質問主意書

第171回国会(常会)

質問主意書


質問第一四三号

裁判員裁判の裁判員選任において許容される質問等に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十一年四月二十一日

松野 信夫   


       参議院議長 江田 五月 殿



   裁判員裁判の裁判員選任において許容される質問等に関する質問主意書

 裁判員の参加する刑事裁判に関する法律(以下、「裁判員法」という。)第三十四条は、裁判長が裁判員候補者に対して「不公平な裁判をするおそれがないかどうかの判断をするため、必要な質問をすることができる。」と規定している。これは公正かつ公平な裁判員を確保するために重要な規定である。しかし、実際上の質問においては、ともすれば裁判員候補者のプライバシーに及ぶおそれも考えられ、その調整が必要である。
 また、裁判員法では弁護人及び検察官が直接、裁判員候補者に対して質問をすることが許されず、あくまで裁判長に質問してもらう仕組みとなっている。しかし、どの程度の質問がどのようにできるか等、裁判員の選任の際の質問方法は必ずしも明確ではない。
 そこで、以下のとおり質問をする。

一 裁判員裁判は重罪を対象にしているので、裁判員は事件によっては死刑の可否の判断も求められることになるから、裁判員候補者の死刑制度に対する考え方を確認することは選任に当たって重要な点である。
 そこで、裁判長が裁判員候補者に対して、死刑制度に対する賛否の考えを確認する質問をすることは許されるか。仮に許されるとすれば、思想良心の自由を定めた憲法との整合性はどのように考えているか。

二 裁判員候補者が予断を持っていないかどうかを確認するため、裁判員候補者が参加する予定事件の詳細を報じた新聞、雑誌等を閲読したか否か、どのような印象を持ったか等の質問は許されるか。また、裁判員候補者が参加する予定事件と同種犯罪の被害者になったことがあるか否か、被害を受けてどう思ったか、裁判員候補者の親族に同種犯罪の被害者になった人がいるか否か等の質問は許されるか。許されるとすれば、裁判員候補者のプライバシー保護に関して何らかの配慮はなされるか。

三 裁判員候補者が参加する予定事件と同種犯罪に関与したことがあるか否か、どのような関与をしたか等の質問は許されるか。また、これまで警察や検察で取調べを受けた経験があるか否か、どのような印象を持ったか等の質問は許されるか。許されるとすれば、裁判員候補者のプライバシー保護に関して何らかの配慮はなされるか。

四 裁判員法第三十六条は、検察官及び弁護人は裁判員候補者についてそれぞれ原則として四人まで理由を示さずに不選任決定の請求をすることができると規定している。これは検察官及び弁護人に対して、可能な限り公平な裁判を確保する観点から与えられた権利であると考えるがそのとおりか。

五 弁護人または検察官が、裁判員候補者に対して第一項ないし第三項にかかる趣旨の質問をするよう裁判長に求めた場合、裁判長がこうした質問をするか否かは裁判長の自由な裁量に委ねられていると解されるか。弁護人または検察官が、裁判員法第三十六条の判断を行うに際して必要な質問を裁判長にするよう求めても裁判長がこれを拒否した場合には、これを理由として刑事訴訟法第二十一条の忌避申立をすることは許されるか。

六 弁護人または検察官は裁判長の許可を得て、直接、裁判員候補者に対して質問をすることが許されるか。それとも一切許されず、あくまで裁判長に必要な質問をするよう求めることしかできないと解すべきか。

  右質問する。