所の裁判官は、すべて定期に相当額の報酬を受ける。この報酬は、在任中、これを減額することができない。」との憲法第八十条第二項をそのまま引用した上で、政府においては同条項が「逮捕、勾留等、裁判官本人の責めに帰すべき事由によって職務を執ることができない期間においても、従前の給与全額を支払わなければならないとの趣旨を含んでいると解釈しているか、否か」と質問した。
 しかし、これに対して、政府は明確な答弁を回避し、「当該裁判官が逮捕又は勾留されたことを理由として減額することはできないと解される」と答弁するに留まり、憲法第八十条第二項の解釈に関して答えなかった。
 そこで、小職は、再度平成二十一年四月十五日付け「憲法第八十条第二項の解釈に関する質問主意書」において、
 一 下山芳晴判事はストーカー行為、一木泰造判事は痴漢行為によって逮捕、勾留され、その結果、裁判官としての職務に従事することが物理的に不可能になったにもかかわらず、その後も、下山芳晴判事においては弾劾裁判所において罷免判決を受ける日まで、一木泰造判事は同人の任期が満了する日まで給与や、賞与の支払いを受け続けた。
 このように両名が裁判官としての職務に従事することができない期間においても、従前同様に給与や賞与を支払い続けた前提として、憲法第八十条第二項をどのように理解しているのか。
 憲法第八十条第二項は、下級裁判所の裁判官に対して、専ら本人の責めに帰すべき事由によって、裁判官としての職務に従事することができない期間であっても、従前同様に給与や賞与の支払いを受けることを保障していると解するからか。
 二 憲法第八十条第二項は「下級裁判所の裁判官は、すべて定期に相当額の報酬を受ける。」と定めるが、ここにいう「相当額」とはいかなる趣旨か。
 三 憲法第八十条第二項は「下級裁判所の裁判官は、すべて定期に相当額の報酬を受ける。」と定めるが、当該裁判官が、裁判官としての職務に一切従事していなかったとしても、裁判官としての職務に従事していた期間と同額の報酬を支払うことが、ここにいう「相当額」か。
 四 憲法第八十条第二項は「この報酬は、在任中、これを減額することができない。」と定めるが、この条文は一切の例外を許さない趣旨か。
と質問している。
 ところが、これらの質問に対しても、政府は再び明確な答弁を回避し、「憲法第八十条第二項は、下級裁判所の裁判官の職権行使の独立性を経済的側面から担保するため、その地位にふさわしい生活ができる相当額の報酬を受け取ることを保障するとともに、在任中、報酬を減額することを禁止した趣旨の規定と解される。御指摘の裁判官に対しては、右の憲法の趣旨に従って制定された裁判官の報酬等に関する法律の規定に基づいて報酬等が支給されたものであると承知している」と答弁するに過ぎず、憲法第八十条第二項の射程範囲や、「相当額」の意義については一切答弁していない。
 ついては、改めて、以下の通り質問するので、政府においては、裁判官の報酬、とりわけ弾劾手続き中につき職務に従事していない期間の報酬に関して、憲法第八十条第二項の射程範囲を明確に答弁されたい。

一 下山芳晴判事はストーカー行為、一木泰造判事は痴漢行為によって逮捕、勾留され、その結果、裁判官としての職務に従事することが物理的に不可能になったにもかかわらず、その後も、下山芳晴判事においては弾劾裁判所において罷免判決を受ける日まで、一木泰造判事は同人の任期が満了する日まで給与や、賞与の支払いを受け続けた。
 このように両名が裁判官としての職務に従事することができない期間においても、従前同様に給与や賞与を支払い続けたのは何故か。
 憲法第八十条第二項の射程範囲について、下級裁判所の裁判官がたとえ専ら本人の責めに帰すべき事由によって、裁判官としての職務に従事することができなくなったとしても、従前同様の給与や賞与の支給を保障していると解釈していることに基づくのか。

二 憲法第八十条第二項は「下級裁判所の裁判官は、すべて定期に相当額の報酬を受ける。」と定めるが、ここにいう「相当額」とはいかなる趣旨か。
 政府が「相当額」の概念をどのように解釈しているのか、政府の憲法解釈を明確に答弁されたい。

三 前問に関連して、憲法第八十条第二項は「下級裁判所の裁判官は、すべて定期に相当額の報酬を受ける。」と定めるが、当該裁判官が、裁判官としての職務に一切従事していなかったとしても、裁判官としての職務に従事していた期間と同額の報酬を支払うことが、ここにいう「相当額」に該当するのか、否か、政府の憲法解釈を明確に答弁されたい。

  右質問する。