質問主意書

第171回国会(常会)

質問主意書


質問第七七号

診療報酬のオンライン請求の完全義務化の抜本的見直しに関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十一年三月五日

辻 泰弘   


       参議院議長 江田 五月 殿



   診療報酬のオンライン請求の完全義務化の抜本的見直しに関する質問主意書

 わが国医療は、今日までの長年にわたる政府の医療費抑制策により、崩壊の危機に瀕している。このような状況の下で、厚生労働省は平成十八年四月の厚生労働省令により、平成二十年四月からの診療報酬のオンライン請求の段階的な義務化を求め、さらに、平成十九年六月には内閣としても、厚生労働省令による平成二十三年四月からの原則全ての医療機関・薬局に対する完全義務化の方針を閣議決定した。
 この完全義務化に対しては、既にこれまでの質問主意書において、医師法第十九条が「診療に従事する医師は、診察治療の求があつた場合には、正当な事由がなければ、これを拒んではならない」と規定する一方で、適正な診療報酬の請求において、オンライン請求を唯一の請求手段と義務づけ、従来通りの手書きによる診療報酬の請求を受け付けないとしたことは、正当な請求権を限定・制約するもので、財産権の侵害に当たるのではないか、また、診療報酬のオンライン請求の完全義務化とその具体的な期限などを法律によらず、厚生労働省令で規定したことは、「立法府は公共の福祉に適合する限り財産権について規制を加えることができる」との判例に反するものではないか、などの疑義を呈してきたところである。
 もとより、情報化社会の進展著しい今日、医療の分野においても、利便性、効率性、迅速性などを確保する見地から、社会情勢に応じたIT化が促進されるべきことは自明のことと言わなければならない。しかしながら、わが国の医療が置かれた現状を十分に踏まえることなく、法的措置や予算措置、助成策など、実施に向けた体制整備をなおざりにしたまま、一方的にオンライン請求の完全義務化を性急かつ強引に推し進めることにより、閉院せざるを得ない医療機関が生じ、医師不足にあえぐ医療現場に一層の混乱を与え、医療の提供体制に悪影響をもたらすことが強く懸念される。
 このような観点から、競争・効率の論理に偏した新自由主義の思潮に立脚して進められた構造改革路線の下で、性急に求められすぎた診療報酬のオンライン請求の完全義務化の方針については、早急に再検討することが必要であり、完全義務化を定めた厚生労働省令、及びその方針をより強固なものとした閣議決定の抜本的な見直しが不可欠だと考えるが、これに対する政府の見解を示されたい。

  右質問する。