質問主意書

第171回国会(常会)

質問主意書


質問第一三六号

白リン弾の使用禁止に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十一年四月十六日

紙 智子   


       参議院議長 江田 五月 殿



   白リン弾の使用禁止に関する質問主意書

 防衛省は四月六日の沖縄及び北方問題に関する特別委員会での私の質問に対し、米海兵隊が矢臼別演習場での沖縄県道一〇四号線越え移転訓練(以下、「一〇四越え訓練」という。)で白リン弾を使用したと答弁した。
 戦闘での白リン弾使用による民間人への深刻な被害は、これまで二〇〇四年の米軍によるイラク・ファルージャ攻撃、昨年十二月から今年一月にかけてのイスラエルのガザ攻撃等の悲惨な映像で明らかになり、大きな国際的批判が起こっている。白リン弾使用国が仮にこれを発煙弾として使用したとして、国際法に違反しないと強弁を続けたとしても、結果的に多くの民間人、子どもたちを傷痍した非人道兵器であることに疑いはない。政府が使用禁止に向けた積極的対応をすることが求められる。
 そこで以下、質問する。

一 矢臼別演習場等、米軍の施設・区域での白リン弾使用実態について

1 矢臼別演習場の昨年十一月の一〇四越え実弾砲撃訓練で、それまで米海兵隊が行ってきた訓練公開が行われなかった理由を政府は承知しているか。
2 矢臼別演習場では、昨年の一〇四越え訓練後の十二月二日に米海兵隊が装備品展示と訓練説明を行い、訓練部隊指揮官のウォーカー・フィールド少佐が白リン弾を二〇〇七年の訓練に続き使用したこと、百五十五ミリりゅう弾砲五百三十一発、白リン弾を二十発撃ったことなどを説明した。その場には防衛省担当者も同席していたと承知しているが、なぜ委員会答弁では白リン弾の発数や一昨年の訓練実績について説明しないのか。
 一昨年の白リン弾使用実績、発数など全容を説明すべきではないか。
3 東富士演習場では、二〇〇〇年九月十三日から二十二日までの一〇四越え訓練の際、砲弾が空中で炸裂して地上数百メートルにわたって火球が散布される、火球が地上を横に向かって約一キロメートル近くも走り回る、地上で火炎が約一時間燃え続ける、などの状況が現地で監視を続けていた静岡県平和委員会によって確認されている。
 これは白リン弾使用を裏付ける特徴を示しているのではないか。
4 静岡県企画部国際室は、東富士演習場における二〇〇六年九月十六日から二十五日の一〇四越え訓練の際、米海兵隊が発煙弾を総発射数千七百九十二発中三百六十五発撃ったと静岡県平和委員会に説明した。この発煙弾は白リン弾ではないか。
5 これら一〇四越え訓練の白リン弾使用について、米軍にこれまでの実態を明らかにさせるとともに、訓練での白リン弾使用を中止するよう要求すべきでないか。

二 白リン弾の毒性及び人体への被害について

1 白リン(黄リン)は、毒物及び劇物取締法で毒物に指定されている。東京消防庁危険物データブックはその危険性を「非常に有毒である、可燃性である、発火点が非常に低い」とし、「空気中で徐々に酸化され発熱発火する」、「燃焼により有毒ガス(五酸化リン、三酸化リン)を発生する」、「発火点は三十度から四十五度C」と説明している。人体への危険としては、「吸入した場合、悪心、腹痛を伴い死に至ることもある。下顎、上顎の壊死をおこす。皮膚にふれた場合、空気中では激しい火傷をおこす。皮膚、筋肉、骨等をおかし吸収されるので微量のリンでも危険である」としている。
 白リン弾は白リンを発煙剤として填実し、炸裂によって発煙剤を散布するものである。
 政府は、白リン弾が実戦で使用された場合、人体に及ぶ傷痍・傷害の危険性をどのように認識しているか。
2 政府はWHO、ILO、国連環境計画が参加している国際化学物質安全性計画(IPCS)が、白リンについて「三十四度で接触時に発火し、肌に重大な火傷を負わせる」と指摘していることを承知しているか。
3 静岡県企画部国際室は、白リン弾使用による土壌汚染、水源地汚染を懸念し調査を要求した静岡県平和委員会に対し、「白リン弾は発煙弾のことであり、着弾後、酸素と結合して五酸化リンとなり発煙するが、低濃度で危険ではないと自衛隊から聞いている」と説明している。「低濃度」というのは、具体的に何を基準にしているか。
4 防衛省・自衛隊は米軍施設・区域内もしくはその周辺のリンの数値を調査したことがあるか。矢臼別演習場及び東富士演習場の着弾地の土壌及び水質調査を行うべきではないか。

三 白リン弾の使用禁止に向けた政府の対応について

1 政府は、イラク・ファルージャ及びパレスチナ・ガザにおける白リン弾による民間人の被害状況について、どのように情報収集し、被害の実相を把握し、認識しているか。
2 政府は、米軍によるイラク・ファルージャでの白リン弾使用について、米側から報告を受けていると承知しているが、その内容について説明されたい。
3 米国科学者連盟(Federation of American Scientists)や英字紙「インディペンデント」等は、米軍は白リン弾を焼夷弾として使用していると指摘している。政府はこうした動向や報道を承知しているか。
4 国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチは、白リン弾を焼夷弾と位置づけ、人口密集地にある軍事目標や民間人を傷痍兵器で攻撃することを禁じた「特定通常兵器使用禁止制限条約第三議定書」に違反する疑いがあるとしている。政府はこうした動向を承知しているか。
5 白リン弾は発煙弾の一つに分類され、化学兵器などのように現実に使用禁止されている兵器ではないが、仮に使用目的が発煙だとしても、ファルージャやガザでの多数の民間人への重大な被害からみて使用を禁止すべき兵器である。
 政府は白リン弾の使用禁止に向け、対人地雷禁止条約やクラスター爆弾禁止条約のような枠組みづくりを含め、積極的な努力をすべきではないか。

  右質問する。