質問主意書

第171回国会(常会)

質問主意書


質問第七四号

米軍再編に係る在沖縄海兵隊のグアム移転に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十一年三月二日

白 眞勲   


       参議院議長 江田 五月 殿



   米軍再編に係る在沖縄海兵隊のグアム移転に関する質問主意書

 平成十八年五月一日の日米安全保障協議委員会において「再編実施のための日米のロードマップ」(以下、「ロードマップ」という。)が合意された。このロードマップの中で、「約八千名の第三海兵機動展開部隊の要員と、その家族約九千名は、部隊の一体性を維持するような形で二千十四年までに沖縄からグアムに移転する」ことが明記されている。
 また、今般、政府から「第三海兵機動展開部隊の要員及びその家族の沖縄からグアムへの移転の実施に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定(以下、「本協定」という。)」が提出された。
 先のロードマップ合意と本協定の関連などについて以下質問する。

一 グアム移転について

1 先のロードマップの前文によれば、それに先立つ平成十七年十月の日米安全保障協議委員会文書のコミットメントに従って、「地元の負担を軽減しつつ『抑止力を維持する(maintain deterrence and capabilities)』」ために両政府が再編のための費用を負担することとなっている。しかし、本協定前文では沖縄における再編にあたり、「この地域における『抑止力を強化する(strengthens deterrent capabilities)』」との表現となっている。「維持」と「強化」の違いは何を意味するのか。
 平成十八年から平成二十一年の間に日米の認識が変わったのか。
2 まず、グアムにおける米軍再編事業の全体像を明らかにされたい。
3 グアム移転経費、総額百二・七億ドルについて、これまで政府はその積算根拠を明らかにしてこなかったが、本協定に総額及び日米の負担額が明記され、国会に対して承認を求めるならば、その根拠を明らかにされたい。
4 本協定は、いわゆる「真水」(我が国の直接的な財政支援による司令部庁舎等への施設整備)の部分であるが、これ以外の「出資、融資等」の部分についても、日米両国間の協定が必要であると考えているのか。
5 「真水事業」の全体像、総額も併せて明らかにされたい。
6 本協定を締結することとなった理由は何か。本協定がないと我が国は真水の部分さえも負担できないのか。また、平成二十二年度以降、我が国の都合で、支出を中止した場合は、協定違反となるのか。
7 平成二十一年度予算政府案において防衛省は、グアム移転関連経費のうち、「真水」事業に総額三百四十六億円を計上している。「真水」事業の内訳は、工事費として、フィネガヤン地区基盤整備事業(第1段階)に約百二十九億円、アンダーセン空軍基地北部地区基盤整備事業に約二十八億円、アプラ地区基盤整備事業に約百七十四億円を計上し、設計費として、消防署(フィネガヤン地区)設計、下士官用隊舎(フィネガヤン地区)標準設計、港湾運用部隊司令部庁舎(アプラ地区)設計及び診療所(アプラ地区)設計の合計約十六億円を計上しているが、それぞれどのような事業又は設計内容であるのか。
8 この三百四十六億円は、二千八年米国会計年度では何億ドルに相当するのか。
9 米国側のこれら事業に関する負担額はいくらか。
10 設計費として四箇所で約十六億円が計上されている。一般的な設計費としては多いと思われる。それぞれの規模と金額並びに配置を示されたい。そのうち個々の建物の設計費はいくらか。
11 グアムにおいては、沖縄からの海兵隊移転以外の要因による米軍施設の整備も予定されている。我が国が負担する経費は、平成二十年四月十八日の参議院決算委員会において、石破茂防衛大臣(当時)が、「…私どもとしても、日本国民の税金を使うわけでございますから、これが沖縄の海兵隊がグアムに移ると、そのことに限定をしてお支払はするけれどもということは常に申し上げておるところでございまして、それ以外の、本当に日本国民の、納税者の負担に値するというものでなければ、それは私ども政府としても払うつもりはございません」と答弁したように、沖縄の海兵隊がグアムに移転することに伴うものに限定するものであると理解している。沖縄から移転する海兵隊の部隊以外の部隊も使用する施設等の整備についても、我が国の財政支出による全額負担を考えているのか。
12 本年二月十六日付朝日新聞によると、先に挙げたアプラ地区基盤整備事業に関連して米海軍佐世保基地の強襲揚陸艦の寄港のための港湾整備が含まれるという。さらにアンダーセン空軍基地関連では、沖縄ではなく山口岩国基地からの海兵隊ヘリ部隊の運用管制部隊の庁舎などの施設群の建設予定地一帯の整備事業も含まれている。こうした事業について費用負担が行われる予定があるのか。またこうした周辺事業まで今回の移転経費に含まれるのか。先の石破大臣の答弁と齟齬をきたすことはないのか。
13 本協定には、米軍の施設整備にあたって、在日米軍駐留経費負担特別協定にあるような節約義務が明記されていない。現在の厳しい金融・経済状況を考慮し、少しでも効率的に資金を使用するため、米軍に対して節約義務を課すべきと考えるが、いかがか。今後、米国に対し節約を求めるつもりはないのか。
14 ロードマップでは「約八千名の第三海兵機動展開部隊の要員と、その家族約九千名は、部隊の一体性を維持するような形で二千十四年までに沖縄からグアムに移転する」としている。これまでの国会答弁等で、沖縄の海兵隊の定数は一万八千人とされている。また、沖縄県知事公室基地対策課が平成二十年三月に発行した「沖縄の米軍及び自衛隊基地」によると、平成十九年九月末現在で海兵隊数は一万三千二百名である。約八千名の移転というのは、定数の削減ということか。移転以降、定数は何名になるのか。若しくは一万三千二百名から八千名削減するということか。二千十四年以降、沖縄の海兵隊数は何名になるのか。
15 ロードマップでは「普天間飛行場代替施設への移転、普天間飛行場の返還及びグアムへの第三海兵隊機動展開部隊要員の移転に続いて、沖縄に残る施設・区域が統合され、嘉手納飛行場以南の相当規模の土地の返還が可能となる」とあり、キャンプ桑江などいくつかの施設が全面返還されることになる。これに合わせ、沖縄に残る部隊は整理統合されることになるが、隊舎施設をはじめとした建造物等は八千名分削減された体制で運営されるのか。また、返還された施設等の扱いはどうなるのか。

二 本協定について

1 第一条2について
 「各会計年度において両政府が締結する別途の取極」とはどのような取極か。
2 第三条及び第九条2について
(一) 「移転は、ロードマップに記載された普天間飛行場の代替施設の完成に向けての日本国政府による具体的な進展にかかっている」(第三条)とあるが、「具体的な進展」とは何か。例えば「環境アセスメント」の終了などは「進展」と考えているのか。現在、「具体的な進展」があると考えているのか。
(二) 今後「具体的な進展」がみられない場合は、経費負担は凍結されるのか。
(三) 本協定上、沖縄の米軍再編案について、グアム移転、普天間移設等が一体である旨明記されている。他方で、沖縄県側は普天間代替施設の沖合移設を要求しているが、これに対する政府の認識を明らかにされたい。
(四) また本協定においては普天間飛行場の移設先であるキャンプ・シュワブについては言及がない。その理由は何か。
3 第五条について
 「移転のための事業に係る調達を行う過程に参加するすべての者が公正、公平かつ衡平に取り扱われることを確保する」とあるのは、一般競争入札を意味するのか。入札において日本企業が優遇されることがあるのか。若しくは、第三国企業も含めていずれの企業も平等な取扱いを受けるということか。
4 第六条について
 「実施当局が従うべき実施のための指針」とは、どのようなものか。
5 第七条について
(一) 経費の負担は、完成まで複数年を要する契約の場合、契約額全額を一年目に米国政府に支払うのか、あるいは国内と同じように、いわば工事の進捗に合わせ複数年に分割して支払うことになるのか。
(二) 今般の費用の支出についても会計検査の対象となるのか。検査の対象となる場合、検査を充実したものにするため、会計検査院が現地調査を実施する際に、米国側の十分な協力が得られるよう配慮すべきではないか。また米国は同様の会計検査を行うことになっているのか。
6 第十一条について
 米国も日本と同様に、本協定は議会承認条約となっているのか。

  右質問する。