質問主意書

第171回国会(常会)

質問主意書


質問第五七号

諫早湾潮受堤防の開門等に関する再質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十一年二月二十三日

松野 信夫   


       参議院議長 江田 五月 殿



   諫早湾潮受堤防の開門等に関する再質問主意書

 国営諫早湾土地改良事業において、佐賀地方裁判所は二〇〇八年六月二十七日、潮受堤防排水門の開放を命じる判決を出したが、国は同年七月十日に控訴した。その過程で、農林水産大臣と法務大臣との間で協議があり、当時の鳩山邦夫法務大臣は昨年十月に発行されたNPO法人地球船クラブの機関誌「地球船」七号にその経緯を記した寄稿文を発表したことについて質問主意書(第一七一回国会質問第二一号)を提出したところ、平成二十一年二月六日に質問主意書に対する答弁書(内閣参質一七一第二一号)を受領した。しかし、いまだ事実関係及び法解釈が明確ではないので、以下のとおり再度質問する。

一 国が被告となった事件において、控訴するかどうかの最終的な権限は法務大臣が有すると理解して良いか。

二 最終的な権限は法務大臣が有するということであれば、問題となっている国営諫早湾土地改良事業の所管大臣である農林水産大臣に一定の条件を付した上で控訴することは、法務大臣の権限として可能と理解して良いか。

三 前記寄稿文には以下の記述がある。
 私は農水省に対して意見を述べた。要は有明海全域の生態系が重要なので、何らかの開門調査が必要であり、それを農水省が約束しない限り私は控訴しないと。
 農水大臣が二度法務大臣室にみえて、徹底的に話し合い、基本的に私の考えを了解してくれた。
① 農水大臣は開門調査をする腹を決めて、そのためのアセスを実施する。各地の漁業者の意見をよく聞いて、開門の方法を決める。
② タイラギ、クチゾコ、ムツゴロウ、ハゼクチ、キス、メカジャ、アゲマキなど、有明海で激減している水産資源を徹底的に調査して、その再生のために万全の措置をとる。
 この二点の約束をとりつけた上で、私は福岡高裁への控訴の手続きをとったのである。
 政府は、本件控訴には鳩山法務大臣が指摘しているとおり二つの約束が両大臣の協議によってなされたことを認めるか。

四 答弁書では、両大臣の「二度の協議の経過及び結果についての記録は存在しない。」ということであるが、両大臣の協議には「農林水産省から農村振興局長他が、法務省から大臣官房訟務総括審議官他が同席している。」のに、各人のメモも含めて、何らの記録も報告書も残していないということか。
 いやしくも、控訴するかどうかという重要な行政判断をする両大臣の協議の場であり、しかも鳩山法務大臣によれば二つの約束をとりつけた上で控訴したことになっている。なぜ記録を残さなかったのか、その理由を明らかにされたい。こうした重要な協議であっても、その記録を残さないで良いという根拠は何か。

五 両省においては、地裁判決を受けて控訴するかどうかの検討がなされたはずであり、控訴を決定するに当たっては、その旨の決定文書を作成するのではないか。本件では両大臣の協議の結果を受けて控訴する決定がなされたわけであるから、控訴を決定した文書は存在するはずであり、その文書には前記二つの約束が記載されているのではないか。それとも政府に残されている文書の中には二つの約束の存在を示すものは一切残されていないということか。

  右質問する。