質問主意書

第171回国会(常会)

質問主意書


質問第一一四号

淀川水系河川整備計画に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十一年四月三日

田中 康夫   


       参議院議長 江田 五月 殿



   淀川水系河川整備計画に関する質問主意書

 平成二十一年三月三十一日に国土交通省近畿地方整備局は淀川水系河川整備計画(以下「整備計画」という。)を公表したが、「大戸川ダム凍結」とした国土交通大臣及び国土交通省近畿地方整備局の発表内容、並びに「整備計画」発表時に配布された資料「大戸川に関する考え方」と、「大戸川ダムの整備を行う」とする「整備計画」本文に関し、その整合性に於いて看過し得ぬ齟齬と欺瞞を内包していると憂慮する。そこで、以下質問する。

一 「整備計画」五十八頁には、「川上ダム、天ヶ瀬ダム再開発、大戸川ダム等の洪水調節施設の整備を行うこととする。」、「これらを実施することにより、せめて戦後、実際に経験したすべての洪水を、淀川水系全体で川の中で安全に流下させることができるようにするものである。」、「実施については、上下流の河川整備の進捗状況、水害の発生状況及び国・自治体の財政状況などを考慮しながら優先順序を定め実施すべき事業を行うものとする。」と記載されている。さらに七十三頁には、「大戸川ダムについては、利水の撤退等に伴い、洪水調節目的専用の流水型ダムとするが、ダム本体工事については、中・上流部の河川改修の進捗状況とその影響を検証しながら実施時期を検討する。」と記載されている。
 これらの記載に基づけば、大戸川ダムは今回の「整備計画」に於いても従前通り、「整備を行う」、「実施する」と位置付け、ダム本体工事の実施時期を検討するとの方針表明に他ならぬ。
 即ち、大戸川ダムについて「施策の優先順序を考慮すると、河川整備計画に位置付ける必要はない」とする滋賀県知事、京都府知事及び大阪府知事の意見とは百八十度異なる方針を改めて示したと考えるが、政府の見解を示されたい。

二 「整備計画」発表時に配布された資料「淀川水系河川整備計画の策定について」中の「3.大戸川ダムに関する考え方」では、「ダム本体工事に着手する場合は、河川整備計画を変更する必要がありますので、その際には、改めて知事等のご意見をお聴きします。」と記載されている。
 これは、河川整備計画の変更を経ずに大戸川ダムの本体工事に着手することはないとの理解でよいか、政府の見解を示されたい。

三 翻って、今般発表の「整備計画」に於いて大戸川ダムの実施を位置付けているとすれば、本体工事に着手する際に河川整備計画を変更する必要はないと思量される。にも拘らず、今後本体工事に着手する場合、河川整備計画を変更せねばならないとする理由を具体的に示されたい。

四 その上で、大戸川ダムの本体工事着手時に、「整備計画」を変更しなければならないのであれば、その変更内容とは如何なるものが想定されるのか具体的に例示されたい。

五 河川法に基づき近畿地方整備局が平成十三年二月一日に設置した「淀川水系流域委員会」は、平成十五年一月十七日に「新たな河川整備をめざして」と題する提言(以下「提言」という)を纏めており、その中で「計画・工事中のものを含め、ダム」は「原則として建設しないものとし、考えうるすべての実行可能な代替案の検討のもとで、ダム以外に実行可能で有効な方法がないということが客観的に認められ、かつ住民団体・地域組織などを含む住民の社会的合意が得られた場合にかぎり建設するものとする。」と明記している。今回の「整備計画」を策定するに当たって検討された「考えうるすべての実行可能な代替案」は如何なる方策であったか、具体的に示されたい。又、それらは如何程の「実行可能で有効な方法」か、個別具体的に説明されたい。

六 「大戸川ダムを整備する」と明言する今回の「整備計画」と、「原則として建設しない」とする先般の「提言」は、整合するか否か、政府の認識を問う。

  右質問する。