質問主意書

第171回国会(常会)

質問主意書


質問第四四号

労働行政における労災認定に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十一年二月十三日

外山 斎   


       参議院議長 江田 五月 殿



   労働行政における労災認定に関する質問主意書

 労災認定に係わる昭和五二年五月二八日付け基発第三〇七号通達(以下「通達」という。)及び同日付け事務連絡第二三号(以下「事務連絡」という。)が正常に運用されず、適切な治療も受けられないまま苦痛のどん底に投げ出され苦しんでいる患者がいるという実態がある。
 国の法令は、本来、被災労働者を救済し社会復帰を図るものであるが、国の補償行政の精神を理解せず、独自の考えで、いかに労災を認定せず不支給処分にできるかを目標にしているかのような対応を続けている労働局や労働基準監督署があるように見受けられる。
 また、認定要件が整っている場合や、近隣の医療機関での検査で十分たり得る場合にも鑑別診断の受診命令を行い、現場において無用な混乱と労災病院に対する不信を招いている。
 そこで、以下質問する。

一 振動業務の関係でレイノー現象が発現した際の取扱いとして、①過去にレイノー現象が発症したことのある事実は確認されたが時間的経過から見て現に振動障害が認められるものであるかどうか明らかでない場合、②当該労働者の既往歴又は振動作業従事前の作業歴等からみて振動業務以外の原因によるレイノー現象の発症が強く疑われる場合を除き、客観的にレイノー現象が発現したことが認められる者については、鑑別あるいは諸検査を行う必要がないとされている。
 レイノー現象の客観的な確認資料として、過去の診療録、本人のものと認められる写真、信用できる他人の証言等が挙げられているが、現時点における本人のものと認められる写真を提出しても、なお、鑑別診断の受診命令を出すことがあるのか。

二 労働基準監督署長は、類似疾患が疑われるなど医学的な疑問や矛盾が解決せず、保険給付の請求書に添付された診断書あるいはレントゲン写真などの資料、主治医等の意見のみでは医学的な判断材料が十分ではなく、業務上外の認定を行うことが困難な場合においては、指定する医師の診断を受けるよう命じているとしているが、鑑別診断ではどのような検査を実施するのか明らかにされたい。
 また、鑑別診断時の各種検査の評価基準は、どの基準を採用しているのか明らかにされたい。

三 現に主治医が診断を行い治療行為がなされた後に、鑑別診断時に同様の再検査を実施しているが、目的は何か。実施した場合の再検査時のデータは治療後のデータであり、主治医判断時と当然差異があることが考えられるが、労働基準監督署はそれぞれの所見をどう判断するのか明らかにされたい。
 また、業務上外認定は、当然主治医検査時点のデータに基づき判断されるべきと考えるがどうか。

四 過去の事例として、不支給決定書の中で、通達の検査を否定し、医師と患者の関係、自覚症状も否定する記載が見受けられるが、このような記載を妥当と考えるのか。また、今後いかに労災認定に対処し、認定要件を運用していくのか明らかにされたい。

五 労働基準監督署の被災労働者に対する聞き取り調査において、過去のレイノー発症箇所の部位、時間などを図示させ、証拠として取り上げ、記憶の不正確さなどを理由に、一貫性がなく存在を確認できないと結論づけている。また、長時間にわたり問い詰めるなど事情聴取が乱暴に行われる実態があるが、どう指導していくのか明らかにされたい。

六 鑑別医の診断において、主治医の診断との食い違いがある場合は、局医とともに主治医と協議し意見交換を実施するなど、労災指定医である主治医の意見の尊重を図るべき措置が必要と考えるが、どう対応するのか明らかにされたい。

七 末梢循環機能検査の一つであるFSBP%はレイノー現象の有無の判定に一応有用な検査方法であるが、レイノー発現者でも三〇%においてレイノーと判定できないとされる限界を考慮する必要がある。最近、通達の検査方法にはないFSBP%による参考検査の結果を基に、現行検査のデータを否定し、総合判断と称している事案が多く見受けられる。
 産業衛生学会振動障害研究会における現在検討中である現行法の再評価も反映すれば、地域の主治医による適切な医学判断が可能と考えるが認識はどうか。

八 通達及び事務連絡における類似疾病の取扱いについて、併存での治療を部分的に認めているが、振動障害の認定を否定する方向にある。通達や事務連絡の趣旨に従った適用がなされるよう指導するべきであると考えるが、どのように認識し指導しているのか。

九 鑑別診断結果などが申請者に開示されない状況を是正するとともに、主治医にも結果の報告がなされるべきと考えるが、今後、そうした対応をとるつもりはあるか。

  右質問する。