質問主意書

第171回国会(常会)

質問主意書


質問第七一号

「国民年金及び厚生年金に係る財政の現況及び見通し-平成二一年財政検証結果-」に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十一年二月二十六日

辻 泰弘   


       参議院議長 江田 五月 殿



   「国民年金及び厚生年金に係る財政の現況及び見通し-平成二一年財政検証結果-」に関する質問主意書

 平成二一年二月二三日に厚生労働省より公表された「国民年金及び厚生年金に係る財政の現況及び見通し-平成二一年財政検証結果-」(以下、「財政検証」という。)においては、本来、同資料において明らかにされるべき結果の開示や説明が欠落・不足している部分がある。それらは当初から当然に明示されるべきものである。
 かかる見地から、以下、質問する。

一 平成一六(二〇〇四)年の国民年金法等の一部を改正する法律の附則第二条の規定により「厚生年金の標準的な年金の所得代替率が五〇%を下回ることが見込まれる場合には、給付水準調整を終了する」ことが求められている対象時期は、「次の財政検証までの間」であり、今回について言えば、平成二六(二〇一四)年度にあたるにもかかわらず、同年度に関しては、所得代替率が六〇・一%との見通しが注書きに示されているのみで、その数値を導く同年度における現役男子の手取り収入、夫婦の年金額(夫の厚生年金、夫婦の基礎年金)、所得代替率の報酬比例部分・基礎年金部分の内訳が何ら明示されていないのは何故か。
 今後、財政検証にあたっては、「次の財政検証」時点の見通しの詳細な数値が当然に示されるべきものと考えるが、政府の見解を示されたい。

二 前記の見地から、基本ケース(出生中位、経済中位、死亡中位)の場合の試算結果としての厚生年金の標準的な給付水準の見込みのうちの平成二六(二〇一四)年度における現役男子の手取り収入、夫婦の年金額、夫の厚生年金額、夫婦の基礎年金合計額、所得代替率の報酬比例部分・基礎年金部分の内訳を示されたい。
 また、その数値の国民的理解に資するべく、厚生労働省が本年二月二三日の第一四回社会保障審議会年金部会に提出した「資料3-2」の七ページの図に平成二六(二〇一四)年度の前記各数値を記入し、グラフ化したものを付け加え、新たな図として示されたい。

三 「財政検証」においては、基本ケースの場合、マクロ経済スライドの調整開始年度が二〇一二年度、調整終了年度が二〇三八年度となっているが、その間の毎年度のマクロ経済スライドの調整率(公的年金被保険者数の減少率と寿命の伸び等を勘案して設定した一定率〇・三%との和)は示されていない。
 同数値は、年金受給者に直接かつ死活的に関わることになる本質的な部分であり、「財政検証」の結果の数値が積極的に、わかりやすく明示されるべきものである。国民に自ら計算して算出すればよいとの姿勢は改められなければならない。
 基本ケースの場合における二〇一二年度から二〇三八年度までの間に行われることとなるマクロ経済スライドの調整率を各年度ごとに一覧表の形で示されたい。
 また、今後の「財政検証」にあたっては、当初からマクロ経済スライドの調整率の見通しを明らかにすべきであると考えるが、政府の見解を示されたい。

四 「財政検証」の結果では、マクロ経済スライドは、基本ケースの場合、二〇一二年度から二〇三八年度まで適用されることとなっているが、そのうち、報酬比例部分については二〇一九年度に終了する見込みとなっている。
 即ち、二〇一二年度から二〇一九年度までは報酬比例部分、基礎年金部分の両者に対して一%程度のマクロ経済スライドが、また、二〇一九年度から二〇三八年度までは基礎年金部分に対して一~二%程度の減額調整が行われることとされているわけであるが、二五年間もの長きにわたり、高齢者の年金受給額の物価スライドを大きく減額し続けることは、国民の理解が到底得られず、現実にはあり得ない、想定できない政策対応と考えるが、政府としては、同措置が国民に受け入れられるものと考えているのかどうか、見解を示されたい。

五 今回の「財政検証」においては、報酬比例部分のスライド調整期間が基礎年金部分のスライド調整期間よりも短くなるという見通しが示され、それについて、国民年金法第一六条の二の規定に基づく基礎年金部分のマクロ経済スライドの終了年度の見通し決定と基礎年金の水準の見通し決定の後に、厚生年金保険法第三四条の規定に基づく報酬比例部分のマクロ経済スライドの終了年度の見通しが決定され、将来の所得代替率の見通しが作成されるものであり、一般的には二つの部分のスライド調整期間は必ずしも一致するわけではない、との説明がなされている。
 前記の説明の通り、一般的には一致するものではない二つの部分のスライド調整期間であるにもかかわらず、平成一六(二〇〇四)年改正時においては、調整終了年度は二〇二三年度と完全に一致していたものと理解するが、それはいかなる要因によるものであったのか。政府の見解を示されたい。

六 「財政検証」においては、国民年金保険料の納付率を〇・八〇〇、即ち八〇%と想定しているが、そのような前提をおいた根拠は何か。その前提の達成は可能と考えているのか。達成可能と考えているとすれば、それはいかなる政策対応によって可能と判断しているのか。
 また、その前提が満たされなかった場合の年金財政への影響をどのように分析しているのか。
 併せて、厚生労働省ホームページに公表されている「平成二一年度財政検証 バックデータ」のうちの基礎データに示されている全額免除率、四分の一免除率、半額免除率、四分の三免除率、学生納付特例率、若年者納付猶予率の各数値の根拠を示されたい。

七 本年二月二三日に厚生労働省が社会保障審議会年金部会に提出した「資料1-1」の七ページには、基礎年金国庫負担の引上げ所要額が示されているが、各々の所要額には、いわゆる公経済負担にあたる地方公務員共済組合の基礎年金拠出金に係る地方負担分等が含まれているが、表題の通り、平成二一年度予算ベースの国庫負担引上げ所要額を示すのであれば、そもそも地方負担分は当然に除外して示されるべきものであり、注書きに含むことが記されているから許されるというものではないと考えるが、これに対する政府の見解を示されたい。
 また、地方負担分を除外した各々の所要額を、前記七ページと同様の一覧表の形で示されたい。

  右質問する。