質問主意書

第171回国会(常会)

質問主意書


質問第一三〇号

「裁判員制度」の開始に先立っての質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十一年四月十五日

前川 清成   


       参議院議長 江田 五月 殿



   「裁判員制度」の開始に先立っての質問主意書

 五年間の準備期間を経て、遂に来月二十一日から「裁判員制度」がスタートするが、準備が尽くされたのか、国民の不安も決して小さくない。
 そこで、以下の通り質問する。

一 一方において、我が国の刑法が定める法定刑は、例えば殺人に関して、重い場合は死刑、軽い場合は懲役五年であり(刑法百九十九条)、酌量減軽されると二年六月にまで引き下げられる(刑法六十六条、六十八条)といった具合に裁判官の裁量の幅は極めて広い。
 他方、抽選で選ばれた裁判員は、被告人に刑罰を科すことも初めての経験であり、もとより適正な量刑を判断する基準も持ち合わせていない。
 それ故に、裁判員に対して、何ら参考資料を提供することがなければ、事件毎に刑の著しい不均衡が生じかねない。
 ついては、量刑の判断に際して、裁判員に対して何らかの参考資料を提供する予定はあるか、予定がある場合は、どのように収集、作成した資料を、どのような方法で提供するつもりか、答弁されたい。

二 一方において、拙速な審理は真相の解明を阻害し、冤罪の温床となるから、裁判員裁判においても、いかに公判前整理手続きを経たとしても、検察や、被告人、弁護側が主張、立証に長期間を費やさなければならない事態も生じ得る。
 他方、ある日、突然抽選で選任される裁判員は、仕事を抱えたまま、あるいは家事や、子育て、介護を担いながら、刑事裁判を遂行しなければならず、よって、裁判が長期化したときは、その裁判員の負担は過大である。
 ついては、裁判員裁判においても、例えば公判回数が三十回を越すような、極めて長期化してしまう事態を想定しているか。
 また極めて長期化してしまい、裁判員の仕事に回復困難な損害が生ずるおそれがある場合には、どのように対処するか、答弁されたい。

三 供述調書の任意性が争われた場合、裁判官でさえ任意性に関して明確な判断を示さずに、信用性の判断で糊塗している事案が散見される。
 ましてや、裁判員の大半は、それまでに任意性の概念さえ耳にしたことがないはずであり、任意性の判断は極めて困難であると思われる。
 ついては、裁判員に対して、任意性の概念をどのように分かりやすく説明するつもりか、また任意性の判断基準や判断材料をどのように提供する予定か、答弁されたい。

  右質問する。