質問主意書

第171回国会(常会)

質問主意書


質問第五六号

食中毒事件としての水俣病における政府の対応に関する再質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十一年二月二十三日

松野 信夫   


       参議院議長 江田 五月 殿



   食中毒事件としての水俣病における政府の対応に関する再質問主意書

 水俣病が食中毒事件としてどのように対処されたのか、事実関係及び法解釈を明確にするために、平成二十一年一月十九日に質問主意書(第一七一回国会質問第一〇号)を提出したところ、同月二十七日に質問主意書に対する答弁書(内閣参質一七一第一〇号。以下、「答弁書」という。)を受領したが、いまだ事実関係が明確ではないので、以下のとおり再度質問する。

一 政府は、水俣病事件について、食中毒事件と認識した時期は昭和三十四年十一月十二日としている。しかし、厚生省公衆衛生局環境衛生部食品衛生課編の「昭和三十一年全国食中毒事件録」によれば、「水俣病」は、「発生年月日 昭和二十八年十二月~昭和三十一年十二月」と記述している。この点については、答弁書で、「記述されている事件のすべてについて、その記述の時点において食中毒事件であると認識していたわけではなく、水俣病については、当該刊行物中の都道府県別食中毒一覧に収載していないことから明らかなように、昭和三十一年十二月の時点において食中毒事件であると認識していたわけではない。」と答弁している。
 しかし、当該刊行物の名称は「全国食中毒事件録」とされているので、当該刊行物に収載されているものはすべて食中毒事件との認識で収録しているのが当然ではないか。もし、仮に、「全国食中毒事件録」としておきながら食中毒事件以外の事件をも収載しているとすれば、その収載の判断基準を明らかにされたい。
 また、食中毒事件以外の事件でありながら当該刊行物に収載している事件が水俣病以外にもあるとすれば、その事件を摘示されたい。

二 当該刊行物で、水俣病事件は第三篇「主要食中毒事件の概要」に収載されている。となると、政府の認識としては、当該刊行物の第一篇「都道府縣指定都市別食中毒一覧」に収載されている事件はすべて食中毒事件であるが、第三篇「主要食中毒事件の概要」に収載されていても、この第三篇には食中毒事件ではないものも収載されているということになるが、おかしくはないか。第三篇「主要食中毒事件の概要」に収載されている事件は、食中毒事件の中でも重要と思われる事件を収載しているのではないか。

三 当該刊行物の「緒言」に、「第一篇において昭和三十一年分に発生した食中毒の都道府県指定都市別一覧表をのせ」とあるとおり、当該刊行物は、あくまで昭和三十一年に発生した食中毒事件を収載しているのではないか。同「緒言」にもあるように、「昭和二十八年から昭和三十一年にわたって熊本県水俣地方で」発生した水俣病は、要するに複数年にわたる食中毒事件であるため、第一篇「都道府縣指定都市別食中毒一覧」の収載から除外していたのではないか。

四 当該刊行物の「序文」には、昭和三十三年三月付で「厚生省公衆衛生局長」名の記載があり、また「緒言」には同月付で「厚生省公衆衛生局環境衛生部食品衛生課長」名の記載がある。加えて、この「緒言」の中ではわざわざ「化学物質による食中毒についても注意を払いたい。(中略)昭和二十八年から昭和三十一年にわたって熊本県水俣地方では所謂『奇病』が発生した。」とまで述べている。このことからすれば、どんなに遅くとも昭和三十三年三月時点で、水俣病は食中毒事件という認識があったのではないか。

  右質問する。